本を耳で読む Amazon Audible 30日間無料体験キャンペーン実施中

これは思考停止した日本人への挑戦状である【書評】前刀禎明 (著)『僕は、だれの真似もしない』アスコム

おはようございます、「♪いつまでも変わらないあなたでいて~」などという歌詞には、「人間は変わり続けるのが自然な生き方です!」とマジメに答えてしまう一龍(@ichiryuu)です。

今日は、前アップル日本法人代表で、iPodの仕掛人と呼ばれる前刀禎明さんのはじめての著書のご紹介。

なんと驚いたことに、この本自体がイノベーティブな本なのでした。

【目次】
序章
第1章 本当の「価値」とは何か?  自分にしかできない方法で、人を感動させる方法
第2章 僕がスティーブから学んだこと   アップルとスティーブ・ジョブズのイノベーション
第3章 なぜ、人は変われないのか?  セルフ・イノベーションを阻む8つの悪とは
第4章 人々の想像を超えてゆけ!  セルフ・イノベーションを起こす11の決意
第5章 感性を磨く7つのトレーニング  他人が気づいていない価値を見つける方法
第6章 セルフ・イノベーションを加速する方法  世の中にインパクトを与える人になる12のアクション
終わりに

【ポイント&レバレッジメモ】

★人を感動させる二つの条件

「価値」とは、人を喜ばせること。つまり、感動させられるかどうかです。
女性にもてる男性たちは、つねに女性を喜ばせ、驚かせて、感動させるように努力する。ビジネスでもこれは同じです。なぜ、アップルには価値があるのか。ディズニーがみんなから愛されるのはなぜか。人々の期待や想像をつねに超えるよう努力し、感動を生み出しているからです。

【感動の条件1】 自分で想像する余地が残されている
あるストーリーを、1から10まですべて理詰めで説明されても、納得はしても感動はしません。映画でも小説でも、むしろ足りない部分を残し、そこを個々人が想像して補うことによって、ストーリーがより自分のものになって感動できるのです。そう、自発性の余地が残されているからです。

【感動の条件2】 理屈が吹き飛ばされる
自発性ともう一つ、感動を呼ぶ大事な要素があります。
人々が感動するのは、頭のなかにある「理屈」がすべて吹き飛ばされたときです。<中略>
理屈を吹き飛ばすスイッチは、五感に隠されています。五感を通じてインプットされる情報は、理屈を超えます。きれいな景色、美しい音、おいしそうなにおいを感じたとき、なぜきれいに見えるのか、音の周波数はどのくらいか、料理のレシピは何かをいきなりロジカルに考え出す人はいません。
理屈が吹き飛んで初めて、エモーショナル(感情的)な部分にアクセスできます。感情が刺激され、想像力が動き始める。
人を感動させるためには、理屈から入ってはいけない。人々の五感に訴えかけ、感情を刺激する。

★本気で変わる意思がなければ、いくら勉強しても何も変わらない

 ただ勉強しただけでは、決してセルフ・イノベーションはできません。インプットとアウトプットが大切だとよく言われますが、人から情報を仕入れて、それにちょっと自分の意見を足してブログに書いたところで、あなた自身には何の変化も起きません。
五感で感じ、想像し、行動して初めてイノベーションになるのであって、人の話をいくら聞いても、決して自分自身は変わらない。そこに変わろうという意思がないからです。

★コネクティング・ザ・ドッツ

 創造性とは「Connecting the dots. 」(コネクティング・ザ・ドッツ…そのときには確信ないけれど、たどってきた点。いま思えば、つながっている道)だと語った一節に、強い共感を持ちます。
人生には、きっといつまでも明確な答えやゴールはない。でも、やりたいこと、何か楽しそうだと思うこと、おもしろい展開になりそうな方向に行きたいと思うこと、自分の五感と想像力を頼りに生きていけば、一見ランダムに見えても、やがて点と点が思わぬ形でつながります。「Connecting the dots. 」です。
大切なことは「ドット」である点の数が多ければ多いほど、長く、強い線になること。興味を持ったことや経験が多ければ多いほど、それらがいずれつながったときの迫力も増します。

