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ズラせば見つかる次の一歩【書評】殿村 美樹(著)『売れないものを売る ズラしの手法』 青春出版社

おはようございます、本気で「うどん県」に改名してもいいと思っている一龍(@ichiryuu)です。(ただ、車のナンバープレートが”うどん”はちょっと嫌ですが・・・)

さて今日は、数々のブームを巻き起こしてきた殿村美樹さんの本をご紹介。
「ひこにゃん」「うどん県」「今年の漢字」などなど、数多くのヒットを生み出した、著者の”ズラし”テクとは。

ものが売れない時代、これは気になりますよね。

売れないものを売るズラしの手法
【目次】
プロローグ どんな商品も、ズラせば売れるんです!
第1章 うどん県、佐世保バーガー。今年の漢字・・・
「ズラし」の手法で、あのブームは起きました
第2章 ひこにゃん、婚活セミナー、100キロカロリー茶碗・・・
「人」をズラせば、思いがけないニーズが生まれます
第3章 丸ごとゼリー、”駅前”道の駅、喫茶店語学教室・・・
「場所」をズラせば、新しいお客様に出会えます
第4章 老舗お茶屋の茶飴、明石のタコ占い、夕方ジョギング・・・
「時」をズラせば、商品が生まれ変わります
第5章 あなたの商品は、まだまだ売れる!
ズラせば時代の必需品になれる!世界も変えられる!
エピローグ 私自身もどん底人生から、ズラして逆転したんです

【ポイント&レバレッジメモ】
★”人”をズラしてブレイクした「うどん県」

 広告そのものを話題にする。これって実はとても難しいのです。<中略>
2011年秋に香川県が発表した『うどん県。それだけじゃない香川県」プロジェクトのプロモーションビデオがそうでした。<中略>なんと、「プロモーションビデオを制作したから、試食会のときに一緒に話題にして」というもの。まさに「広告そのものを話題にしろ」というあり得ない依頼でした。
そのうえ、「香川県をうどん県に改名する」という、マスメディアが決して報道できない「真実ではない出来事」が展開されているのです。<中略>
そこで私は”人”をずらすことにしました。
問題のビデオを紹介されたとき、「いまはマスメディアよりインターネットの時代でしょ。だから動画で十分」といわれました。それを思い出して、取材依頼のターゲットも、マスメディアから、インターネットの世界で圧倒的なパワーを持つカリスマブロガーにズラしたのです。

「うどん県。それだけじゃない香川県『お迎え編』」

★母性本能にアプローチ!彦根城に女性を集めた「ひこにゃん」

 私は、滋賀県から与えられた「彦根城に観光客を集める」というミッションを果たすために、ターゲットを「城好き」から「観光をリードする女性」にズラすことにしました。そして、心に決めました。「観光ロリードする女性を集めるために、このキャラクターを前面に立てよう」と。<中略>
掲げたタイトルは「ひこにゃんと楽しむ『2007年彦根の旅』」。トップビジュアルにも「ひこにゃん」を起用し、たくさん用意された「彦根城400年祭」のイベント群も、歴史好きが泣いて喜ぶ「桜田門外の変」の遺品「血染めの座布団」もすべて無視して、添え物扱いだったキャラクター「ひこにゃん」を前面に出したPR戦略です。<中略>
狙いは的中しました。女性記者たちの手で「ひこにゃん」はたちまち全国へ紹介されていきました。「きゃー、かわいい!」と歓声を上げながら、彦根城の歴史やイベントにはほとんど目もくれず、ツアーの案内をした「ひこにゃん」の写真を撮り、「彦根城の顔」として報道してくれたのです。

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★地元で売れずに都会で売れた!値段が高すぎるトマトゼリー

 岡山にある「角南製造所」という缶詰製造会社です。<中略>誰も想像さえできなかった、”トマトが丸ごと入った巨大ゼリー”をつくってしまったのでした。
ターゲットは最初から「女性」と決めていました。理由は単に「女性はゼリーが好きだから」。しかも新鮮なトマトが丸ごと入ったゼリーですから、特に地元岡山の女性に喜んでもらえるとと思ったそうです。
ところが、こだわりが過ぎたためコストが嵩み、どう見積もっても500円で売らなければ採算が合わなくなってしまいました。<中略>地元の主婦が日々の買い物をするスーパーや百貨店で売り出しましたが、500円のゼリーにお金を払う主婦はほとんどいなかったのです。<中略>
首都・東京。地方ではほとんど見かけない「高級スーパー」があります。<中略>
ランチタイムに、丸の内に居並ぶ一流企業のOLたちがやって来ました。早速試食を勧めると「トマトが丸ごと入っているの?健康に良さそうだし、500円ならとっても安い!ランチにするわ」と買っていったのです。

〔角南製造所〕完熟トマトゼリー 〔角南製造所〕完熟トマトゼリー
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角南製造所

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★売れなくなった発芽玄米は、受験生の親にヒット

 発芽玄米のメーンターゲットは健康志向の女性です。相談にきた男性はスーパーを担当するセールスマンですから、ターゲットから主婦をはずすことはできません。そうであれば、主婦な何のためにもっともお金を使うかを考えればいいのです。
答えはすぐ出ました。子どものためです。特に将来をかけて受験に挑む子どものためにはお金を惜しみません。ですから、同じ主婦でも「受験生を持つ主婦」へターゲットをずらすことにしました。<中略>
しばらくして新しい年が明け、受験シーズンがやってきました。嬉しい報告はすぐに届きました。
「店頭に『受験生にいい』とアピールしたPOPを掲げた途端、売れ行きがよくなりました・・・」

