おはようございます、一龍です。
今日ご紹介するのは高橋宣行さんの新刊。
元博報堂の制作部長としてクリエイティブな現場の最前線で活躍されて方による、クリエイターへの60の教訓。
そこにはもの作りだけにとどまらない深い教訓がありました。
はじめに
本書は元博報堂のコピーライターであり、制作部長を務められた高橋氏がクリエイターとしての自分を鍛えてくれた言葉を「クリエイターの60訓」としてまとめたものです。
さすがに30年間現場で一線に立ち続けた著者を鍛えた言葉だけに”本質”をついた言葉の連続。
まずはその一端を御覧下さい。
クリエイターのポイント
★発想って、結局、人柄だよ
20年以上、同じ得意先を担当していたグループリーダーT氏は「あえていえば発想って、人柄だ」と言います。
「結局、性格のいい人が勝つし、相手から惚れられる。魅力ある人間が語り、行動し、創るものは信じられるし、温かい。わがままはダメ。媚びてもダメ。すぐ底が割れる」。また「広告を創る人は、世の中の幸せにどうつなげるかを考えないといけないし、想いがないとね」と、彼は経験から語ります。⇒ いかに考えるかは、いかに生きてきたか、いかに生きるかと無縁じゃない。
★悩む力がなさすぎるよ
今回は、N局長が午前中の会議で若手に苦言を呈した話を聞く。
「悩む力がなさすぎる!」
「アイデアは思いつきではない。悩んだ人だけに閃くものです。コアが面白ければ、その先に広がりがある。それを具体的な形にしていく段階で、また悩みが来る。悩むことができる人間は、それだけレベルが高いということです。しかし、悩めない人がいる。その人は、自分で最後まで形にするというエネルギーに欠けている。つまり、『会議の材料を提供すればいい。周りがなんとかしてくれるだろう』と、安易に構えている」と。⇒ 逃げるな。向き合え。悩み方が浅い。最後まで突きつめることを覚えよう。
★「好き」のレベルでメシは食えない
「ブロの世界では『好き』と『うまい』は一体にならない」、「『好き』のレベルではメシは食えない」と戒めているのです。
「好き」を継いで、磨いて、「うまい」と言わせる。それが個性となって、売り物のレベルに引き上げていきます。「好き」があることはしめたものです。
「好き」は「夢中」を呼び、「夢中」は「深堀り」と「継続」を呼びます。
好きだとトイレでも、電車の中でも考える。突き抜けると自分の持ち味となる。「好き」は人を違う圧倒的な高みへと連れて行ってくれる、大きな芽です。⇒ 「好き」を磨いて、「うまい」と言われ、「うまい」が個性となり、自分の売り物になる。
★何をしたいのか?どうしたいのか?
「ウケたか、ウケなかったか、売れたか、売れなかったか、に焦点をあてるだけでは、人間はいやしくなっていく」
「コミュニケーションは、相手に何をしてあげたいのか、どうなって欲しいのか、その想いの強さと熱さで決まるのだ」と。
確かに今は、人を幸せにすることや、心や文化、さらには社会全体が企業のテーマとなってきています。提案は、モノと社会との間にあるものです。
「明るく楽しくする方法」「先をよくする方法」を探し、創り出す。人や社会へのこだわり、そして執着心を持つことで人を巻き込めるのです。⇒ ウケを狙って目立たせただけで「表現している」と勘違いするな。
★個人の「のれん」が、ものをいう時代なんだ
「自分の能力を金にかえる——これがビジネスだ。そのためにも自分の売りものをつくれ。自分の得意技を持つ、自分の色を出す、自分のユニークさをつくる。時間をかけて磨いて、売りものにしていく。ここで初めて金になる」
「人のやれないことをやり、人のとれないぐらいの金をとる。高いと言われても、これならしょうがないと思わせるかどうかだ」
いまやソフトとハード、サイエンスとアート、客観的論理と主観的感性など、相反する視点や見識を持つ、魅力的な人がより自らの存在を高めています。そして成果を期待できる個人に、名のある人に、顔の見える人のところに、仕事がやってくるようになりました。⇒ 自分の能力を金にかえる——これがビジネスだ。そのためにも自分の売りものをつくれ。
★書くことが、考えることだ
「生まれないのは、頭のなかが整理されていないだけだ。頭の中に置いたままでは、考えていないのと同じだ。曖昧な思考は、書くことで具体化するのだ」
頭の中を出しきりましょう。誰だって最初からすごいアイディアなんて生まれないのですから。つまり目に見えるカタチになって初めて、アイディアといえるのです。
その意味では「書くことが考えること」。①書き散らかして、②整理して、③縮めて磨いて、ピカピカのアイディアにしていきます。⇒ 頭の中に置いたままでは、考えていないのと同じ。まず書き始めよ。
★自分の言葉でしゃべりなさい
