今日ご紹介するのは、「○○力」養成講座シリーズでおなじみ小宮一慶さんの最新刊。
このシリーズ、これまでも新書(ディスカヴァーでは携書)の形式ながら、読みやすくてしかも非常に濃い内容。
コストパフォーマンス性も高くてワタクシも大好きなシリーズなのですが、今回のテーマは「社長力」。
経営コンサルタントの小宮さんにとってまさにスペシャリストの分野。
本業中の本業です。
これはどんな“小宮節”が聞けるのかと楽しみにしていたのですが、
読んでみたらやはりスゴイ。
これはシリーズ最高傑作ですよ。
【目次】
社長力1 ストラテジー力 経営という仕事の認識を誤っていると うまくいくものもうまくいかない
1「管理」よりも「方向づけ」
2「未来予測」よりも「「現在過去分析」
3「目標」よりも「目的」
社長力2 マーケティング力 お客様の心をつかむマーケティングの本質を理解する
1「新規顧客開拓」よりも「既存のお客さま」
2「他社の真似」よりも「他社との違い」
3「価格で勝負」よりも「サービスで勝負」 他
社長力3 ヒューマンリソース・マネジメント力 何が人を動かすのかをほんとうに理解しているのか?
1「新規事業」よりも「人材育成」
2「スキル」よりも「価値観」
3「和気あいあい」よりも「価値観」 他
社長力4 会計力 会計・財務を経営的に考えているか?
1「数字」よりも「信念」
2「仕分け」よりも「読み方」
3「利益」よりも「読み方」 他
社長力5 リーダーシップと人間力 結局はリーダーの人間力がものを言う
1「総花的」よりも「重点主義」
2「気合い」よりも「具体化」
3「かっこうつける」よりも「行動」 他
【ポイント&レバレッジメモ】
◇「経営」の本質とは
①企業の方向づけ
②資源の最適配分
③人を動かす
◇「経営」とは独立したひとつの仕事、「管理」とも違う ⇒ 間違った方向づけで正しい管理をすることほど恐ろしいことはない
◇「お客さま志向」・・・お客さまとその背後にある世の中全体の動きを的確にとらえる
◇未来を予測するには、現在と過去をコツコツ勉強すること ⇒ 新聞を丹念に読む。とくに月曜の日経新聞の経済指標を定点観測する。
◇人は通常の時には給料(目標)についてくる。しかし、しんどい時にはビジョンや志(目的)についてくる。
◇ビジネスのコツのひとつは「何でもかんでもやらない」こと ⇒ 新規事業が成功する確率の高い企業と言うのは、既存事業でも十分に成功しているところ
◇小さなリスクを常に取り続けることで、大きなリスクは回避することができる。
◇お客さまの中でのシェアを高め、そのお客さまから「重要な」あるいは「大切な」存在と思われること
◇「下請け」よりも「パートナー」、つまり「自立」できる会社 ⇒ ビジネスでも人生でも、大切なのは「自立」を保つこと。自ら、選択権をもつこと。
◇ビジネスは「優勝劣敗」 ⇒ 誰かが勝てば誰かが負けるという「ゼロサム(足してゼロ)」だと考えるとうまくいかない。「切磋琢磨」が「創造」を生む。
◇「ナンバーワン戦略」・・・お客さまが求めているものは何かということを見極めること、そして、それを「徹底」することができるかできないかが、ナンバーワンかその他大勢かの違い
◇不祥事を起こす会社、自滅していく会社というのは、みんな内部志向です。外部志向でいる限り、会社はたいていうまくいきます。
◇ES(従業員満足度)が高くともCS(お客様満足度)など上がりません ⇒ 従業員の待遇を良くするためには、お客さまを最優先して利益を高めるしかないのです。
◇会社が従業員に提供できる幸せ・・・ ①「働く幸せ」(自己実現)、②「経済的幸せ」(お給料) ⇒ 自己実現とは、なりうる最高の自分になること
◇「お客様第一」は、働く人に働きがいを与え、そのことが会社に利益をもたらし、それが、さらに働く人に経済的幸せをもたらすという、マジックワードなのです。
◇「他社との違い」は ①Quality(品質)、②Price(価格)、③Service(サービス)の組み合わせで、お客様の視点に立った他社との差別化を。 ⇒ メインターゲットとするお客さまに主観的に「おたくが一番」と言ってもらえるQ、P、Sの組み合わせを提供すること
◇「お客さまは、製品の不具合は少しなら許してくれるが、サービスの悪さは決して許してくれない」
◇「ABC」・・・A=あたり前のことを、B=ばかになって、C=ちゃんとやる
◇「満足」より上に「感動」がある ⇒ 感動は、期待していた以上のことが起こった場合に生じます。「満足」は、ただ期待していたとおり、ということに過ぎません。
◇人を育てることが結局は企業業績を良くすることであり、有為な人材を育てることが大きな社会貢献である
◇価値観の対立は、結局、組織を空中分解させる ⇒ 「熱意や職業観、倫理観」といった基本的な価値観が一致する人を会社というバスに乗せることが大切
◇「和気あいあい」ではなく、「切磋琢磨」 ⇒ 実力のないリーダーは組織を和気あいあいにしたがる。和気あいあいとは、最も実力のない人に組織のペースを合わせること。
◇「信賞必罰」・・・準備し、リスクを取って頑張った人の待遇や環境を良くすることに注力する
◇小さな行動を変えさせるには、言うより書いて渡す ⇒ 「何度言われてもわからない」のが現実。「理解は偶然、誤解は当然」と思って、コミュニケーションを高める努力が必要。
(社長力1~3より)
【感想など】
◇この本、スゴク濃いです。
あまりに濃過ぎて、気になるポイントやフレーズを抜き書きしてたらもうきりがないので、前半の社長力3まででセーブしました。
