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「第3世代とは何か?」をわからずして経営改善はありえない

おはようございます、一龍です。

アベノミクスで経済環境が少し改善される兆しがありますが、過酷な労働を強いるブラック企業や大手有名企業の不祥事などのニュースが後を断ちません。
また、企業の寿命が縮まり、誰もが知っている大企業が倒産して驚かされることも珍しくなくなりました。
おそらくどの企業も生き残りをかけて必死で”改善”を行っていると思うのですが、こういったニュースを聞くたびに漠然と「なんか間違っているんじゃないか、わかってないんじゃないか」と思っていました。

そんな想いが今回、ファンクショナル・アプローチの第一人者、横田尚哉さんの新刊『第三世代の経営力』 の「第3世代」の解説を読んでサーッと霧が晴れるように腑に落ちました。

ミスマッチなのです。
時代と、「第3世代」の時代とあってないのです。

ということで、本エントリーでは「第3世代とは何か?」にポイントをおいて本書からピックアップしました。

 

第3世代で生き残るために「第3世代」について知っておくべきポイント

 

★第3世代に重要なのは見極めと切り替え

本書タイトルには「第3世代の〜」とあります。
本書で著者は戦後の日本を3つの世代に分けています。

1945〜1973年を第1世代。
1973〜1997年を第2世代。
そして1973年から現在までが第3世代です。

第1世代は戦後復興から高度経済成長、そしてオイルショックまでがあたります。
「仕掛け」の世代で、速度を重視し、この世代の価値観は努力と行動で、勝つことがモチベーションでした。

第2世代は一億総中流階級社会からバブルまで。
第1世代の「勢い」がなくなり、情報を重視して様々な「仕組み」を作り出す世代になります。
車、家電など日本製品が世界中に輸出され、豊かになった日本人はライフスタイルの多様性が生じます。

こういった時代を経て、第3世代が誕生します。
では、第3世代について著者の主張をピックアップしてみましょう。

第3世代の説明部分に、「切り替えを重視した第3世代の経営力(1997年〜)」と見出しをつけているように、著者は第3世代の経営力は「切り替え」が重要だと言っています。

というのも

 第3世代は、「見極め」の時代です。全体的に見て、この時代は切り替えを重視しなければならない時代と言えます。海から陸に上がるくらいの進化が必要です。

 

 第3世代は、第2世代で出来上がった仕組みを次々と変えていきます。過去の手段を手放して、新しい手段に切り替え、乗り換えていく時代なのです。うまく切り替えられる企業が生き残っていく時代なのです。

第3世代はこれまでの手段や常識がそのまま通用しないようです。
それはなぜなのか。

この理由を知るためには、第3世代の時代や環境、そして価値観を理解する必要があります。
少し具体的に見ていきましょう。

★第3世代の時代・環境、そして価値観

第3世代が生きる時代ととりまく環境、そして価値観とはいかなるものでしょう。
それがわかる幾つかのキーワードを挙げてみます。

まずこの世代ではインターネットの普及とともにパソコンが普及、そして携帯電話も普及しました。
情報収集、情報整理、事務作業の手段と、通信手段が激変しました。

バブルが崩壊し、1997年をピークに所得が減少していくと、贅沢から工夫し、倹約することが美徳という文化が生まれました。

1998年から学校完全週5日制となり、2002年からはゆとり教育が始まりました。
競争から個性や自分らしさに価値観がシフトしていきます。
「世界に一つだけの花」が流行したのもこの時代です。

1992年にブラジルのリオで「地球サミット」、97年には「京都議定書」が採択され、環境への関心が高まり、ゴミの分別の取り組みやリサイクルの意識が高まり、学校や職場で積極的な運動が始まりました。

 こうして世の中は、倹約ムードの中、いろいろな組織だ合併していき、がむしゃらに生きるよりも精神的にゆとりを持つことを望み、「ヒト、モノ、トキ」を大切にしていく時代へと乗り換えていくのです。
 こういう時の経営力は、市場の求める製品やサービスに切り替えていかなければなりません。たとえ自社の都合に合わなかったとしても、誠実な企業の姿勢が重要な時代なのです。

