<楽天ブックスはコチラ> 『震災恐慌!』
「賢者は歴史に学ぶ」という。
デフレ不況、リーマンショック、そして今回の大震災。
トリプルパンチの危機的な状況ですが、かつてこの国は不況期に襲った大震災を2度経験していたのです。
右往左往している政府よ、答えは歴史の中にある。
そして、何を実行しなければならないかはこの本の中に答えがある。
【目次】
まえがき
第1章 恐慌はそしらぬ顔をしてやってくる
第2章 今、本当に起こっていること
第3章 最悪のシナリオ
第4章 資産市場はどうなるか
第5章 震災恐慌を防げ!
【ポイント&レバレッジメモ】
★事実上追加的財政支出はゼロ
田中: 「阪神・淡路大震災のときにどう復興したか」という経緯と考察を同志社大学の林俊彦さんが「検証テーマ『復興資金―復興財源の確保』」というレポートにまとめているけれど、それを敷衍して、今回の補正予算案を見てみると、驚くべきことに、追加的財政支出が事実上ゼロですよ、ゼロ。
追加的財政支出というのは、震災からの復興に向けて、すでに組まれている予算以外に、政府が新しいお金を生み出さなければならないことです。ところが、政府はそれを全然やらずに、既存の予算を組み替えている。つまり、年金の国庫負担分を按配するとか、高速道路の無料化を見直すとか、そういったところを削って回しているんだね。上念: いわゆる予算の組み替えをしているだけで、新規に、震災で空いた穴を埋めるための資金は出されないということです。
田中: ということは、事実上追加的財政支出はゼロということだ。これは、要するに、政府は金を出さないから、震災復興は、民間と地方自治体とボランティアだけでやれということだよ。
★景気後退、リーマンショックに続くトリプルショック
田中: そこで怖いのは、震災で落ち込んだことではなく、マイナス成長が長年にわたって続いていくことです。すると、みんな疲れてくる。その中で、特に被災地域を中心に、東北が見捨てられるような状況になってしまったら、やはり多くの国民は、政府に対する深い不信感を抱くと思うよね。今は、寄付だってみんな一生懸命やっているけれど・・・。
最悪のシナリオは、金融緩和は行われず、消費税だけが増税され、震災復興はしょぼい予算の組み替えだけで、だらだら続きます。税金を払う側は取られ放題で不満がたまり、救済としてもらう側も「こんなにしょぼいのか」と不満がたまり、国内全体に不満がたまっていく可能性がある。しかも、経済はどんどん縮小し、失業率が上がっていく。
失業率がかなり深刻な状態になると、雇用調整助成金みたいなものがどんどん出されるようになり、民間企業に勤めているけれど、半分公務員みたいな人たちがどんどん増えていくことになる。上念: つまり、今回の震災が、みんなが平等に貧しくなっていく始まりになりかねないわけです。緩やかな震災恐慌がずっと続いていく始まりであると・・・。
★先進国でデフレなのは日本だけ
田中: 1991年にバブルが崩壊したのは、そもそも日銀がバブル退治のために金融引き締め政策を行ったからで、そこから日銀はほとんど金融緩和を行わなかったために、その6年後の1997年に日本はデフレに陥ってしまいました。その2年前の1995年に起こったのが阪神・淡路大震災でした。その後の日本は現在までずっとデフレ状況にあります。だからこの本を読んでくださっている方の中にも、デフレが状態で、墓にデフレに陥っている国もあるんじゃないかと思っている人がいるかもしれませんが、実は1930年代前半に世界的な恐慌が起きて以降、先進国ではもう80年以上、どこにもデフレに陥るような下手な金融政策を行った国はなかったんです。
つまり、現在の日本のデフレという異常な状態は、世界恐慌以降、先進国の中では初めての出来事というほどの異常事態だということです。
★予算の組み替えとは
上念: もともとの予算の組み替えだけというのは、概念的に言うと、子供手当とか高速道路の無料化とかいったところに新しい穴をあけて、その分の資金で、震災の穴を埋めようということなんです。
つまり、震災で起こった穴は埋まる気がするけれど、実はその裏で、他の痛んでない部分に同じ大きさの穴があいてしまうということ。これを日本経済全体で相殺すると結局、震災によって生じた穴―――つまり経済へのマイナスの影響は、日本経済全体にそっくりそのまま残ってしまうということです。その意味で、今回の政府のゼロ解答は、かなり危ない対策なんですが、まさにそこに突き進もうとしているんです。
★林レポートから学ぶべき教訓
田中: しかも、阪神・淡路大震災の時の政府は、最初の1995年に補正予算を組みます。さらに、新年度になってから補正予算を1回。最初の半年で2回組んでいるんです。それで、政府が補正で新規に出したものを負わせると総額が2回で3兆円を上回るくらいの規模になっている。2回合わせて半年ですでに3兆円。その後の2年度くらいで復興資金の大部分をしっかりと出しきっているんです。
