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ビジネスは仮説力でパワーアップする【書評】竹内薫(著)『知的生産のための科学的仮説思考』日本能率協会マネジメントセンター

おはようございます、空想、夢想が大好きな一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、仮説思考の本をご紹介。

著者はサイエンス作家の竹内薫氏。
サイエンスの世界では、仮説→実験→検証があたりまえのように行われるわけですが、これはビジネスの世界でも日々行われていること。

サイエンス作家の科学者的立場から語る、ビジネスの世界で生産性が上がる仮説思考。
なかなか興味深いです。

 

【目次】
はじめに
プロローグ 世界中の科学者達が降参した難問
第1章 仮説思考とは何か? 〜世の中は仮設で成り立っている!?〜
第2章 思い込みを捨てて仮設を考えるコツ
第3章 生産性がアップする仮説思考5つのステップ
第4章 仮設を伝えるためのコミュニケーション法
第5章 仮説思考をさらに進化させよう!
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】

★仮説思考=想像力のトレーニング

 まず、自分がいつごろから「夢想ごっこ=頭の中の想像や設定」をやめてしまったのかを思い出してみてください。言い換えれば、「最近で意味のない夢想にふけたのはいつか」、それだけをまずは考えてみてください。
 これが、仮説思考をアップさせる最初のトレーニングです。

★思い込みを捨てて仮説を立てるトレーニング

1. サブ・ターゲット仮説
 多くの企業やビジネスパーソンは、市場のメインとなるターゲットばかりを視野に入れて、ついつい新商品の開発や何かの企画をすることが多いと思います。
 しかし、思い込みを捨てて仮説思考を磨くためには、メイン・ターゲットから外れた「サブ・ターゲット」を見据えて仮説を立てていく癖をつけることです。

2. 素朴な疑問会議
 会議の場面において、どんな素朴な質問をしてもかまわないという「ルール」をあえて設けるのです。
 このルールがあれば、会議に参加している人に心理的に平等な発言権が与えられ、「仮説の共有」が生まれます。そして、不思議なことにこのようなルールを決めて会議を進行すると、実際にはそれほど馬鹿げた質問やあいまいな仮設は出てこなくなります。その代わりに誰もが疑問に思っていることや、これまで誰も思いつかなかったすごい仮説が次々と出てくるのです。

3 . SF設定会議
 このSFというのは、もちろん「サイエンス・フィクション」です。つまり、一度現実から離れた仮想の世界で自分たちのビジネスについてのありとあらゆる仮説を立ててみるのです。

★仮説検証を効率化する仮設のPDCAサイクル

 仮説を検証するための思考法で重要なのは、次の3つの視点で仮設を追っていくことです。
・お客様の視点
・現場の視点
・競争相手の視点

 これらの視点を持って仮説を立て、「何が目的か」ということを考えながら、そこに最短で到達するにはどのような有力な仮設を残すべきかを検証していくことが大事なポイントです。
 仮説を検証することでムダを省き、
 そして、仮説の検証力を身につけるには、「仮設構築→仮説検証→仮設修正→仮説再検証…」というトレーニングを繰り返し重ねていく必要があります。そのトレーニングとして有効なのが「仮設のPDCAサイクル」をまわしていくということです。

★仮説整理が難しいグレーゾーン仮説の整理法

・仮説の確率論
 これは「ゼロかイチか」という思考ではなく、確率として何パーセントかという考えのもとで確率の高い仮説から順番に予測不可能な仮説に「幅」を持たせるということなのです。
 また、このようなグレーゾーンの仮説というのは、過去に同じような事象が生じたときに、それが全体の何パーセントをしてめているのかを整理していくだけなので、それほど難しい作業ではありません。

・仮説のアウトプット
 頭の中だけで考えていてもダメです。なぜならば、頭の中で考えている思考というのは自然とマイナスの方向に向かいやすいからです。つまり、グレーゾーン仮説を整理するには、一度頭の中から外へ出してあげることが有効な方法なのです。<中略>
 グレーゾーン仮説を整理して言うクエでもポジティブな仮説をどんどん書き出してみる癖をつけることが一番の処方箋だと言えます。

★仮説のクロージングに必要な相手に選択させる方法

 例えばコピーライターがキャッチコピーを採用してもらうときのプレゼンテーションのやり方として「松竹梅」といった3つのアンを用意しておくそうです。
 ひとつは自分のいち押しのもの、ひとつはまったくダメなもの。そして最後がそれなりに無難なものというような感じです。
 このような「松竹梅」方式でキャッチコピーを提出することで、相手はどれかを選択することになります。人間というのは、何かの選択をすることによって仕事をした気分になるものです。つまり相手に選択をさせてあげるということが重要なのです。<中略>
 自分の立てた仮説を相手に選択させるときには、「これが自分のいち押しです」ということをあまり前面に出しすぎないことが重要です。

