今日ご紹介するのは、アルファーブロガー小飼弾氏の新刊
出版直後に読んでいたのですが、本業の方が年度末でとんでもなく忙しくブログどころではなくなってしまい、記事にするのが延び延びになっていました。
ようやくのアップです。
(これからしばらくは3月に読んだ本の紹介が続く予定です)
すでに多くの書評ブロガーが記事にしていて、今更感もあるのですが、
さすがに小飼氏らしく面白い切り口の本だったので、ここはあえて記事にすることで記録に残しておかねばとアップしました。
はたして、小飼氏のていしょうする「仕組み」、そして「新20%ルール」とは
【目次】
Part0 仕組み作りが仕事になる
仕組み化が進んだ社会
仕組み作りを仕事にするための「新20%ルール」
Part1 仕組みの仕組み 仕組みを作る前に知っておきたいこと
仕組みはどんなふうにできているのか
身近にある「テコ」と「奴隷」を使った仕組み
Part2 仕組みを作り直す 目の前の仕事を20%の力でこなす仕組み
プログラマーに学ぶ「仕組みづくり」の基本
プログラマーの三大美徳「怠慢」「短気」「傲慢」
日常業務を仕組化してみよう
Part3 仕組みを使う 仕組みのコストとテストを考える
仕組みを使ってなんぼ
「使わないでなんぼ」な仕組み
Part4 仕組みを合わせる チームで仕組み会うために
仕組みを合わせる基本ルール
上手に仕組みを合わせる
安全に“仕組み合う”ための仕組み
Part5 仕組みと生物 「新しい仕組み」をつくるヒント
生き残りの名人「生物」という仕組みに学ぶ
生き残るための仕組みを作る
Part6 仕組みの未来
「リソース重視」の仕組み作りが格差をなくす
新しい仕組み作りへリソースを投じよう
【ポイント&レバレッジメモ】
◇「本当の20%ルール」・・・既存の仕組みを回す仕事を勤務時間の20%で終わらせ、80%を新しい仕組み作りに当てる
◇あらゆる仕組みは「テコ」と「奴隷」でできている
・「テコ」・・・自分の力を別の形に変換する道具
・「奴隷」・・・自分以外の力を他から借りてくること(他力)。奴隷は自分で考えたり、自立して動けるという特徴をもつ。
◇仕組み三原則
①仕組みは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
②仕組みは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
③仕組みは、前掲第一条及び第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。
◇プログラマーの三大美徳 (ラリー・ウォール)
・「怠慢」・・同じ作業の重複を嫌がる→繰り返しの仕事を「仕組み化」する
・「短期」・・今後起こり得る問題を想定して仕組みを作る
・「傲慢」・・人様に対して恥ずかしくない仕事をし、保守する → メンテナンスしやすくする、自動化する手法を常に考える
◇仕組み化するときに真っ先に考えるべきこと ⇒ 「あと何回使えば元がとれるか」、「総費用をいかに抑えるか」
◇「遊び」には「楽しむために何かする」という意味も。そして「余裕」という意味もある ⇒ 仕組み作りにはどちらも不可欠
◇アウトソーシングは、自分でコントロールできる要素を減らす ⇒ よほど安価であるか、よほど信頼性が高くない限り、基本的に凶
◇アウトソーシングはコミュニケーションコストと時間コストが高くつく
◇生物ならではの仕組みの特徴
①生きていれば、最適である必要はない
②一度使った仕組みは、失敗も含めて手放さない
③できることだけを行い、できないことは無視する
◇生物の凄みは、個体や細胞をいとも簡単に犠牲にして、仕組み自体を生き延びさせてきたこと
◇(生物にとって)何が正しいかではなく、生き残った者が正しい
◇ブルー・オーシャンが青いのにはたいてい理由があるもので、それを見抜けるかどうかが生死を分けることになる