また、第3世代は「交代」の世代でもあります。

2009年に民主党へ政権が交代しました。
さらに2011年に東日本大震災が発生し、津波の威力と恐ろしさ、原子力発電の脆弱性と放射能の危険を思い知らされました。

 人々の価値観と生活が変わり、生命の重みと安全確保の意識が変わり、エネルギー資源の交代が進むきっかけとなりました。

こういった様々な変化から、第3世代にあった経営方法を導き出し、変化していく必要があるわけですが、大切なのは

表面的な現象にとらわれるのではなく、本質を捉えて、目的を見失わないようにすること

だと言えます。

 このように見てくると、この頃の環境は、「本質」を求める時代とも言えます。上辺で、表面的で、形式的に捉えないで、本質的に見て、本気で考え、本物を残していこうとする時代です。継続するモノは継続し、交代するものは交代していく時代です。
 だから、過去のシガラミを断ち切り、誰かのコダワリを跳ねのけ、先入観や固定観念といった思い込みを手放す判断が必要となります。客観的な分析と創造的な発想のできる経営が求められる時代なのです。

こうしてみると、第3世代は第1、第2世代とは全く違った環境で育ち、そのため全く違った価値観をもっていることがわかると思います。

戦後70年の短期間で全く別の国民と感じるほど変化しているのです。

この変化に企業も対応しなくては生き残ることはできないでしょう。

では第3世代の経営に進化するためにはどのような変化が必要なのでしょうか。
次にそれらを見ていきましょう。

★第3世代の経営力を支える3本柱

著者は第3世代の経営力を支える3本柱として次の3つを挙げています。
実はこの3つの柱が、今後企業が生き残っていくために絶対必要な価値観、重視するものだと私は思っています。

簡単にピックアップすると、

(1)売上高ではなく顧客満足をみる術

第3世代では、顧客がどのくらい満足しているかを見る必要があります。
売上高は経営管理上大切な数値ではあります。

 しかし、あくまで結果の数値であって、本質ではないということです。結果に表れるから、結果の数値を見ていればいいという考え方は第2世代までの考え方です。経営の良し悪しを活動の下流で測ろうとする受身の姿勢では、進化できません。

(2)労働時間ではなく忠誠心を測る技

第3世代は、信頼ややりがいに価値観をおき、共創を望む草食系の人が多いので、従業員との関係も良好でなくてはなりません。
労働管理という意味では、労働時間を測る必要はあります。

 しかしながら、進化するために必要な従業員との関係は、労働時間ではないということです。従業員との関係を測る時は、労働時間を測るのではなく、忠誠心を測る必要があります。

(3)利益ではなく便益を捉える力

協力者や協力会社との関係は、利益を捉えて配分するという意識ではなく、お互いの便益を捉えてわかちあうという力が必要です。「ギブ・アンド・テイク」という概念ではなく、「シェア」という概念です。

 パートナーと何を分かち合い、何を考えあっているのかを捉える力が必要です。金銭だけで繋がっている関係では、進化していくことはできません。

顧客としても労働者としても、第3世代は第2世代までとは全く違った価値観をもっているということです。
ここを理解したうえでないと、おそらく企業は有効な変革ができないと思われます。

感想など

 