★仮説を立てるには論理力、説明には感情力

 まず、相手を説得する場面において言いたいのは、
 論理というものが役に立たない!
 ということです。なぜならば、人間というのは、説得したり説得されたりするときには論理ではなく、感情で動く生き物だからです。
 相手も頭の中では理解できるものの、論理で攻めてこられたり、仮説を押しつけられれば感情的に反発してしまいます。
 確かに、仮説を立てていくときには論理で立てていくのですが、相手に説明したり、プレゼンするときには論理を出さないことが秘訣です。重要なのは、自分の仮説をいかに相手が共感してくれるかということなのです。

★パターンからの脱却こそが仮説力を進化させる!

 仮説を進化させるということは、パターンの変形から始まります。
 もちろん、最初はまったく違ったことはできないと思いますので、あるパターンがあったとしたら、そのちょっとしたバリエーションから始めてみてはいかがでしょうか。それが仮説力を進化させるコツと言えます。<中略>
 そのような意味においては、パターンからの脱却というのは「自分のクセ」を表に出していくということです。
 もし、仕事をする上で自分が特に唐突した特技やクセがなく、何でもそれなりに器用にこなせるということであっても、「自分はオールラウンダーである」という
ことを強みにして仕事に取り組んでみてください。

【感想など】

ワタクシにとって著者である竹内薫氏といえばこの本のイメージ。

大人気サイエンス作家さんですが、お名前を聞くと「ああ、仮説の人」と浮かんでしまいます。

その”仮説”の作家さんが書いたビジネス書が本書。

冒頭でも記したように、科学の世界では、 仮説→実験→検証 というごくあたりまえに行われている”道筋”があります。

科学の場合はここから真理を導き出すわけですが、ビジネスの世界ではアイデア・企画→商品化→検証となるわけで、実は科学の分野と同じ”道筋”を日々、頭をひねりつつ、営んでいるわけです。

しかし多くの場合、マーケットリサーチなどの消費者ニーズの分析や、過去の売り上げのデータなどに頼りつつ、アイデアを出し、企画会議を進めるのですが、けっこうやみくもにやっている感がありませんか?

あるいは、論拠も何もなく課長や部長の「これで行け!」の鶴の一声で、内心「おかしいぞ」「それはあかんやろ」と思いつつも突き進んでいってしまい、後で右往左往するといったこともありますよね。

「生産性アップ」ということを念頭に置いて考えたとき、仮説思考をせずに仕事を進めるだけでは、それはただ単に「試行錯誤の世界」でしかありません。

という著者の言葉通り、そういった仮説段階での”非科学的””非論理的”な取捨選択というものは、結局のところ時間や資源といった部分で大損となる確率が高くなってしまう。

そこで科学的仮説思考の登場です。

本書で秀逸だと思えた点は、まず仮説PDCAサイクルという考え方。
これは目からウロコでした。

このサイクルを何度も何度もまわして、仮説をブラッシュアップさせていく。
たしかにこの回転数が多ければ多いほど、精度が上がっていきますよね。

次にグレーゾーンの選別のし方。
アイデアがたくさん出ることはいいのですが、それを取捨選択するのが一番難しいですよね。
とくに、あやふやなグレーゾーンの仮説をどう処理していくか?

これを上手く処理しないと、下手に「じゃあ中を取ってこのあたりで」なんてことになると、ぜんぜん尖っていない、面白みのないアイデアになる可能性がある。

白黒ハッキリつけなければ、アイデアは生きてきません。

そして、ワタクシ非常に面白いなぁと思ったのが最後の段階。
その仮説を採用するかどうかのクロージングの段階。

ここまで徹底して論理的に仮説の検証を繰り返してきて、「もうこれしかない」というぐらいに絞り込んでも、

仮説の最終ステップである選択や決断という場面で重要になってくるのは、論理的思考よりも心理的思考だと言えます。

最後の最後は決定権を持つものがYESというかどうか。
ここにいたっては論理ではなく、感情に訴えるのですね。

その方法まで解説しているのは非常に面白いなと。
特に「松竹梅理論」は、ある意味べたなテクニックですが、参考になります。 

ということで、仮説の立て方から、ブラッシュアップ方法、さらには決裁権者の説得方法にいたるまで解説してくれている本書。

特に企画に携わる人は必読ですよ!

本書は日本能率協会マネジメントセンターの根本様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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