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人に合わせて雇用を創る【書評】渡邉幸義 (著)『雇用創造革命』(ダイヤモンド社)

こんにちは、障がい者施設で作ったパンの販売がくると、パンより米が好きなことを忘れてしまう一龍(@ichiryuu)です。

今日はアイエスエフネット代表取締役、渡邉幸義氏の新刊のご紹介。
実はワタクシ、本書の中に日本企業復活の答えがあると思っています。

 

【目次】
プロローグ
第1章 全ては、障がい者雇用から始まった
第2章 障害者雇用への共感から生まれた可能性
第3章 引きこもりと就労弱者の再出発
第4章 雇用を通して人も社会も変えていく
第5章 「歩」が「金将」に変わる組織
第6章 「選択と集中」から、「多様化と創出」へ
エピローグ

【ポイント&レバレッジメモ】

消費者や市場、社会の変化に伴い、社会貢献とビジネスを切り離して考えていた時代は過ぎようとしている。社会貢献とビジネスは相乗効果を生むものだと、誰もが認める時代になってきた。さらに、これからは社会貢献が企業や社員の成長に寄与する時代になるだろう。

企業の社会的価値が上がればそのブランドの付加価値となり、価格競争に対抗する市場の選択要因になる。これからの日本は、企業が社会問題の解決に積極的にかかわることが求められる。特に雇用問題は企業に石か解決できない。

社員の雇用を守り、職を失った人や就労できない人に雇用の機会を与え、誰もがいつでもチャレンジできる雇用環境を創出していくことが、社会の公器といわれる企業の責務だろう。

無知識・未経験者を採用すると決めれば応募者の前歴など関係ない。履歴書など見る必要がなくなった。変えられない過去より、未来に対する約束ができる人を面接で見極め採用した。それが、履歴書を見ない採用の始まりだった。

「あなたたちはすべてを効率化し自分の時間が増えることは楽しいこと、しあわせなことだと思っているかもしれない。でも、本当にそうだろうか。人間は自分の時間を自分のためだけに使っていると、どんどん弱くなっていく。自分の時間をほかの人のために使ってみてください。きっと、そのほうがずっと楽しくしあわせだと感じることでしょう」

無知識・未経験でも成長したいという意欲がある人を採用し続けていると、エンジニア自身が得意先で新たな仕事を受注するようになり、広告塔になり新しい得意先を開拓してくれるようになっていった。そして、新たな無知式・未経験者を採用することができた。

女性社員の活用は、事業そのものにとって有意義であるばかりでない。社内のさまざまなところで潤滑油のような役割を果たしてくれる。
わが社には数年前に入社した65歳の女性社員がいる。彼女の発案で、当社受付に「老眼鏡」をおくようになった。クリスマスには手作りのオーナメントを、ハーモニーのFDメンバー(障がい者)に贈ってくれた。人生経験が豊かで人の気持ちを包み込む彼女の存在は、職場を潤してくれる。元気のない社員を見かけると何気なく声をかける。彼女には思わず心を許し、悩みを打ち明けてしまう。
こうしたシニアの女性が持つ力は、競争社会の中でうつ病などメンタル不全になってしまう社員が多い職場にとっては大きな存在になるに違いない。人にはそれぞれ個性や強みがある。それを発揮し活かす場があれば、誰もが役割を見出すことができる。

会社が成長し知名度が上がれば、優秀な就職志望者が多く来るようになる。そうすると、一般の企業ははじめから「金将」を採用するようになるだろう。でも、わがグループは相変わらず「歩」を採用し続けている。「歩」を駆使しながら勝ち続けている。「歩」を如何に活かして使うかは、打つ側の考え一つで決まる。

時代は広報(PR:Public Relations)から社会への約束と信頼(PE:Public Engagement)へ変わっている。広く大衆に向けて発信するだけでは社会からも消費者からも指示されない。
企業が果たすべき社会での役割を消費者はきちんと見極めている。商品やサービスに託した企業の姿勢、社会に対する責任や貢献が試されている。正しいことを行っている企業の商品やサービスが支持され、選択される時代になった。