◆生き残りをかけた経営改善は第3世代を知り、活かす方向にしかありえない

本来本書のメインの部分は、第4章以降のファンクショナル・アプローチの手段によって、企業が第3世代に適合する組織に変わる方法について書かれた部分です。

ですので本書の魅力をお伝えするためには、ファンクショナル・アプローチの手法を紹介するべきなのですが、本エントリーでは第3世代の説明の部分を紹介しました。

それは、本エントリーの冒頭部分で書いたように、企業のやっていることと時代がミスマッチだと漠然と感じているからでした。

このミスマッチ感を腑に落ちるカタチで文章にしてくれているのが、次の一文

私たちは今、第3世代の中にいながら、第2世代の身体で生きていこうとしているのではないでしょうか。

これに完全に共感してしまいました。

すこし自分なりに言い換えると、

第1世代の価値観を刷り込まれた第2世代の脳で、第3世代の中を生きている

と言った感じでしょうか。

私は40代後半ですから、第2世代ですが、第1世代の父の価値観を刷り込まれ、受験地獄といわれたころに学生時代を過ごしています。

小さいころにはスポ根モノが流行りましたし、努力し、競争して勝つことが美徳という第1世代の価値観が残る中で成長しています。

しかし豊かで物があふれる時代でもあり、バブルも少し経験しました。

会社組織をピラミッドに例えると、上部の四角錐には、大抵の場合この第1世代の価値観を刷り込まれた第2世代がいるはずです。

この上部の四角錐が会社組織の”脳”に当たる部分ですが、実際に組織を支えている”実働部隊”はピラミッド全体の下3分の2を占める第3世代なのです。

そしてこの境界にある目に見えない壁が実は思っている以上に分厚くて固いということを最近実感するようになっています。

同じように感じている方が少なからずおいでるのではないでしょうか。

で、この第3世代を活かせる方向が組織の変わる姿だと思うのですが、第2世代の我々はあまりにも第3世代を理解していないと思うのです。

ここで言っておきますが、私はよく「今の若い者は・・・」という年配の方がやる若者批判をするつもりは毛頭ありません。

自分の職場の若手をみても、本当に優秀だと思うのです。
就職氷河期を視て育った彼らは、大学でもちゃんと勉強してきています。(第2世代の我々は大学といえば遊び呆けていましたよね)
ポテンシャルは非常に高い。

しかし、「本質」を見抜く世代で、「自分の価値観」をしっかりもっている彼らには、第2世代の上層部が上意下達式に経営しても通じないのです。

もはや、体育会系的「努力」と「根性論」で、「つべこべいわずにやれ!」と言ってしまう第2世代の脳では、体はついてこないのです。

ではどういう方向に改善したらいいのでしょう。

私が好きな本に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズがあります。

この本に掲載される会社には、第3世代で生き延びることができるヒントが満載だと思います。

その一つが「社員満足度」。

この本に掲載されているどの会社も顧客を大切にしているのですがですが、それと同時に注目すべきは「社員満足度」も非常に高く、離職率が低いという点です。

これらは「何のために働くのか」といった、労働観の本質に起因しています。
高い給与や昇給、あるいは昇進といったご褒美だけでは、第3世代は働きません。

彼らのポテンシャルを引き出すには「労働」というもののより本質を見極める必要があります。

『第三世代の経営力』で例として取りあげられいるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、ヴァージン・グループ、スチュアート・レオナルドではいずれも、「企業は誰のためにあるのか」という問いに対して、「顧客」と「社員」が必ず最優先されています。

けっして「株主」や「経営者」ではありません。
企業の経営改善のキーは「顧客」と「社員」をいかに満足させるかに集約されると思います。

また、顧客について診ても、実は第3世代は「顧客」と「社員」を大切にする会社に非常に敏感なような気がします。

過労死を出すような企業、「ブラック」の烙印を押された企業に非常に厳しい見方をします。
某和食居酒屋チェーン店などがいい例でしょう。

◆「誰のため、何のため」と問うことで本質を見極める

ではどのように改善していけばいいのでしょう。

その方法は本書後半に具体例とともに書かれていますので、直接お読みいただきたいのですが、本エントリーではキーワードを提示しておきましょう。

そのキーワードとは

「誰のため、何のため」

です。

この言葉、これまでの横田尚哉氏の著書で登場していますが、ファンクショナル・アプローチでファンクションの目的を抽出するときのマジックワードです。

第3世代は「本質」を見極める世代です。

社員にしても顧客にしても、「本質」に敏感です。

社員なら「何のために働くのか」「この仕事は何のためか」「この仕事が世の中にどう役立つのか」そして、「今の仕事が自己実現に繋がるのか」といったところが気になるところでしょう。

こういった点に納得出来ないと、第3世代の社員は本領を発揮できないのではないでしょうか。

また、顧客も同様で、「この製品(サービス)が自分の人生にどんな価値を生み出すのか」というところから、「この製品(サービス)が世の中のためになるのか」といったところまで、シビアなものの見方をします。

顧客よりも儲け第一主義の企業は淘汰されるでしょう。

自社の体制を変えたい、ヒット商品(サービス)を生み出したい、そして第3世代で生き残っていきたいと考えているなら、まずは「何のために、誰のために」の自問自答をしてみてください。

そのうえで本書の後半のファンクショナル・アプローチの手法を読めば、きっと向かうべき方向が見いだせるのではないでしょうか。

最後に、本書の冒頭に書かれているダーウィンの言葉を引用します。

「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。唯一生き残るのは、変化に適合できる種である」

本書は著者の横田尚哉様より献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに
第1章 経営は進化しなければならない
第2章 経営力から見た3つの世代
第3章 進化するために備えるべき要素
第4章 第3世代に適合した姿に変わる方法
第5章 いつまでも進化し生き残る法則
おわりに

関連書籍

横田尚哉さんの既刊本と当ブログでの紹介記事です。

 

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