今回、【ポイント&レバレッジメモ】は本書の前半3/5だけでしたが、それでも読んでいただければ分かると思いますが、コンサルタントとして実際に数多くの経営者と対してきた小宮さんだから書ける、「社長とは、経営者とは、こうあるべきだ!」ということがこれでもかと言わんばかりの勢いで書きつづられています。
かなり熱い!それでいて非常におもしろい本です。
やはり実体験から書かれているものは説得力がありますよね。
◇もちろん後半もオススメな内容。
まず、社長力4では、小宮さんの本領発揮、会計について非常にわかりやすく書かれています。
もちろん、「社長」に向けて書かれた本ですから
例えば「売上高」に関しては
会社の「社会での存在(プレゼンス)」そのものが売り上げであり、
お客さまに喜んでいただいている大きさである
とか、
利益は、会社やそこで働く人、社会をよくするためのコスト
といった、経営者にとって会計・財務に対して必要な視点が書かれていたりするのですが、ワタクシのような会計オンチな人間でも理解できるようなかなりやさしい説明で秀逸。
これから株式投資をしようと思っているけど財務諸表の見方がわからないとか、財務諸表のどこをどう見ればよい会社かどうか見分けられるのか知りたいという方に、本書の 社長力4 会計力 はオススメできるのではないでしょうか。
最終章の 社長力5 リーダーシップと人間力は成功哲学好きにもオススメな内容。
倒産した会社の社長ほど、「明るく、元気」で、(これは、成功している社長も同じです)、「大雑把、見栄っ張り」(これは会社を倒産させる社長だけです)です。
数多くの社長さんを見てきた小宮さんだからこそ書ける内容ですよね。
ちなみに、小宮さんがあげる、成功した人の特徴は次の五つ
①せっかち
②人を褒めるのがうまい
③他人のことでも自分のことのように考えられる
④恐いけど優しい
⑤素直
だそうです。
全国の社長さん、どうですか?
社長ではありませんが、ワタクシあんまり当てはまっておりません。まだまだ修行です。
◇最後に本書の使い方、「トリセツ」の提案
各章の最後に まとめのチェックリスト がついています。
もちろん本書の趣旨から言うと社長さんが自分の社長力を計るために使うのが正しい使い方なのですが、これを見てて思いました。
「うちの社長の社長力ってどうなん?」と社員が自社の社長を診断するのにぴったり。
もしこのチェックリストにかなりの頻度で引っかかるなら
「うちの社長、大丈夫か?うちの会社、大丈夫か?」と考えるきっかけになるかも。
提案②
就活中の学生のみなさんへ。
先輩訪問の時にこのチェックリストからいくつか質問してみてはいかがでしょうか。
もっとも、大きな会社だとなかなか社長と話すこともないでしょうし、質問される先輩も困ってしまうかもしれませんが、社長の考え方や姿勢は何らかの形で社風に影響をあらわすもの。
それに、先輩も「コイツ、面白い質問するな」と思ってくれるかもしれませんし、
そしてなにより、社名やブランド感で就職先を選ぶより社長で選ぶ方がこれからの時代間違いないのではないでしょうか。
世界的な大不況に立ち向かっている全国の社長さん。そして、すべてのビジネスパーソン、これから就活を本格化する学生さんへ。
数多くの社長さんを見てきた小宮さんだからこそ書ける稀有な本。
激オススメの一冊。
【関連書籍】
小宮さんの「○○力」養成講座シリーズをあげておきます。

ビジネスマンのための「発見力」養成講座 こうすれば、見えないものが見えてくる ビジネスマンのための力養成講座シリーズ (ディスカヴァー携書)
- 作者:小宮一慶
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2012/11/02
- メディア: Kindle版
【管理人の独り言】
最近、オグ・マンディーノの作品を続けて読んでいます。
そして、不覚にも涙してしまった。
久しぶりに本を読んで泣いたなぁ。
【追記】
ディスカヴァー社長室blog: 「社長力」と「一筆添える技術」に、早くもブログ書評が! ●田中+干場
で当ブログ記事を紹介していただきました。
干場社長ありがとうございました。
熱い書評、ありがとうございます。ディスカヴァーの干場といいます。小宮さんもすごく喜ばれると思います。当方のブログでも、書評記事のリンク集の中で、近く紹介させていただきます!
干場社長!(驚)はじめまして。コメントありがとうございます。
出版業界で一番熱い社長に“熱い書評”と言っていただき光栄です(笑)
本当にこの本、いい本だと思います。
日本全国の社長と名のつく方全員に読んでもらいたいぐらい。
素晴らしい本の影響で、日本が少しでも元気になればいいですよね。
書評ブロガーとしては、そのほんの少しでもお手伝いができたら幸せです。
微力ながら応援させていただきます。
リンク集、楽しみにしています。
私の「社長力」を丁寧にお読みいただき、また、大変好意的なコメントをいただいて感謝しています。
この本は、干場さんも書いていますが、私の自信作です。私の経営コンサルタントとしての基本的な考え方を書いたものです。
今後ともよろしくお願いします。
小宮様、
はじめまして、コメントありがとうございます。
ワタクシなどが評するのはおこがましいのですが、素晴らしい御本だと思います。
平易な言葉でありながら奥の深い内容。
やはり実体験から書かれている本というんは説得力が違いますね。
また、経営に限らず、成功哲学、人生の指南書としても読むことができる内容。
経営者以外の方にも是非読んでいただきたい1冊です。
これからも素晴らしい本を期待しております。
こちらこそよろしくお願いします。