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追悼【書評】NHKスペシャル取材班(編)『Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言』 講談社

おはようございます、いつのまにか林檎マークの製品から1日中片時も離れず生活するようになってしまった一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、スティーブ・ジョブズの1周忌です。
そこで、ジョブズにちなんだ本をご紹介して、希有なイノベーターを偲びたいと思います。

 

【目次】
はじめに
スティーブ・ウォズニアック
ダニエル・コトケ
ビル・フェルナンデス
ラリー・テスラー
リッチ・ペイジ
ジョン・スカリー
福田尚久
前刀禎明氏
ダグ・キットラウス
ウォルター・アイザックソン
孫正義
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】
★スティーブ・ジョブズ (2001年3月29日放送クローズアップ現代より)

 時々、私のところへ、会社を始めたいという人が相談に来ます。だから理由を訊ねると、金儲けをしたいと答えるのです。だから私は言うんですよ。それならやめたほうがいいと。
 それだけの理由では、まず成功しませんね。お金持ちになりたいという理由で会社を始めた人で、成功した人間を私はあまり見たことがありません。成功する人は、時には、会社を始めることも考えていないような人たちです。
 彼らはアイデアを持っています。それを世界に広めたい、表現したいと願っています。そして、そのアイデアを聞いてもらうために、会社を立上げなければならないのです。

それ(インターネット)は、情報で、非常に知的なものです。そして感情を伝えるためには通信速度が足りません。感情を伝えるためには、もっと多くのデータを速く送信できなければなりませんし、ほとんどの人はそれだけのインターット接続を、充分な通信速度を備えていません。しかも、コンテンツの多くは感情を伝えるようにはつくられていないのです。私たちが常に感じてきたことは、アップルは技術と人間性との交差点でありたいということなのです。パソコンという道具に人間性の要素を盛り込みたい。知性の面だけでなく、人間の他飲めんでも役に立つようにしたいのです。そして、そこがアップルの非常に得意なことだと思っています。

★スティーブ・ウォズニアック

 「大勢の人を集めて、雑多なアイデアを採用するのではなく、最終的には1人の人物がその商品を『楽しい』と思えるようにしないといけない」と、彼はよく言っていた。そして、その決断を下すべき人物は、製品の愛用者であるべきなんだと言っていたよ。
 一般的な会社のCEO(最高経営責任者)というのは、普通は、自社の商品の熱心なユーザーでなかったりする。もちろん、携帯電話くらいなら持ち歩いたり、使ってみたりもするだろうが、「私の人生は、すべてこの製品を完壁に、美しくするために存在する」などと考えたりはしないものだ。
 でも、もしも、その商品が自分にとって非常に重要で、自分の分身とさえ言えるような存在だったらどうだろうか。ずさんだったり、お粗末だったりすることが絶対に許せなくなるよね。
 アイフォーンやiPad、あるいは初期のiPodなど、アップルは人気製品を連発したけど、ある時点から人々はこうした製品を見て「スティーブ・ジョブズそのものだ」と言い始めた。アップル製品というよりも、スティーブそのものだと感じていた。

★ジョン・スカリー

 その日、彼のです国のうえには、小さな1枚のベルベットに覆われた物体がありました。
 私が「スティーブ、これは何だい?」と聞くと、はっきり彼はこう言いました。
「これは未来だ。ぜひ、あなたにも見て欲しい」
 彼はそれを「マック・フォン」と呼んでいました。彼は続けてこう言いましたよ。
「これが未来の電話の姿だ」とね。「いつの日か、アップルで我々はこのような製品を作ることになる」と断言したのです。<中略>
 キーボードがない代わりに、スクリーンのついている機器が机の上においてあったんです。<中略>
 まだ、ラップトップ型のパソコンすら存在していない時代ですからね。ブラウン管の画面しかなかったころの話です。それでも、実物大の模型として、そこには小さなスクリーンのついた電話が置かれていたのです。もちろん木製の模型で、なかには電子機器は一切入っていませんでしたが。でも、このころから彼は、このような模型を工業デザイナーたちに作らせていたのです。