「右から左へ書き写すようなコピーでどうするんだ。パンフレットを読み、資料や周辺情報を読み、それをいったん捨てて、自分の身体を通し、自分の言葉で書け」
「コピーライターはジャーナリストとしての姿勢を持ち、翻訳者のように企業の言葉を生活者の言葉に翻訳するんだ」
このとき、私は完全にコピーライターとしての存在を否定されました。
これはすべてのビジネスパーソンに通じる姿勢です。情報はそのまま出すものではない。情報を入れて入れて、飲み込んで、自分なりの意志と判断を持って、自分の肉声で語ったり、書いたりすることが必要です。その時、情報の送り手(書き手)に十分な貯えがなければ、自分らしくも、相手の立場に立つことも、優しく語ることもできません。ビジネス自体、分かりやすさがすべてに優先します。⇒ 自分の身体を通し、自分の言葉で表現することで、情報は自分のものになる。
★ここにメッセージ性がないね
「この企画、メッセージ性がない」
「このアイディアにはメッセージ性がない」
「メッセージ性がない」とは、そこに新しい思想、着眼、発見が伴う提案がないことです。「本当にこのメッセージで、人は動くのか、共感するのか」、そんな強い意志が問われます。発信しても情報価値がないと関心を引かないのです。⇒ アイディアに新しい思想や発見、主張、志がないのなら、人は動かない。
感想
◆すべての仕事はクリエイトだ
いかがでしょうか、かなりドスンと来た方もいることと思います。
この本は博報堂での経験が元となっていますので、書かれている内容は広告やCM作りに関連したモノ作りに対する考え方や姿勢、テクニックがベースとなっています。
しかし、すべての職業はなんらかの価値を生み出す、クリエイトするもののはず。
そう考えると、異業種であっても学ぶ点は多いと思います。
私自身、CMや広告とは違いますがブログという文章に寄る”発信”をしているという点てかなり参考になりました。
◆人間がベース
例えば一番最初に登場する「結局、人柄」という言葉。
商売柄(?)人気ブロガーさんのブログをよく読みますが、まさに「ブログは人柄」が魅力の根底だなと感じています。
広告と違って長い文章を書くブログの場合、特に書き手の人柄や人生経験が色濃く滲み出てきます。
やっぱり人気ブログの書き手はその人生も魅力的だし、考え方も面白い。
文章も含めてモノ作りはまさに人間がベースなんだなと。
たとえば最近iPhoneが発売されて、多くのブロガーさんがそのインプレッションをブログにアップしていますが、同じガジェットをレビューしても書き手の人間性や人生が出ているものです。
表現や視点が実直な方と奇をてらう方、新しいiPhoneを手にした喜びが前面に出る方とまだあまり使ってないのに批判的な方等々。
伝え方や伝えるものはそれぞれでいいと思いますが、結局ブログも
性格のいい人が勝つし、相手から惚れられる。魅力ある人間が語り、行動し、創るものは信じられるし、温かい。
ということなんだと、常々感じていたことを言語してくれた感じで大いに納得しました。
◆考え抜け!
それと関連して表現方法もかなり考えさせられた一冊となりました。
実は昔、ブログで本のレビューを書くとき、記憶に残る文章を必ず一節入れるということを意識して書いていた時期がありました。
読んだ人に「うまい!」と言わせるような、それこそコピーのような表現にこだわったのです。
実際、「このフレーズがいいね」と言われたりしたこともありました。
しかしあるときハッと気がつきました。
「俺が伝えたいのはこの本の良さであって、うまい表現をするためにブログを書いているんじゃない」
と、それで変なこだわりはやめました。
自分はコピーライターじゃないし、プロの書評家になりたいわけじゃない。
自分が感じたことを、自分というフィルターを通して文章にし、それを伝える
それが自分の価値だと思ったのです。
それからは自然体で、素直に書くことにしています。
ただしそのぶん、「この本のよさはどこか?」を考えることに時間と力を使うようにしてですが。
まぁそれで超人気ブログになったわけではないのですが・・・
それでも、本書中に「翻訳者」というキーワードが登場しますが、自分もある意味「翻訳者」で、方向性は間違っていなんだとちょっと安心した次第です。
もちろん課題満載でまだまだやるべきことや足りないものが山積みなのですが・・・。
それを気づかせてもらえたのも本書のよかったところかな。
ということで、すべての職業人にオススメですが、とくに”表現者”は読めば得るところ大な一冊。
超オススメです。
本書はDiscover21社様から献本していただきました。
ありがとうございました。
目次
はじめに
PART-1 姿勢
PART-2 創造
PART-3 実践
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