こうした林さんのレポートから学ぶべき教訓は2つあります。ひとつは、復興資金は災害が起こった直後に、早期にドカンと投入しなければいけないこと。もう一つは、災害が大きい場合、阪神・淡路大震災のときの1の財源捻出方法である、追加的な国債発行による財政支出によって、震災自体で空いた穴そのものをしっかり埋めなければいけないということ。また国債発酵は被災した人たちの困窮を、今いる国民全体で負担するという空間の拡大的手法で対処すると同時に、将来にまたがって負担するという時間的な拡大で対処するということです。
★日本経済はまだまだ成長できる
上念: みんなが本当に最小不幸社会を目指し出すようなことが起こる可能性があるということですね。金融緩和をすれば、最大多数の最大幸福を実現する道をまた歩き出せるのに。「最小不幸社会」って言葉は、管直人首相が初の就任施政方針演説の時に使った言葉なんですが、皆さんは実際「もう日本は成長できないから、大きな不幸がないだけでもありがたい。日本は最小不幸社会を目指すしかない」って本当に思いはじめているかもしれない。けど、それを首相が言うなんてちゃんちゃらおかしいんです。
だって、なんで日本がバブル崩壊以降ずーっと成長できないかって、まさに、日銀が成長のために必要な通貨供給を怠っているからですよ。いわば、成長途上の子供にご飯を少なくしか与え続けていないような状況です。成長期を過ぎた大人ですら、それでは成長できないですよ。なのに日銀自身が、「もう日本は成熟した大人の段階に入ったからそもそも成長できない」みたいなことをいけしゃあしゃあと言う。<中略>例えば、2010年1~3月期なんかは名目経済成長率で見ると1.7%も成長してたんです。<中略>そもそも日本の前を走っているアメリカでさえしっかり成長を続けているんです。いつ日本はアメリカを追い抜いて成熟社会に入ったのかという話で、アメリカと日本の一番の違いって、<中略>ほぼ明確にどれだけ中央銀行が成長に必要な資金を投下し続けたのかの違いでしかないんですよ。先進国の中で、ずっと成長していないなんて、金融緩和を怠り続けた日本だけですよ。
それを証明するかのように、この1.7%の名目成長率の上昇が怒った時って言うのは、時期としてはサブプライム問題が起こって以降、日銀がまがりなりにも少しだけですけど金融緩和政策を行っていた時期と完全に一致しているんです。
★「日本銀行法」という枠組みを変えよ
上念: 現行の日銀法はどういうものかと言うと、「日銀はなにをやってもいいです、一切責任を取らなくていいです」という、驚くべき法律なんです。総理大臣ですら日銀総裁をクビにできないし、目標も手段も勝手に自分たちで決めていいと。そんなむちゃくちゃな中央銀行の法律をつくっているのは日本だけですよ。世界標準は、目標は政府が決めて、その目標を守れなければ罰ゲームがあるというものです。罰ゲームなしで、目標も勝手に決めていいなんて、こんな素晴らしい状態を日銀は維持したいに決まっていいるじゃないですか。
今みたいに、目標を思いっきり下げて、それを達成して、「完ぺきにやりました」と言っていればいいだけですから。常識で考えても、そんな組織が正しいことをするわけがないと思うでしょ?日銀は、公的組織なんです。それなのに、そんな組織が、目標は自分で決めていい。その目標を公表する必要もない。失敗しても誰にも誰にも責められないなんて、そんな強大な権限を持っていること自体がおかしいのです。
★震災復興べからず集
・べからず集その1 増税
・べからず集その2 金融引き締め
・べからず集その3 復興資金の逐次投入
【感想など】
久々、ワタクシ一龍、本を読んで義憤に燃えたぎりました。
本書は経済学者の田中秀臣氏と勝間さんのブレーンの一人でもある上念司氏の対談という形式で書かれておりまして、お二人とも反デフレ派の急先鋒でございます。
以前、上念氏の著書、
をご紹介した折、
日銀の政策が正しいのか間違っているのか、それを判断できるほどの経済的知識がワタクシにはないと申しました。
ですので今回も、本書に書かれている日銀の政策批判については正しいのかどうかワタクシ自身なんとも言い難い部分があります。
それに、当ブログではあまり政治ネタは取り上げたくないという気持ちもあります。
しかし、今この瞬間も不便な避難生活をしている人たちがいること。
不景気の中、ぎりぎりの給料でまじめに働き、生活を耐え忍んでいる人たちがいること。
こういった人たちが、さらに苦しみを味わうことになり、日本がますます弱体化していくことになるのは我慢ならない!
