マルコム・グラッドウェルの最新刊。
ワタクシ、彼の前2作を読んでその面白さにすっかり魅了されたひとりでして、新刊が出るのを心待ちにしておりました。
しかもサブタイトルは「成功する人々の法則」。成功本好きのワタクシとしてはど真ん中ストライク。
これだけでもマストバイなのに、さらに訳者がこれまたワタクシ大ファンの勝間和代さんとあってはもう・・・
「読ませてくださいお代官様」状態ですよ。(←すいません勝手に興奮しています)
今回はどんなグラッドウェルワールドが展開されるのか、
さっそくまいりましょう。
【目次】
プロローグ ロゼトの謎
第1部 好機
第1章 マタイ効果
第2章 一万時間の法則
第3章 天才の問題点 その一
第4章 天才の問題点 その二
第5章 ジョー・フロムの三つの教訓
第2部 「文化」という名の遺産
第6章 ケンタッキー州ハーラン
第7章 航空機事故の“民族的法則”
第8章 「水田」と「数学テスト」の関係
第9章 マリータの取引
エピローグ ジャマイカの物語
【ポイント&レバレッジメモ】
◇ outlier(名詞)・・・ アウトライアー(外れ値)
①中心やその近くの集団から、著しくかけ離れた地点や、まったく異なる分類に属する存在
②(統計用語)他の測定値から大きく離れた観察地
◇成功者の出自を訊ねてこそ、成功者とそうでない者の背後に潜む本当の理由が見えてくるのだ。
◇アウトライアーが生まれる三つの条件
①選別 ②能力別クラス編成 ③特別な体験
早い時期に優れているかそうでないかを決める。次に“才能のある者”と“才能のない者”に分ける。そして“才能のある者”により質の高い体験を与える。すると、年齢を区切る期日のすぐ後に生まれた少数のグループに大きな優位点が与えられることになる。
◇幼いころの発育差は、大人になっても解消されずに根強く残るのである。多くの学生にとって、子供時代の不利は大学に行くか行かないか、そして中流階級で成功できるかできないかの差となって現れる。
◇「マタイ効果」・・・誰でも、持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる ⇒ 成功している人は特別な機会を与えられる可能性が最も高く、さらに成功する
◇成功とは、社会学者がこのんで呼ぶ「累積するアドバンテージ」の結果である。
◇私たちは成功を個人の才能と深く結びつけて考えるあまり、成功者をトップに押し上げた好機の存在を見逃している。<中略>成功者とそうでないものを決めるにあたり、私たち、つまり社会が非常に大きな影響を及ぼしているという事実を、みんな見落としているのだ。
◇「一万時間の法則」・・・世界レベルの技術に達するにはどんな分野でも、一万時間の練習が必要だということだ
◇裕福な家庭の親は、子供の自由時間に深く関与し、さまざまな活動でわが子を送り迎えし、子供に教師や監督やチームメイトについて頻繁に質問する。貧しい家庭の親はわが子の行動を、大人の世界とは関係のない、大して重要なものではないと考えていた。
◇ラローは中産階級の親業のスタイルを“共同育成”と名づける。中産階級の親は積極的に“子供の才能や考えや技能を育み、評価”しようとする。一方、貧困家庭の親は“自然な成長による結果”を待つ戦略傾向にある。貧困家庭の親は子供面倒を見る責任は認めるが、子供に自由に成長させ、子供自身の発達に任せる。
◇たった一人で成功した者はいない ⇒ 下層階級の神童は誰ひとりとして名声を得られなかった。彼らに欠けていたものは子供たちに実社会で生きていく準備をさせるためのコミュニティ(周囲の社会)だ。
◇「自主性」、「複雑さ」、「努力に見合う報酬」の三つが、満足のいく仕事に求められる特性。人を幸せにするのは、9時~5時の仕事でいくら稼げるかではない。「その仕事に充実感がもてるか」どうかだ。
◇「文化という遺産」・・・人間の態度はいかにして、世代から世代へと受け継がれるのだろうか?それは社会によって受け継がれるのだ。
◇歴史上、米を育ててきた者はつねに、他のどんな穀物を育てたものよりも勤勉に働いた ⇒ 稲作農家はより頭を働かせ、より時間をうまく使い、より良い選択を行うことでコメの収穫量を増やした。稲作は“技術本位”である。
◇「1年360日、夜明け前に起きたもので、家族を豊かにできなかった者はいない」 ⇒ 水田がつくる文化の神髄とは、重労働が、水田ではたらく者に、不確実性と貧困の中に意義を見出す方法を与えることだ。
◇アジアの子供たちが数学に強い理由
①数字の発音時間が短い。
②数の数え方が規則的
③アジアには長い夏休みがなく、授業時間数が多い
◇成功とは予測し得る道をたどるものだ。もっとも頭のいい人間が成功するのではない。
◇成功とは人間が自分のために行う決断や努力の単純総和ではない。それはむしろ贈物である。アウトライアーは好機を与えられたもの、そしてそれをつかむ強さと平常心とを兼ね備えたものだ。