「自己責任」ということばをよく耳にするようになってしばらく経つが、本来日本人が持っている相互扶助のメンタリティをつぶしかねないのではないかと危惧している。
変化の激しい雇用市場で、強調されているのは自己責任によるキャリア育成と適応力。世界的なコンサルティング・ファームが主張する「競争優位の源になるのは優秀な人材」になるために、あえて皮肉を込めて言えば、一人ひとりが「利他の心」の正反対にある「自分にとっての最善を追求する心」を育まなければならないということになってしまう。

【感想など】

本書は、以前当ブログで紹介したこの本

参考記事

 

www.s-ichiryuu.com

 

の著者でアイエスエフネット代表取締役、渡邉幸義氏の新刊です。

アイエスエフネットはITネットワークサービス会社で、その傘下には子会社であるアイエスエフネットハーモニーが経営する「匠カフェ」もある。

この会社は非常に興味深い会社です。

例えば、「十大雇用」のスローガンを掲げており、その十大とは、

ニート・フリーター,障がい者、育児や介護従事者、引きこもり,シニア、ボーダーライン(軽度な障がいで障がい者手帳を不所持の方)、DV被害者、難民、ホームレス、その他就労困難者の雇用

のことで、しかもこれに取り組みつつ利益を上げ続けているのですからすごい。

その発足の経緯や取り組みについては

にも掲載されているし、もちろん本書に詳しく書かれているのでお読みいただきたい。

実は今回、この本をご紹介するにあたり、障害者雇用云々とはちょっと違った視点でこの本を紹介したかったのです。

それは、これからの企業のあり方。
経営者の経営姿勢についてです。

その答えがこの本にあると思ったのです。
だから、【ポイント&レバレッジメモ】では、そのヒントとなるような部分をピックアップしてみました。

昨年後半に出版され、大反響をよんだ本がありました。
その著者は超エリート大学の先生で、若者にこれから生きていくための武器を配っているつもりなのですが、ワタクシははっきり言ってピンと来ませんでした。

というより強い違和感を感じてしまいました。

いや、書いてあることが間違いとは思いませんよ、むしろ正論すぎるぐらい。

ただ、「ゲリラ戦」「投資家マインド」「ハイリスク・ハイリターン」といった若者受けしそうな単語をならべて語っているのですが、それらってもう古い武器なんじゃないですか?、と。

また、「非常で残酷な日本社会を生き抜くため」とありますが、日本人と日本社会を見くびってもらっては困ります。
日本は「非常で残酷」な社会じゃなく、血も涙もある社会ですよ。

もし、「非常で残酷」とおっしゃるなら、それは武器とその使い方を間違っているような気がします。

それに、百歩ゆずって、仮にそれが現実だったとしたら、教育者として将来日本を背負って立つべき優秀な学生には、「非常で残酷」な社会を変えるために戦え!それもゲリラ戦ではなく正々堂々と戦う正規軍となれ!、そして自分たちが世界のスタンダードになれ!と教えるべきではないか、とも思ったのです。

では、これからの武器とは何か。
その答えが本書にあります。

自分たちの技術やサービスで社会貢献を果たすとともに、社員を大切にし、障害者雇用を促進しする。
そのことで強固なブランドを築き上げ、ファンを作り出す。

これこそが、新しい時代を生き抜く武器だと思うのです。

さらに言えば、若い人たちには、人と社会に優しい会社をグローバルスタンダードにしていくことで、「非常で残酷」な社会を変えていってもらいたいのです。

人を幸せにするのが企業の使命。
それを肝に銘じたうえで、起業するなり、投資マインドを持ってほしいですよね。

さて最後に、もうひとつ。
以前、当ブログで紹介した読書術本の中に、『日本でいちばん大切に~』といった本はファンタジーだという一節がありました。

著者はワタクシが尊敬し、目標にもしている書評家さんですが、この一節にだけは納得できませんでした。

なるほどこれらの会社は現段階ではごく少数派のマイノリティであるのは事実です。

しかし少数でも厳然と実在し、収益を上げ続けている。
けっしてファンタジーではありません。

それに、このモデルをごく少数の奇跡的にうまくいった例にしてはいけないと思います。

ファンタジーでもフィクションでもなく、こういった会社がごくありふれたスタンダードな会社になった世の中。
そこに日本企業復活の鍵があるのではと本書を読んで思いました。

渡邉社長の取り組みを一龍は応援します。

本書は(株)アイエスエフネット社の沖様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
<同著者の既刊書>

 

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【管理人の独り言】

「匠カフェ」行きたいなぁ。

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