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大競争時代を生き抜く戦略本【書評】野口悠紀雄(著)『実力大競争時代の「超」勉強法』(幻冬舎)

 

実力大競争時代の「超」勉強法

実力大競争時代の「超」勉強法

  • 作者:野口悠紀雄
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

<楽天ブックスはコチラ> 『実力大競争時代の「超」勉強法』

厳しい、本当に厳しい。
就職超氷河期どころか就職大競争時代に突入した日本。
本格的な外国人との競争時代に生き抜く戦略、勉強すべきものとは。

野口先生が送るグローバル化時代の戦略本です。

 

【目次】

本書が提案する問題別 ソル―シャン・リスト
第1章 就職大競争時代が始まった
第2章 かつて勉強は学歴獲得の手段だった
第3章 シグナルから武器へ
第4章 英語と数学は、どんな仕事にも必要
第5章 求められるのは、ソルーション
第6章 勉強は楽しく、面白い
第7章 勉強社会が未来を開く
あとがき

【ポイント&レバレッジメモ】

★「就職大競争時代」 ・・・  国内雇用を自国民で独占できないのは当然のこと

 これまで、日本の労働市場は、閉鎖的だった。日本企業に外国から人材が入ってくないし、日本人が外国に職を求めることもなかった。日本の雇用は、国内だけで閉じていた。したがって、就職活動で外国人と競合するという事態はなかった。しかし、グローバル化時代においては、こうした事態はそもそもおかしいのである。<中略>
日本企業への就職を日本人が独占することはできず、外国人(とくに中国人)と競争しなければならない時代になったのである。

★英語が必須の道具になる

 「日本も社内公用語を英語にしようという企業が現れた」というニュースに対して、「日本人だけの会社なのだから英語はいらない」といった人が多かった。しかし、これは全く間違った考えだ。
 なぜなら、「社内のコミュニケーションは英語でもよい」ということになれば、採用を日本人に限定する必要はなくなり、人材の幅が一挙に広がるからである。それを実現した企業は、日本人だけしか雇わない企業に比べて発展するだろう。
 たとえば、「日本語は話せるが、英語は話せない中国人」と、「日本語は話せないが、英語は話せる中国人」を比べれば、後者のほうが圧倒的に数が多い。したがって、能力の高い人間の数も多い。だから、優秀な人間をとれる。そして、会社は発展する。これは、英語が共通語になっている現代の世界では、当然の結果である。「外資系に行くつもりはないから、英語は自分には関係ない」と思っている人がいるとすれば、とんでもない思い違いだ。

★勉強で獲得すべきは、伝達力と問題の発見・解決力

 抽象象的に言えば、勉強によって獲得すべきは、つぎの二つだ。
 第一は、伝達能力の習得だ。最低限、日本語と英語が必要になる。しかし、それだけでは不十分で、数学も必要だ。たとえばファイナンス理論は、数学抜きでは、理解することもできないし、現実の問題に応用することもできない。
 第二は、問題の発見と解決の能力である。
「問題の発見」自体が重要であることを強調したい。学校の勉強との最大の違いは、「問題は何か」を捉えることなのである。「指示待ち人間」ではだめで、「何が問題か」を把握し、「どの方向に進むか。何をやればよいのか」を明確にすることが必要なのだ。

★ビジネス英語が1500語でできない理由

 たとえば、「グロービッシュ」という考えがある。1500語だけを使って英語のコミュニケーションを行おうというものだ。「そうすれば、英語を話すのは簡単になるだろう」というわけである。
 確かに、自分の意思を一方的に伝えるだけなら、1500語だけでも不可能ではない。しかし、ビジネスで英語を使う場合、こちらから一方的に伝えるだけでは完結しない。まず、質問や反論が返ってくるだろう。その場合、相手に「1500語以内で話してください」と頼むことはできない。<中略>
 「1500語で済まそう」という考えは、「仕事で英語を使うのはどういうシーンなのか」についての想定を、完全に間違えている。これは、ビジネスに限らず、実用英語について一般的に言えることである。