【感想など】
前2作ともそうだったのですが、マルコム・グラッドウェルの著書はフォトリーダー泣かせです。
そして今回もそうでした。
というのは、マルコムの本はページ数が非常に多い(今回は300ページ越え)のですが、主張自体はいたってシンプル。
例えば、
急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)
- 作者:マルコム・グラッドウェル,Malcolm Gladwell
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
の内容に関して勝間和代さんは
①少数の目利きに影響を与えること
②その内容が記憶に残ること
③ちょっとした「こと」が行動変化を手助けすること
360ページもある本の中から、この内容だけをフレームワークとして残しておけば、もうそれで本の読み方としては必要十分
としています。
今回の『天才! 成功する人々の法則』でも、その主張はいたってシンプルなもので、
「天才は、本人の才能だけではなく、才能を開花させるに至った経緯が最も重要である」という視点をベースに
・天才(成功者)は「好機」(生まれるタイミング、1万時間練習できる環境、社会や共同体など)に恵まれている
・「文化的遺産」の影響力も大きな要因
といったところかと思われます。
ではなぜたったこれだけのことを主張するのに300ページ越え?と思われるかもしれませんがそこがマルコムの真骨頂。
彼の本の面白さはシンプルな主張を証明するためにありとあらゆる実験のデータや事件事故、歴史上の出来事などをこれでもかと積み重ねていくところ。
そしてその一つ一つの例が非常に興味深く目からウロコ、あるいは「なんでこんなことに気がつかなかったのか?」といったものが次から次へと出てくるのには、「もうマイリマシタ」としか言いようがありません。
“稲作民族の勤勉性”をイギリス生まれでニューヨーク在住の作家に指摘されるまで気がつかなかったとは・・・ わたくしたちの働くことは美徳という価値観はそこから来ているのですね。
で、冒頭部分の“フォトリーダー泣かせ”の話ですが、
どういうことかというと、フォトリーディングでこの本を読むと、引っかかるのが先述のフレームワークだけということになりかねず、結局普通読みしなければならないから。
だって、マルコム作品の楽しみは彼が積み上げていく実証データや事例を知ることですからね。
是非速読できる人もじっくり味わってほしい一冊です。
さて、個人的に引っかかった個所が二つ。
一つは冒頭部分の“生まれた月によるアドバンテージ”の話。
これはちょっと納得いかない。
というのも、ワタクシいわゆる“早生まれ”でして、4月2日生まれの子とは約1年誕生が遅れるハンデをもって小学校に入学しております。
しかし、スポーツの面でマルコムが主張するような不利にはあったことがありませんでした。
なぜなら、体が大きかったから(今でも無駄にデカイですが・・・笑)。
中学時代はバスケット、高校からは武道に進みましたが全然不利は感じませんでしたよ。
これに関しては個体差がかなりあるのではと思います。
ただし、精神面ではかなり成長にハンデがあったらしく、のちに小学校1・2年の時の担任の先生にこんなことを言われました
「○○君(ワタクシ)はいたずらしても怒る気になれなかった。幼すぎて・・・」
体はでかいガキ大将でも中身は幼稚園児だったのですね。
先生お世話になりました。
もう一つ引っかかった部分。
それは「一万時間の法則」でした。
どんな分野でも一万時間スキルを磨けば一流になれるというもの。
これは「生まれながらにして持っている才能」というものに恵まれていないワタクシの様な凡才にとって“朗報”なのでしょうが、それにしても一万時間とは・・・・
たとえば、書評ブロガーで考えてみると、1万時間で小飼弾さんのようなアルファーブロガーになれると仮定してみましょう。
ワタクシの場合一本記事を書くのに3時間くらいかかりますから、毎日3時間書いたとして9年以上・・・・・(遠い目)
記事本数にして、3333本・・・・・(失神寸前)
いかん、考えるんじゃなかった(後悔)
とりあえず一歩づつ前進ということで、みなさん、9年後の一龍をおたのしみに・・・
【関連書籍】
【管理人の独り言】
先週末に大阪に行ってからどうも体調がすぐれず、
水曜日からはのどが痛くて、声は出ないし咳は止まらないし、
「これはもしや新型インフルエンザに感染したのか?!」
とビビっていましたが、ただの風邪のようです。
ワタクシが咳をすると逃げていく職場のみなさん。
そりゃ微妙な時期に大阪に行ったワタクシが悪いのではありますが、
バイ菌扱いはやめておくんなまし ゴメン \(__ )三( __)/ ゴメン