★福田尚久

 スティーブと2人で話をしている時、彼が「自分には1つだけ悔いが残ることがある」と語ったことがあります。それは「85年にアップルを辞めてしまったことだ」と。「あの時、自分が辞めなかったら、今の世界は全然別のものになっていただろう」と、すごくはっきりと言っていました。
 その話の前提には、「コンピュータとは本来こういうものなんだ」という、彼としての思いがあって、ところが、その思いとは全然別のところに現実はある——だから、理想を実現するために、お前も手伝え、みたいな、そういうメッセージだったんです。そのころ、ちょっと疲れていた僕に彼がそういう話をしてくれて、「あ、これは頑張らないと」という気持ちになりました。

 スティーブという人は、ライバルとか、競合とか言うことはあまり考えない人なんですよ。これは、いろんな人が彼から聞いていて、僕も何度も聞かされた話ですけど、「目の前にきれいな女性がいて、口説こうと思ったときに、『ライバルは彼女にこんなプレゼントしたようだ』なんて言う発想をした時点で、お前の負けだろう」と彼は言うのです。要するに、彼女に自分の思いをぶつければいいじゃないか、ライバルがどうするかなんて関係ないんだ、と。

★前刀禎明

 まさに彼自身——夢を追い続け、あくなき追求をしている人間——が大病を患って、命っていうか、自分の人生という物を改めて考え直すときがあったと思うんですよね。ですから「自分のやりたいことをやれ」ということを、より多くの人々、次世代を担うスタンフォードの卒業生たちを含む世界中の人々に伝えたかったのかなという気がしますね。もっとも、社内ではたびたび「俺のために働け」とか、思いっきり言ってましたけれども。

★ダグ・キットラウス

 スティーブ・ジョブズという人物は、僕が今まで出会った誰よりもはっきりと未来を見通していました。
 ですから、今後のアップルをどういう方向に導いていくのか、今後数年間の計画を彼が何も準備していなかったとしたら、それは大きな驚きです。でも、そんなことはなくて、アップルの社員にどんな仕事をして欲しいのか、今後数年分のアイデアを彼は用意していたと思いますよ。
 Siriは、彼が数年前に目の当たりにしたアィデアの一つで、すでに市場に出て活用されています。ほかにもこうしたアイデアやモノがいくつもあって、今後は順々に発表されていくはずです。そのうちのいくつかは私も知っていますが、今お話しすることはできません。ですが、どれもとても面白くて、期待できるものばかりだと確信しています。

★ウォルター・アイザックソン

 スティーブ・ジョブズは、一緒にいていつも楽しいという人物ではありませんでした。残酷なほど正直だったからです。彼が「残酷なほどの正直さは、(私の)部屋に入るための入場料だ」と言っているのを聞いたことがあります。
 彼は確かに反論されるという行為を非常に好んでいました。初代マッキントッシュを作っていた頃、つまりはアップルが会社として初期段階だった頃からそうでした。彼はチームのリーダーとして、非常に辛辣で手厳しかった。<中略>
 「辛くあたることもあるかもしれないが、それはお互い様だ」と、彼は言っていました。「言い返してくるのを期待しているんだ」と言うのです。アップル社内で彼の周辺にいる人たちは、「スティーブ、それもたわごとよ」と、彼に直言できる連中ばかりで、こうしたやりとりを彼は「実に率直で有意義な議論」と呼んでいました。

★孫正義

 まだ開発中でね、まだiPhoneというものが発表される前から、僕もいろいろ話しましたけど、「世の中にある携帯はなんと美しくないアグリーなものだろう、あんな不格好で使いにくくて、メールだって打ちにくいし、ネジだらけで、こんなものを人間が使ってること自体が俺は許せないんだ。もっと美しくて素敵なワクワクするようをものを作ってみせるから、世の中を一変させてみせる」と。
 そのしゃべり具合が経営者じゃないんですよ。エンジニアでもない。まるで、ピーターパンが、冒険の国に空を飛んでいくぞ、お前も一緒に海賊船に乗って行こうって語りかけるような……夢がある、目をキラキラ輝かせて言うんですよ。もう吸い込まれちゃうんですよね。一緒に行きたいって。