◇あと1ピースがあれば実現できるというところまで、物事(仕掛品)を具体化しておき、必要なピースが出てきたら、すかさず拾いにいく
◇リソース効率重視・・・使えるものをどれだけ有効に使うか
◇エサ集めの下手なアリはうろうろすることで新しいエサを発見できるチャンスが高まる
◇「十分に発達した仕事は遊びと区別できない」
【感想など】
この本、ワタクシ的に大まかに分けると
前半は「仕組み」作りに関する考え方と実際の技術から成る“戦術”の部分と
後半は生物を例にした「生き残る」ための“戦略”の部分からなっています。
まず前半の「仕組み」に関する部分ですが、まず驚かされたのは「新20%ルール」
「20%ルール」といえばグーグルが有名ですが、勤務時間の20%は自分の好きなプロジェクトや研究に使いなさいというもの。
これだけでも先進的だとワタクシは思うのですが、小飼弾氏の提唱する「新20%ルール」は
既存の仕組みを回す仕事を勤務時間の20%で終わらせ、80%を新しい仕組み作りに当てる
という驚きの内容。
なるほどねぇ~。
「仕組み化」とか「残業ゼロ」とかいった効率化を目指したビジネス書は色々ありますが、20%に短縮せよというのは初めて出会いました。
しかし20%まで短縮するのは並大抵のことではありません。
職種によらず、ほとんどの業種で実現不可能でしょう。
だって、8時間労働の20%って約1時間半ですよ(驚)
実現できるかどうかはともかく、これぐらい思い切ったレベルを目指さないと、これからの時代生き残れないということでしょうか。
1時間でも30分でも、いわゆる自己投資のための時間を確保するために、「仕組み」化に努力するのがこれから生き残るカギとなることは十分理解できます。
「仕組み」をつくるときの指針をプログラマーの立場から説明しているところも、ご自身がプログラマーである小飼氏の切り口の面白さ。
この辺の実際のテクニックは本書をお読みいただくとして、
難しいなぁと思ったのは「仕組み」が出来てからもいろいろと課題がついてまわるところ。
「仕組み」作りにこだわるのはいいのですが、完成した「仕組み」を守ることにこだわると
フォードは一度確立した仕組みを使い続ける」ことでフォード社を世界最大の自動車会社に「育てましたが、しかし、世界最大の自動車会社から転落した理由もまた、仕組みを使い続けたから
といった例もある。
ここは冷静で柔軟な判断を持ち続けることが肝要かと。
そのためにはやはり「新20%ルール」でできた余裕時間で視野を広げるために勉強しなければ。
結局、人間死ぬまで勉強なのです。
ハイ。
本書後半は「生物」に生き残るコツやヒントを求める内容。
小飼氏らしさが色濃く出ています。
斬新な
生物の凄みは、個体や細胞をいとも簡単に犠牲にして、仕組み自体を生き延びさせてきたことにある
という部分。
目からウロコと同時に恐ろしさも。
なるほど、会社が生き残る方法はまさしく生物と同じ。
いうまでもなく、犠牲にする個体や細胞とは子会社であったり、リストラされる社員や労働者。
上部レイヤーによって自身の存在が危うくなったとき(たとえば会社をクビになりそうなとき)はどうすればよいのか。<中略>下部レイヤーを犠牲にするのは生物の本質であり、生理は倫理に勝ります。
そのため、倫理的な側面から主張をするのではなく、自分がいなくなることで上部レイヤーが不利益を被る(会社が損をする)ことを明確に示す必要があるでしょう。
もしもの事態に直面してから倫理的な側面や義理人情に訴えるのではなく、実力をつけて必要な人材になる。
勝間さんの
も、小飼氏の「新20%ルール」も目指すところは同じ。
実力をつけるために勉強なり研究なりに打ち込める時間をつくること。
そのために新年度は仕組み作りに励んでみましょうか。
【関連書籍】
【管理人の独り言】
疾風怒濤の年度末の忙しさからちょっと抜けだし、ようやく3月に読んだ本の書評を書き始めたものの、新年度の忙しさも始まっておりまして、なんだか出口のないトンネルのような感じ。
「仕事があるだけ幸せ」と自分に言い聞かせて頑張っております。