【感想など】
著者の殿村さんはPRプロデューサー。
「人」「場所」「時」をズラすことでブームを起こしヒットさせる方。

本書ではその手法を実例とともに紹介。

ただ、それぞれの商品について、どんなズラしの手法を使ったのかストーリーを紹介するため、引用が長くなってしまったので、今回は4例だけピックアップさせていただきました。

このほかにも、「佐世保バーガー」「今年の漢字」「奈良のレストラン」等々、”ズラし”のテクニックでヒットした例を多数紹介してくれていますので、ぜひ本書でご確認を。

さて、ワタクシにとって本書の内容で一番身近で興味深かったのは何と言っても「うどん県」です。

2011年秋に公開されたあのプロモーションビデオは香川県民も衝撃的でした。
まさか、県がここまでやるとは、と驚いたのを覚えています。

実は、さぬきうどんブーム自体はかなり以前から続いていたもので、1990年代の後半には県外からうどんツアーにきた観光客を頻繁に見かけるようになっていました。

その後、2006年に映画「UDON」が公開されたり、高速道路が週末は1000円になったりで、うどん屋に大行列ができるといった状態が生まれるのですが、県民にとってはそのブームもちょっとおさまってきた頃にあの「うどん県」が登場したわけです。

ワタクシが「うどん県」のニュースを知ったのは、TwitterとYahooニュースだったともいます。
すぐに動画を観て、「これ面白い!」とおもったのですが、その後アクセス殺到で観れない状態が続くほどの反響ぶり。

「県もようやく思い切ったPRをするようになったか」と思ったのと同時に、「ネットでの宣伝の仕方が上手い!」と感心しましたが、その裏には殿村さんのこんな仕掛けがあったんですね。

「うどん県」の場合は、PRをお願いする対象を、テレビなどの既存のマスコミからネット上のインフルエンサーに”ズラし”て成功した例です。

たぶん、既存のメディアに頼っていたらこれほど話題にはならなかったでしょうね。

いやぁ、殿村さんのズラしテク、すごいです。

こういう実例を見せつけられると、気になるのは「どういう観点でズラすのか」、その着目点とテクニックですよね。
本書では大まかに分けて「人」「場所」「時」の3つについてズラす方法が紹介されていますが、共通するのは”常識を捨てる”ということでしょうか。

ここが一番難しいわけですが、ここを”ズラす”ことができればインパクトはあります。
なぜなら誰よりもお客様が一番常識や固定観念に縛られているわけで、そこへポンッと”予想外”なものを見せられれば、ともかくインパクトは十分です。

最初にそれまでない驚きや発見や感動、面白いと言ったインパクトを与えることができたら、今はネットで口コミが広がる時代ですからブームとなる可能性は充分あります。

意外とその壁は薄いかもしれません。

ただ、薄くても壁は高い場合もあります。

本書を読んでいて実はこれが一番のネックなんじゃないかと思ったのは、イベントや企画の決定権者です。

この責任者のGOサインが出るかどうか。
たとえば、ひこにゃんの例で言うなら、城よりひこにゃんを前面に出す企画、ワタクシならボツにするだろうなぁ。
だって、城好きだから(笑)。

実は先日、ある県のプロモーションビデオを観る機会がありました。
それがね、映像もキレイだし、悪くないんですよ。
ただ、県の名産をテンポよく次々と映していくだけで、全然ひねりもインパクトもない。

「ああ、これがお役所仕事だなぁ」って感じました。
県の特産品や観光地を網羅して、漏れなく平等に映像にしたという意図が丸わかりなんです。

当然観た後に何の印象も残らない。
それに比べたら「うどん県」は格段にレベルが高い!

きっと香川県庁には、とんがった方がいるのでしょう。

もしあなたがなんらかのイベントや企画、商品PRの最高責任者、決定権者なら、自分の判断の”ズレ具合”を再検証してみるのもいいかもしれませんね。

「常識や固定観念の範囲内だなぁ」と感じるのであれば、ズレが足りませんよ。
本書を読んで、一大ブームを巻き起こしてみませんか!

本書はアップルシード・エージェンシーの宮原様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】

同著者の最新刊です。

「ひこにゃん」「うどん県」「今年の漢字」ブームの火付け役が教える、お客の心をつかんで動かす方法。
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2 COMMENTS

殿村美樹

一龍さま
はじめまして。
「売れないものを売るズラしの手法」著者の殿村です。
宮原さんから聞いて、ブログ拝見しました。
本当にありがとうございます!ものすごく嬉しいです。
そして、「うどん県」にお住まいと聞いて、さらに感激しました。
「うどん県。それだけじゃない香川県プロジェクト」これからも
頑張ってまいります。
本当にありがとうございました!
殿村美樹

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讃州屋 一龍

殿村様
コメントありがとうございます。
「うどん県」のPVを観たときは「県もとうとう思い切ったことをやったな」と感心しましたが、その裏には殿村さんのズラし作戦があったとは知りませんでした。
読んでいて楽しかったです。
奥野さんからもお噂はかねがねお聞きしております。
今後とも、香川県共々よろしくお願いいたします。
一龍

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