★電車の中で2年間勉強して、英語をマスターしよう

 まず、英語のリスニング訓練は、自分1人でできる。教材も自分で作れる。英会話学校に通ったり、個人教師について勉強する必要はない。また、市販の高価な教材を買う必要もない。というより、自分用の教材を作り、1人で勉強するほうがはるかに効率的なのだ。

 では、何を教材とすればよいか? 興昧がある分野のニュース解説をiPhoneを使って聞くのが、一番よい。私はFEN(アメリカ軍極東放送)のニュース解説を録音して電車のなかで聞いたが、いまではインターネット上に良質で無料の音源をいくらでも見出すことができる。最近の映画なら、DVDに英語の字幕があるから、それで日常会話を勉強するのもよい。

 正確に聞けるようになれば、話すことはほぼ自動的にできる。だから、話す訓練を特別に行う必要はない。「信じられない」という人が多いだろうが、本当である。

<野口先生オススメのアメリカテレビ放送>
MSNBC 
優れた内容の動画を多数提供。「Video」のページを開くと、100個程度のニュースビデオが提供されている。

◇YouTube サンデル教授「殺人の道徳的側面」について話す
有名な「ハーバード大学の白熱教室」。翻訳書を読むのではなく、このライブ録画で、会場の学生たちが積極的に発言している様子を見よう。

★数学を征服しよう

 英語と並んで、数学もコミュニケーションの道具として必要である。<中略>
 数学は実は武器なのだ。それをマスターしていれば、他人より有利な立場に立てる。たとえば、あなたが法律や経済の訓練を受けており、そのうえに数学も使えるのであれば、非常に有利な立場に立てる。それならば、なぜ勉強しないのか?
 「これまで数学を勉強しなくとも、問題は起きなかった」とあなたは言う。確かにそうかもしれない。しかし、数学は武器であり、それをマスターすることであなたがより強くなるのなら、勉強しなければ損なのではないか?<中略>
 数学を知らなくとも、経済学で成功できる。また、数学を知っているからと言って、経済学で成功するとは限らない(つまり、数学は必要条件でも十分条件でもない)。しかし、数学を知らないことから生じる心理的な圧迫感は無視できない。年を取るにつれて、数学を勉強しなかったことを後悔するようになる。そして、劣等感を覚えて理論の分野から撤退したり、「数学など必要ない」と大声で強調するようになる。数学を知らない人ほど、その力を過大評価してしまうのである。

★子供に勉強させたいなら、顕微鏡を買ってあげよう

 好奇心が勉強の基本誘因なのだから、子供に勉強させたい親は、子供の好奇心を育てればよい。小学生が塾通いをしても、好奇心はなかなか育たない。それに加えて空いた時間をテレビを見て過ごせば、好奇心は眠ってしまう。
「おじいちゃんに買ってもらった顕微鏡で科学の世界に目覚めた」という類のことを言っている科学者は数多い。それがきっかけで、好奇心は雪だるま式に膨らんでいくのだろう。

【感想など】
まず最初に、本書はタイトルこそ「勉強法」とありますが、いわゆる勉強のハウツー本とか勉強術といったカテゴリーの本ではありません。

これからの時代、何を武器にするべきか、言いかえれば何をどのような活用を想定して勉強するべきかを説いたもの。
つまり、勉強の「戦術」本ではなく、「戦略」本でございますのでお間違えなく。

さてさて、冒頭部分。
ワタクシかなり衝撃を受けました。

それは

パナソニック新規採用の8割は外国人

という現実。

日本の一部の企業が社内公用語を英語にすると発表したのがつい先日で、しかもワタクシ的には「おいおいそこまでやりますか?」といった印象だったのですが、現実世界の変化はワタクシの想像をはるかに超えたスピードで進行しているのですね。

