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出退勤の時間自由、嫌いな作業はやらなくてよい、仕事の常識を打ち破った小さなエビ工場の働き方を紹介

おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。

自由に生きていくことを目標にしている僕は、新しい働き方にまつわる本をたくさん読んできましたが、今日ご紹介する本にはとにかく驚かされました。

エビの加工をしているパプアニューギニア海産のユニークな働き方を紹介した『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』 です。

なんと、出退勤の時間自由で欠勤する場合の連絡はしてはいけない、自分の嫌いな作業はしてはいけないなど、これまでの常識など軽くすっ飛ばしてしまう内容なのです。
しかも作業効率がアップして利益も伸ばしているのだというからさらに驚きです。

今回はパプアニューギニア海産の非常にユニークな働き方の一端をご紹介します。

パプアニューギニア海産の本当に働きやすい職場づくりのポイント

★好きなことであれば、人は向上心を持ち、力を発揮する

 好きなことであれば、人は向上心を持ち、力を発揮する
そして、人が人を管理しようとすると、ちょっとした行き違いでも気力を失ってしまう。逆に個々の自主性を大事にすることで、気持ちが前向きになり、効率や実績が上がる可能性があるのです。

★「フリースケジュール」、好きな日に出勤できる会社

 はじめに取り入れたのが「フリースケジュール」という制度です。<中略>
毎週決められた曜日に出勤するという、これまでの会社の常識を変えるところから始めたのです。言葉だけを聞くと、難解な制度のように感じるかもしれませんが、内容はいたってシンプルです。要するに「好きな日に出勤すればよい。連絡の必要はありません」というだけのことなのです。

★「嫌いな作業をやらなくてよい」職場

もう一つ、僕たちの工場では、「嫌いな作業をやらなくてよい」というルールを作っています。
<中略>
先ほども述べたとおり、人はそれぞれに好き嫌いがあり、得手不得手があります。それは仕事でも同じはずです。<中略>
当然、嫌いな作業を担当することになれば、嫌な気持ちで仕事をすることになりますし、自分が好きな作業をほかの人ばかりがやっていれば、その人に対しての不満が募ります。
ですから、こういったここの向き不向き、好き嫌いの多様性を仕事の中に取り入れられたら、さらに働きやすい職場が実現できると考えたのです。それが「嫌いな作業はやらなくてよい」というルールです。

★人を縛らない職場が生んだプラスの循環

離職率の低下

 まず人がやめなくなりました。
フリースケジュールを導入した当初は、工場自体も変革期にあり、私の考え方に合わない人が、残念ながら数人退職しました。
しかし、それ以降はやめていく人がほとんどおらず、今いる9名のパート従業員のうち7名はフリースケジュール導入当初から在籍していたパートさんたちです。

商品品質の向上

 人の入れ替わりが激しいことが、商品品質を大きく低下させていたのです。人がやめなくなったことで、そうしたマイナス面がなくなり、さらには熟練したパートさんが作業にかかわる時間が長くなることで、商品の品質が大きく向上しました。

生産効率の上昇

 導入前とあとで、売上自体は横ばいですが、パートの従業員機の人数は13人から9人に減少しています。
これは、熟練したパート従業員が長く職場に定着したことで、1人1人の動きに無駄がなくなり、またパート従業員の精神的な負担が軽減されたことで、グループや派閥がなくなり、職場のチームワークがよくなった事が要因だと考えています。

人件費減少

 前述のとおり、導入前と比較してパート従業員の数は減少しています。
人件費は毎年少しずつ減っていき、約40%の人件費が削減されました。

従業員の意識変革

 そしてなにより実際に働くパート従業員の意識が大きく変わり、それがすべてのプラスの循環を生み出しています。
以前よりもパートさんたちの動きは機敏ですし、自分で臨機応変に物事を考えてくれるようになりました。また、社員が気づかない細かな点や、日々現場で作業を続けているからこそ見えてくることを指摘してくれたり、モチベーションを上げて働きやすい職場を作っていくため、前向きな意見を提案してくれるようになったのです。

感想

◆新しい働き方の一提案

とにかく本書で紹介されている内容については驚きました。

僕は自分自身が自由な生き方を模索していることから、これからの時代の新しい働き方や生き方をテーマにした本はかなり読んできたと自負しています。

ですが、本書で紹介されているパプアニューギニア海産の「フリースケジュール」や「嫌いな作業はやらなくてよい」といった取り組みはあまりに奇抜すぎて、予測を遥かに超えるものでした。

フリースケジュールは出退勤の時間が完全に自由というだけでなく、欠勤の連絡もしてはいけないという徹底ぶり。

また、この会社ではエビの殻むき、串で背ワタを抜く、パン粉を付けてエビフライを作る、計量、梱包、出荷準備など主要作業だけでも30項目以上ある仕事のうち、嫌いな作業はやらなくてよいという取り組み。

ふつうならば「それで会社が成り立つのか?」と誰もが疑問に思うところですが、現実には成り立つどころか生産効率が上がるなど大きな成果を生み出すなど非常にいい結果を出しているというではありませんか。

これまで数多くの「生き方」や「働き方」の本を読んできましたが、共通しているのはフリーランスのように独立するところをゴールとしている点でした。

自分の好きなことを極めて独立するというスタイル、これこそが自由な生き方の王道だと。

僕も自由に生きるためにはそれしかないなと考えていたのですが、本書は新しい提案をしてくれたと思います。

つまり、本書で紹介されている内容から考えたのは、会社の制度次第では会社勤めでもある程度の自由が効く”半自由”的な働き方や生き方もできるのではないかということに思い至ったのでした。

このパプアニューギニア海産の例は、働き方の多様化が進む今、新しい一つのモデルを提案してくれていると思います。

◆ファンタジーとなるかどうかは経営者の哲学次第

本書に登場するような社員を大切にする会社を紹介する本は、『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズなどが有名です。

しかしこういった本や紹介されている会社については「ファンタジーだ!」というひと言で片付けてしまう人が一定数いるようです。

確かに仕事というのは「仲良しこよし」で成り立つものではないですし、イヤな仕事でもなりふりかまわずがむしゃらに乗り越えていかなくてはいけないときもあるのは事実です。

ですが、どんな業種でも、どんなに厳しい環境におかれていようとも、経営者の最大の仕事の一つに社員が働きやすい職場づくりがあることは誰も否定できないでしょう。

本書の著者はこう語ります。

 会社の役割というのは、結局のところ一点につきると思うのです。それは、いかに職場環境を整えて従業員一人一人が生き生きと働ける会社にできるかということです。
人が生きていく中で社会があって、その中に会社という存在があります。だから会社は人が働くための器みたいなものだと考えています。経営者というのはその器に集まってきてくれた人たちが、気持ちよく、居心地がよい場所になるように、器を整えていくのです。

そのために、

効率を上げるには人を縛り管理することが不可避であるいう常識

をも疑ってかかり、試行錯誤を繰り返していったのがパプアニューギニアの現在の姿なのです。

社員を「縛り」、怠けるかもしれないと「疑い」、お互いを競争させる「争う」を導入することが経営だという固定観念に対する挑戦なのです。

社員を大切にする経営をファンタジーとして判断するのは簡単です。
しかし現実の会社として存在している以上、実現できるかどうかは経営者の哲学で決まると断言していいのではないでしょうか。

本書で最も印象的だったのが、著者でありパプアニューギニア海産の社長でもある武藤北斗さんの次の一節。

この働き方について説明しながらいつも思うのは、僕たちがやっているのは学校や家庭で大人が子どもに教えているようなことと、何も変わらないのではないかということです。
「人の悪口を言ってはいけないよ」
「自分が嫌なことは人にしてはいけないよ」
「焦らないで、ゆっくりでいいよ」
「好きなことをどんどんやりなさい」
「友達と順番にね」
そういったことを、僕たちは、経済活動の中心である会社でもやってみたいというだけなのです。
しかし、子どもに教える当たり前のことが、大人の社会では、「そんなうまい話があるはずがない」、「お前はなにかを隠しているだろう」とあり得ないことのように感じられてしまいます。

僕たちは、子どもたちには人間として大切にしなければならないことを語るのに、実際の大人社会では「そんなことはファンタジーだ」の一言で片付けていいのでしょうか?

子どもたちに語る理想の社会を、「あれは建前、現実は違うから」というのであれば、子どもに語る資格はないと思いませんか?

◆徹底した現場主義が真の改善につながる

さて、最後に。

武藤さんのパプアニューギニア海産での「働きやすい職場づくり」を支えたのは徹底した現場主義だったことに触れておきます。

著者はこう言います。

 現場の声というのは、会社にとって不都合な内容であったとしても大切なものです。そして、その声を本気で生かす努力をすることが経営者には必要です。ときには自由にし、時にはルールを作ることもあるでしょう。この現場でのルール作りは第三章でも話したとおり、従業員と一緒に行うことがとても重要です。
もしも社長なども口を出すなら、現場に必ず入るべきであり、逆に入らないなら現場の長にすべてを任すべきです。
そして必ず現場の作業を自分でもやることです。ノートを持って偉そうにチェックするだけ、見ているだけ、横から口を出すだけ、それは現場の邪魔になるだけです。

実際武藤さんは今でも毎日現場でパートさんと一定時間一緒に働いています。
現場で一緒に働くからこそ改善が必要な点が見えてきます。

作業中の私語を負担に感じる人がいたり、毎日休憩時間にみんなで昼食を取ることが苦痛な人がいる。
そういった人間関係の機微までは現場でいっしょに働かなくては絶対に見えてきません。

また、僕も何度も経験ありますが、現場を知らない管理者が良かれと思ってした改善がとんでもない不便さを現場に強いる結果となることが多々あるものです。

働きやすい職場づくりに本気で取り組むのなら、徹底した現場主義に立たなければならない。
管理者に必要な覚悟も、本書が提示してくれる大切なエッセンスであるといえます。

ブラック企業や非正規雇用の問題が取りざたされる昨今、本書は労働者が働きやすい環境づくりで新しい働き方のモデルを示してくれる、ある意味問題作といっていいでしょう。

ぜひ、多くの方に知ってもらいたい一冊です。

本書はイースト・プレス社様からご恵贈いただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに
第1章 人を縛らない職場は何を生んだか
第2章 僕らを突き動かしたもの
第3章 人を縛らない職場ができるまで
第4章 エビと世界の意外な関係
第5章 『生きる職場』の作り方
おわりに

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