★イノベーションのために捨て去る8つのこと(抜粋)

1「会社に行けば給料がもらえる」という前提
本当に、会社に毎日遅刻せずに通っていれば、毎月毎月給料が振り込まれるのか? 来月、再来月は大丈夫としても、3年後、5年後は? 10年たったら本当にもらえるのか?
まずは、そこを疑ってほしい。先ほど述べたNECの売り上げがピーク時の6割のレベルに減るまで、たった6年。これを知ったら、どのくらいの人が自信を持って「会社に行けば給料がもらえる」と答えられるでしょうか。

5「多様なニーズに応える」という甘え
考え直さなければいけないのは、「多様なニーズに応える」ことは価値でも何でもないことです。

★セルフ・イノベーションを起こすための11の決意(抜粋)

決意3 「惰性」を見つけ、壊す!
惰性は、自分の生活のなかにおける「常識」とイコールです。あるべきはずの建物、あるべきはずの木は、あなたにとっての「常識」。それが意識下にあるうちはいいのですが、当たり前だと思って意識すらしなくなると、見事に変化や新しい情報が遮断されてしまいます。こうなると惰性で生きているのと同じです。

決意11 偉人たちを超えてゆけ!
過去の偉人のすごい話を読んで、ただすごいと思うだけなら、「負け」です。すごいけれど、それならもっとすごいことをしてやろう。この人に負けたくない。この人を超えてみせる。そういう気持ちになれる人だけがセルフ・イノベーションをし続け、本当に新しい価値を見いだせると思うのです。

★セルフ・イノベーションを加速する12のアクション(抜粋)

アクション1 「正解かどうか」ではなく、好き嫌いで決める!
経営者やリーダーは、つねに判断を求められます。そんなとき、どれが正解かで決めるべきではない。二者択一で悩んでいるのなら、正解か不正解かではなく、好きか、嫌いかで決めるべきです。スティーブは「正解」を探していたか? とんでもありません。彼は自分なりの未来をイメージし、価値を見つけ、モノづくりにまい進した。彼は究極の美意識の持ち主で、製品がエレガントであることにとことんこだわった。正解うんぬんではありません。

アクション7 「それって何で?」をつねに考える!
街を歩いていても、素朴な疑問がそこら中にあふれています。今年はセミの鳴き声が少ないのはなぜ? どうして都営地下鉄の入り口にだけ床屋のようなマークがついているの?
もし、街を歩いていても何も疑問に感じないのなら、まずは疑問を探すために散歩してみてください。
反対に、何かについて「それって何で?」と考え始めると、芋づる式にいろいろなことが気になってきます。

アクション10 つねに五感にこだわる!
デザイン、物語、全体の調和、共感、遊び心、生きがい、これら6つの感性が求められています。
感性の時代は、こうしたものがロジカルに結びついているわけではない。より直感的で、創造的な関連性を発見できる能力が大切になります。
それをつかみとるための感覚が、五感です。<中略>
五感で感じ、とりわけ味わうこと。自分が体験し、感じたことを自分の言葉で表現する。そこに喜びを感じ、人生を豊かに生きていく方法を自ら発見する。

【感想など】
さすがにソニー、ウォルト・ディズニーを経てライブドアを創業し、さらには日本市場で低迷していたAppleを立て直すべく、スティーブ・ジョブズに日本を託され、iPod miniを大ヒットさせ「iPodの仕掛人」と呼ばれた著者だけのことはあります。

なんともイノベーティブな本ではないですか。

というのも、読んでいただければ分かると思うのですが、著者自身が

ビジネス書にあるまじき、ヒントだけを載せて最終的な答えを与えない本

と書いてあるように、「ヒントはやったんやから、あとは自分で考えろや」という、今までのビジネス書にはなかったタイプの本なのです。

その主張通り、読者の「自分で想像する余地」を残し、読者の「多様なニーズ」に答えない。

(きっとAmazonのレビューには「具体的な答えが書いてない、読むだけ無駄な本」とか「なにも得るものがなかった、お金を返してほしい」なんて思考停止した”教えて君”のレビューが上がることだろう)

