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すべては顧客のために【書評】小川 亮(著)『ウサギくんと少年ルッコラのマーケティングの物語』 日本能率協会マネジメントセンター

おはようございます、子どものころは工作が大好きだった一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、日本では珍しい絵本形式のビジネス書をご紹介。
テーマはマーケティング。

マーケティングの基本を物語の中で自然と学んでいきます。

【目次】
第1章 こんなにすごいモノでも売れないよ コンセプトの話
第2章 ルッコラ、才能を無駄づかい 顧客満足の話
第3章 ウサギくんの知らない価値 商品の話
第4章 キーパーくん、いくらで売れるかなへ 価格の話
第5章 キレイなお姉さんに任せてみよう 流通の話
第6章 王様が教えてくれたこと 広告の話
第7章 対決!キーパーくんのそっくりさん! 競争戦略の話
第8章 ルッコラ、倉庫へいく 事業戦略の話
第9章 ウサギくん、おうちに帰る サービスの話
最終章 50年後一そして伝説へ一 イノベーションの話

【ポイント&レバレッジメモ】
★コンセプトの3つの大切なこと

1つは本当に「役に立つこと」です。当たり前のようですが、本当に役に立つと感じてもらうには、商品に求められる必要条件を1つ1つクリアしていかなければなりません。<中略>
2つめは本当に「困っている人がいる」ということです。いくら誰かの役に立とうと思っていても、実際に困っている人がいなければ買ってもらえません。誰でもたいていは何かに困っていて、解決したい問題があります。この「解決したい問題」を「ニーズ」とよびます。<中略>
3つめは「他にないこと」です。いくら多くの人が解決したい問題があっても、実は解決方法が既にあるのでは新商品を出す意味がありません。「新」商品という以上、「人々が解決したい問題を、唯一解決できる」商品であることが理想です。

★1人の顧客

 まずは、「あなたの顧客は誰か?」ということを決めてみましょう。<中略>
では、どのようにしたら「顧客を決めること」ができるのでしょうか?
私のお勧めは、できるだけ細かく「1人の人」をイメージしてみるという方法です。
この商品やサービスを心から喜んでくれる人を1人イメージして、どうしたらその人が喜んでくれるかを徹底的に考えてみる。こうして、新商品やサービスでつけるべき機能を具体的にイメージしていきます。

★商品の価値
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・基本価値
1つめの価値はその名のとおり、基本となる価値です。言い換えると「それがないと、商品として成り立たなくなってしまう最低限の価値」です。

・便宜価値
2つめの価値は、買う人がその商品を便利に、簡単に使えるという価値です。

・感覚価値
3つめの価値は、商品を楽しく使える、五感に訴える価値のことです。五感には味覚、視覚、触覚、聴覚、嘆覚がありますが、こういった感覚に訴え、商品をより楽しく使える価値のことを感覚価値といいます。

・観念価値
4つめの価値は観念価値といわれる価値です。その商品を持つことや使うことに何らかの意味や物語を感じさせる価値です。
この4つの価値は、「基本価値」と「便宜価値」を合わせて【機能的価値】、「感覚価値」と「観念価値」を合わせて【’情緒的価値】といわれます。
【機能的価値】とは、その商品を通じて得られる物理的価値のこと、【情緒的価値】とはその商品を通じて得られる心理的価値のこととも言い換えられます。

★高いか安いかは何が決めるのか

 価格を考えるときに、そもそも「その価格が高いか安いか」ということは誰がどのように決めるのでしょうか?顧客の章で解説したように、マーケティングの原点は顧客満足です。ですので、価格についても、やはり顧客から見て「安いか高いか」ということが最優先になります。そのときに大切なのは、「お買い得!」と思ってもらうことです。
お買い得感と価格と品質の関係を考えるのにわかりやすいのは
お買い得感=品質÷価格 という考え方です。

★お店は信頼を売る

 卸売りや問屋、小売業などの流通は、「この人。このお店が選んだ商品なのだから大丈夫!」という信頼を売っているといえるでしょう。お客さんはこの「信頼」にお金を払うことで、商品を買ううえで発生しうるリスクを減らしているのです。
ビジネスの世界では「信頼」という言葉がよく使われ、とても大切だと教えられますが、そもそも信頼とは何でしょうか?これは私の定義ですが、ビジネスにおける信頼とは、「自分の意志を理解して、何らかのリスクを受けてくれること」だと思います。

★3つの競争の勝ち方

・どこよりも安く作る
1つはどこよりも安く作ること、コスト競争力を持つことです。

・差別化する
2番目の方法として、「差別化」するという方法があります。他と違う商品の機能やサービスを提供して、顧客に満足してもらうという方法です。

・集中する
さて、3番目の競争に勝つ方法は「集中する」です。顧客を市場全体ではなく、ある特定の層に集中するというやり方です。

★サービスはなぜ重要か

 世の中に多くの商品があふれてくると、それと同時に、人々のニーズもいろいろ出てきます。こういった状況を「ニーズの多様化」といいます。ニーズの多様化に合わせた価値を提供し差別化するためには、モノだけではなくサービスを組み合わせることで商品開発の幅が広が.ります。逆に、モノだけで差別化しようとすることには限界があります。