【感想など】
ジョブズが亡くなって1年が経ちました。

今日はジョブズの一周忌ということで、最近発売されたジョブズ本を取り上げてみることにしました。

本書は、昨年放送されたスティーブ・ジョブズのスペシャル番組の為に取材したもので、放送ではカットされた部分を収録しています。

また、冒頭には2001年3月29日放送のクローズアップ現代のなかでのジョブズのインタビューが収録されています。

さて、ジョブズに非常に近い方、11人の証言が掲載されているのですが、ワタクシが非常に面白く感じたのはジョブズの変わらない部分と変わった部分。

まず、変わらない部分というのは、製品に対するこだわりや、激情型の性格。
ジョブズと聞くと誰もが思い浮かべる、あの人を人とも思わない”キツイ”面。

アップルを立上げる前からの親友であるウォズやビル・フェルナンデスの証言からも分かるように、それはもう一生涯通じて変わらない。

でもその反面、アップルに復帰してからのジョブズはやはり大きく変わったんだと感じることもできます。

それは、いちばん最近の付き合いになるのかな?ダグ・キットラウス(Siriの創設者)が、ジョブズのことを「メンターのような存在」と言っていることからわかります。

アップルからの追放、癌との戦い、結婚と家庭生活などが人間としてジョブズを成長させていったのでしょう。

また、ジョブズが亡くなった今だから話せることも収録されていて、ジョブズファンには興味深い発言も多々あります。

特にウォズとスティーブの最後の会話。
それからiPhone4Sの発表直後にティム・クックが「スティーブに報告に行かなきゃ」と、孫さんに語るシーン。

このときクックは「元気すぎて困るんだよ」というのですが、翌日ジョブズは亡くなります。

まだわりと体調は良かったのか?それともクックにも容態は知らされてなかったのか?

いずれにしても、本書にはそのクックのインタビューやジョナサン・アイブなどジョブズに非常に近かった人でインタビューが掲載されていない(多分拒否されたんじゃないかな)人たちもいるわけで、今後もジョブズとのエピソードはぽつぽつと出てくるのではないかと思います。

さて、この1年。
ジョブズがいなくなったアップルをいろいろな思いでファンの皆様はみてきたことと思います。

向こう数年間のアイデアはストックされているようですが、今後のアップルがやはり心配。

確実にジョブズの生前と今のアップルは変わってきていると誰もが感じているのではないでしょうか。

つい先日、iPhone5が発表されましたが、ワタクシにはこれまでのような感動はありませんでした。

いや、製品は素晴らしいのです。
でも感動はない。

これはひとえに、情報が漏れ過ぎて予想どおりの製品が発表されたからにつきます。

こんなことジョブズが生きていたときには考えられなかったこと。
(iPad miniの情報も漏れてますもんね)

また、何かと話題のマップは、ジョブズならおそらくあのレベルでは世の中に出さなかったでしょう。

なにかが緩み始めている。

こういった小さな変化を見ていると、少しずつ、Appleが普通の会社に近づいているのではないかと心配になります。

それでも、今世界でいちばん面白い会社であることは間違いありません。
そしてその地位は、まだまだ当分の間続くでしょう。

なぜなら、Appleという会社自体がジョブズが生み出したいちばん革新的な製品で、その革新性が他の起業を大きく引き離しているからです。

彼は世界を変える製品を数多く世に送り出しましたが、いちばん世の中にインパクトを与えるのはAppleという会社なのです。

どんな起業にも寿命があります。
いつの日か、Appleも終焉の時が来るでしょう。

でもそれまでに、ジョブズのスピリットが詰め込まれたAppleから学んだ企業がどんどん誕生し、今とは違った産業界や世の中を形成するのではないかと思います。

MacintoshやiPhonei、Padといった製品が世の中を変えたように、Appleというジョブズの最大の作品がどんなふうに世の中を変えるのか、楽しみでなりません。

ジョブズ1周忌のこの日に、思うことを書いてみました。

【関連書籍】
やはり、この2冊は読んでおきたいですね。

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