しかも、われわれ日本人のライバルとなるのが優秀な中国人だとは・・・。

一人っ子政策以後の「80後世代」が日本人よりも総じて優秀だとは思いませんが、なんせ市場に供給される新卒の人口が毎年600万人(H21年度の日本の新卒者数は学部卒、修士卒あわせて約63万人)という規模の大きさから、当然優秀な人材の数も日本の学生を圧倒するのは必定。

しかも外国人新卒者は中国人だけではなく、その後にはインド人も含め、新興国の日本人よりも優秀で安い賃金でも一生懸命働く人たちが控えている状態。

日本人はこういった厳しい労働市場で今後勝負していかなければならないわけですが、となると今までどおりのことをやっていたのではグローバル化の波におぼれていくばかり。

では何をしなければならないのか?が本書のミソとなる部分ですが、答えは単純明快。

ズバリ、「勉強せえよ!」ということです。
それも、本当に武器として使える実力を手に入れろよと。

野口先生は武器として勉強で獲得すべきものは以下の二つ
①伝達能力
②問題の発見と解決能力

とおっしゃっています。

このうち伝達能力を担うのが英語と数学。

英語に関してはずいぶん前からその必要性が説かれてきたのでワタクシも納得なのですが、もう一つが数学とは・・・。
「数学もコミュニケーションの道具」というのには一瞬躊躇しましたが、確かに言われてみれば思い当たる節も少なからずあります。

野口先生のように経済学や特にファイナンス理論が専門でなくても、業種にかかわらず私たちの仕事の中には少なからず数式を使っていることって意外に多い。

例えばエクセルの関数とか。(←例のレベルが低すぎるか?)
まぁワタクシが使うのはこの程度ですが、野口先生のようにファイナンス理論を理解できるぐらい数式に精通できればこれはもうかなり強力な武器になることは間違いないでしょう。

某有名ビジネス書作家さんが、英語ITともう一つ勉強すべきは経済学といったのは、こういったところも含めてのことだったんだと納得しました。

ところで、

今回個人的に面白かったのが、野口先生の成功法則。

前提条件として「お気軽勉強法ではダメ」という立場の先生ですから、

「こうすれば成功する」というたぐいのノウハウ書を見つけたら、疑ってかかる方がよい。そのアドバイスは、マユツバであり、多分インチキである。最低限、不誠実である。

と巷にはびこるお気軽成功法則をバッサリ。

先生が一昔前に、勝間 対 香山 の“努力は必要か?”対決などといったレベルの疑問など入る余地のない“努力”至上主義であることは当然のこと。

“努力”は言うまでもない必要条件として、独特なのはリカードの比較優位論を例に成功法則を説かれている点。
これは成功本大好きなワタクシも初めて見ました。

見るべきは相対優位であって、絶対優位の観点からの成功法則を先生は批判しているのです。

多くの啓発書は、「あなたの特性がなにかを知り、それを活用しましょう」と言う。しかし、多くの人が言っている「特性」は、絶対優位の意味での特性である。

この「特性」にこだわる限り、ナンバーワン、あるいはオンリーワンにならなければ成功できないことになってしまいます。
しかし現実にはそれは非常に厳しいこと。

世の啓発書は、自分の本を売り込むために、「可能領域の拡大が容易でない」という事実を無視している。そして、拡大のための具体的な方法を示さずに、ただ「頑張れ」と言っているのである。

その結果として「自分にはとりえがない」「何をやってもダメだ」という考えに至り、先にふれた 勝間対香山 なんて現象も誕生することに。

見るべきものは相対優位。
自分のどの能力が人に優るかではなく、自分の中のどの能力が他の能力より優位かを見極めそれを活かすこと。

もっとも、英語と数学は勉強しないといけませんが(汗)

 

実力大競争時代の「超」勉強法

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  • 作者:野口悠紀雄
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

本書は幻冬舎の四本様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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