★理念とブランド

 サービスを開発し運営していくうえで、最も大切なことは何かといえば、それは理念です。
理念というのは、その会社がなぜ世の中に存在するのか、顧客からどのように必要とされるのかを決めたものですが、この考え方はブランドの原点にもなります。ブランドの核とは「顧客に何を約束するか」ということですので、まさに理念というのはブランド作りの原点なのです。理念がしっかりしていれば、経営も従業員もサービスもぶれることがなくなります。ぶれることのない会社のサービスは、ブランドとして信頼され、ファンを作ります。ファンは長きにわたって、ヒット商品が出た
ときだけでなく、つらいときもその会社をずっと応援してくれるのです。
ファンはそのブランドを継続的に購入するだけでなく、人に勧めたり、課題を指摘してくれたり、ブランドの長期的な成功を応援してくれます。新規顧客を獲得するには、リピート顧客よりも何倍ものコストがかかるということをお伝えしました。強い理念はブランドを生む源泉となり、その結果、高い利益をもたらします。

【感想など】
◆絵本形式のマーケティング本

アメリカでは絵本や寓話、小説形式などなど、色々なタイプのビジネス書が多数出版されているそうですが、なぜか日本ではあまり見かけません。

『もしドラ』の大ヒットで日本でもビジネス書のバリエーションが広がるかと思ったのですが、なかなか後が続かないですね。

読者側も活字ばかりの硬そうなイメージのビジネス書の方が、「俺、勉強してる!」って感じがするんでしょうか?
要は中身だと思うのですが。

今日ご紹介するのは絵本形式でマーケティングが学べる本です。
一応マーケティングの各ステージごとに、絵本の物語部分と解説の順番で進んでいきますので、純粋に絵本と言うことではありませんが、やはり取っつきやすいしわかりやすい。

今後、こういうビジネス書が増えることを期待したいですね。

◆マーケティングの各ステージのポイントがわかります
物語は天才発明家の少年ルッコラとウサギ型ロボットのウサギくんがひょんなことから出会うところから始まります。

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このルッコラの作る製品がすごすぎるのはさておき、企画、開発、販売、流通とマーケティングの一連の流れが物語をおっていきながら学べます。

すごいのは時代を反映しているでしょうか、途中で類似品も登場。
安くて高性能のコペー商品に対して、どう差別化してくか、対応していくかも本書で取り上げられています。

多分これは技術力があっても値段で厳しい戦いを強いられている日本の恒久的な悩みなんでしょうね。

国家権力で人件費を安く抑え込むことができ、コピー商品を作ることに何ら抵抗感がない国があるかぎり。

興味深かったのは、企画・開発の段階とイノベーションの段階では視点が違うところでした。

企画の段階では「一人の顧客」を想定して、つまりニッチでも必ず必要とする人がいることを想定して製品開発をしていきます。

それに対して、イノベーションの段階では「みんなが使える」ことを想定して改良を加えていきます。

まさに一点突破全面展開。
その全面展開には製品単品だけでなく、その製品を使う上でのシステム全般のサービスまで意味に含まれます。

なるほど、そうやって製品価値を高めていくんですね。

◆目指すは顧客満足
さて、本書を読んでいて一貫して感じたこと、それは”すべては顧客のため”という理念でした。

物語の途中で、ウサギくんがお金に狂うシーンがあります。
なんだか、最近の食材偽装問題とか起業の不祥事を思い出してしみました。

本書後半にはブランドや企業理念に関する記述もあるのですが、製品やサービスの企画・開発から流通、そして改良にいたるまで、起業とは常に顧客との信頼で結ばれ、すべては顧客のため、顧客の利益のためにあるのだと痛感させられました。

もし、お客を騙して利益を上げても、それは一時的なことで絶対に長続きしません。

その本当に基本的なところが、絵本形式でもしっかり伝わってきました。

はっきり言ってエビの種類なんか食べてもわかりませんが、そんな些細なことで信頼をなくしてしまうのはもったいないですよね。

信頼を築くのには長い年月がかかりますが、崩れるのは一瞬です。

有名ホテルや起業の経営者が、テレビで陳謝するシーンを見かけますが、本書を読んで認識を新たにしてみてはと辛口のアドバイスをしておきます。

それでは、最後にウサギくんの師匠の言葉を。

「マネーの導きがあらんことを」

本書は日本能率協会マネジメントセンター、根本様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】

本書中で紹介・引用されている本

企業に働く者の使命、責任、役割、仕事の方法を説く経営学最高の古典。

本書は、一九八五年、著者七五歳のときの著作である。イノベーションと企業家精神が誰でも学び実行することができるものであることを明らかにした世界最初の方法論である。

技術革新と捉えている限り、イノベーションを興すことは不可能だ。1筋のいい技術を育てる→2市場への出口を作る→3社会を動かすという、イノベーションが起きる3つのステップを解明し、日本企業への提言を行う。

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