本書の内容の是非はともかく、これは一つの、しかも緊急の議題、テーゼとして広く知ってもらう価値のある本だと思いご紹介することにしました。
さて、日銀の政策の是非は判断しかねるワタクシですが、本書で秀逸だと思ったのは、歴史から学ぶ姿勢。
実は日本は不景気な時期での大震災を過去に2度経験しているのですね。
それは1923年の関東大震災と1995年の阪神・淡路大震災。
この二つの震災の復興策とその前後の経済政策についてはぜひお読みいただきたい。(特に菅首相)
例えば関東大震災の復興策では、当時の経済学者小泉信三氏が4つの復興策を提議しています。
小泉信三の関東大震災に対する震災復興策
1.スタンダードな策は、(現在の民主党みたいに)予算の組み替えをする。(現在でいうと、子供手当のような何かの)支出を削減して、復興資金にあてる。
2.増税みたいに、被災していない地域からお金をもらってくる。
3.国債を発行して、復興資金を未来からもらってくる。
4.インフレを起こす政策。
おそらく今回の地震に対する復興策も考えられる選択肢はこの4つでしょう。
このうち、現在の政府が主張しているのが、1と2の策ですよね。
しかしこの2つの策は最悪の選択肢であることが歴史を見れば明らか。
特に増税は、阪神・淡路大震災の復興が完全でない時期に消費税率アップをしたため景気が冷え込み、デフレ状態に突入して今に至るという状態を生み出しました。
なのに増税の議論が国会では早い段階から登場している。
本当に何を考えているのか、おかしいでしょ。
で、関東大震災の例もあるように、一番効果的だと思われるのは3と4。
震災復興国債を発行、日銀に国債を買い取らせ、同時に資金流通量を増やして景気を好転させる
ところがあろうことか、国債を発行して日銀に買い取らせる案は、与謝野さんが一蹴して立ち消え。
そもそもどんな復興策でもお金が必要なのはわかりきっている。
税だろうが国債だろうが最終的には国民の負担。
ならば、経済規模を拡大させる政策をセットでやらなければ国民の負担はますます大きくなるというのはだれが見ても明らかではないか。
また、阪神淡路大震災からの復興をまとめた小林レポート「検証テーマ『復興資金―復興財源の確保』」では、とにかく早い段階で復興のためのお金を大規模に投入することが効果的だといっていますが、これも政府は及び腰。
とにかく対応が遅くて、いつ頃資金が投入されるのかも見えてこない。
このままいくと、本当にお二人がおっしゃっている“最悪のシナリオ”が現実化しそう。
政治家の先生方、歴史を見ようよ。
この先どうやって日本を立て直せばいいか、歴史の中に答えがあるやん。
先人の成功と失敗から学ぼうよ。
地震で2万数千人の死者行方不明者が出たんですよ。
そしてこの国は、不景気がずっと続いてて、年間3万人も自殺者が出ているんですよ。
それなのに、
日銀総裁は地震が来ようが、原発がつぶれようが、デフレが続こうが年収3000万円以上もらえるわけだから見て見ぬふり。
国会議員の先生方は選挙に勝つことしか頭になく、野党は今選挙に持ち込めば勝てると思い菅降ろし。
与党は首相を変えないと選挙に負けると思い菅降ろし。
こんな状況で解散総選挙したって、肝心の被災地の人たちの民意を問うことができると思っているんでしょうか?
海水注入を止めたとか止めてないとかどうでもいいです。
政党与党が大物国会議員のお誕生日会してるばあいか!
もう我慢ならんので書かせてもらいますが、
みんな自分のやるべきことをやろうよ!
ワタクシも孫さんには遠くおよばないけど寄付させていただきました。
募金活動もしましたよ。
でも、民間でできることなんて限界があるんです。
この未曽有の大震災から復興するためには、まず自分ができることを粛々とやること。
政治家は政治家の、日銀は日銀しかできないことをちゃんとやってくださいよ。
今日は怒りにまかせて書いているので、書評ではなく政治家や日銀への攻撃になってしまいましたが、この国を思えばこそですのでご容赦を。
とにかく民間の人も政治家も、この国には過去に不景気と震災のダブルショックを乗り越えた経験が2度もある。
そして失敗の経験もある。
まずはそれに目を向けてほしい。
緊急で必読の一冊。
本書はスタジオビビ編集者の乙丸様より献本していただきました。
ありがとうございました。
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とっても、勉強になりました!ありがとうございます。 (^^)
齊藤様
私も勉強になりました。
何が真実なのかはよくわかりませんが、問題意識を持つことがまずは大事かと。