ちょっと大げさに、そして過激に表現すれば、これは思考停止した日本人に対する挑戦状なのですよ。

けれどもワタクシ、本書を読んでまず浮かんだのが、「今の日本に必要なのはこれだ!」という閃きでした。

そもそも、日本の企業はいつからこんなふうになってしまったのでしょう。

ワタクシが小学生のとき、ウォークマンは憧れの的でした。
中学生のとき、先輩の持っていた富士通のFM-7で時間が経つのも忘れて遊びました。
カラー液晶のノートパソコンが出始めたとき、はじめて買ったシャープのノートパソコンは画面の美しさに感動しました。

ある時期まで、確かに日本のメーカーは尖っていました。
あこがれ、夢中になれる商品がありました。

ところが今、ワタクシがこの記事を書いているのはiMacですし、音楽を聴くのはiPhone4S、ノートパソコンの代わりに持ち運んでいるのはiPadです。

日本のメーカーの製品で欲しいものが正直言って、ない。

また、iPhone4Sのカメラはソニー製とか、次のiPadの液晶はシャープ製になるんじゃないかといったレベルで騒がれる現在の状況がすごく悲しい。

ワタクシが憧れ、好きだった日本のメーカーはいつから部品供給メーカーになったのでしょう。

何かがおかしい。
何かが足りない。

円高という技術者や企業にはどんなに頑張ってもどうしようもない壁があったのは事実ですが、どうも今の現状を考えたとき、根本的に何かを変えなければならない時期が来ていることは誰もが感じているのではないでしょうか。

日本は国の価値観やシステムががらっと変わる経験を歴史上何度かしています。
そして多くの場合、それは外圧がきっかけでした。

黒船がやってきて明治維新がなり、GHQによって民主主義がもたらされました。
もしかしたら今の日本を変えるには、リセットボタンを押す外からの大きな力が必要なのかもしれません。

ワタクシも政治家の無能ぶりなどを見ていると、「すべてをチャラにして、やり直した方が早くこの国は変わるんじゃないか」と思ってしまいます。

しかし本書を読んで、リセットボタンを押してくれる誰かを待つ必要はないんじゃないかと思うようになりました。

自分たちでリセットボタンを押せばいい。
つまり、すべての価値観、常識、惰性を自分で一度リセットすればいい。

セルフ・イノベーションすればいいじゃないかと。

本書には、ワタクシも大好きなスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチから「コネクティング・ザ・ドッツ」という話が書かれています。

点と点を結ぶ。

ちょっと意味は違うかもしれませんが、日本には独自の伝統と文化、そして高い技術力といういくつもの”点”が存在しています。

この”点”をうまく結ぶことができれば、まだまだ世界で戦えると思うのです。
世界中の人が憧れるような製品を世に出し、世の中を変えることができると思うのです。

そのためには、自分自身で

感じ、考え、動く

これしかありません。

そういった人材だけが点と点を結ぶことができるのだと思います。

”教えて君”は必要ありません。

もう一度書きますが、本書は著者からの思考停止した日本人への挑戦状です。
受けて立とうではありませんか。

著者の意気に感じ、「よし、いっちょやってやるぜ!」と闘志満々の方、ぜひ。

本書はアスコム編集者黒川様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【管理人の独り言】
今日ご紹介した本の主題は、あくまでもセルフ・イノベーションですが、著者がもとアップル日本法人代表だけにジョブズの秘話も随所にちりばめられていて、Appleファン、ジョブズファンはきっと楽しめるはずです。

たとえば本書に掲載されているこの写真。

IMG_0291_convert_20120722220206.png

何ともうらやましすぎる写真ではありませんか。
このツーショット写真を撮るときの秘話も必読です。

「えーっ、そのタイミングで写真を所望しますか!?」、しかも「その人に撮影を頼みますか!?」と2回びっくりしますよ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA