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今こそ問う、企業の品格【書評】渋沢栄一(著)池田光(解説)『渋沢栄一 逆境を生き抜く言葉』(イーストプレス)

 

渋沢栄一 逆境を生き抜く言葉 (East Press Business)

渋沢栄一 逆境を生き抜く言葉 (East Press Business)

  • 作者:渋沢栄一
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: Kindle版
 

 

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これほど立派な企業家が、明治の日本にいたんですね。
大地震以来、とくに企業のコンプライアンスが問われることになった日本ですが、大先輩にこんな人がいるじゃないですか。
これはぜひとも読んでほしい。

特に、資産13兆円の某電力会社の経営者さん。

 

【目次】

はじめに  なぜドラッカーは渋沢栄一を大絶賛したのか?
第1章 人生の目的  渋沢栄一の生涯に学ぶ「天命」の見つけ方
第2章 道徳と経済  ドラッカーも絶賛した「論語と算盤」 の教え
第3章 生き方  「意味のある人生」を生きるには
第4章 志の持ち方  どんな時代でも通用する「夢をかなえる方法」
第5章 勉強のしかた  人生に必要な「本当の実力」を身につけるには
第6章 維新の元勲に学ぶ  「未曾有の国難」を乗り越えた先人の知恵
第7章 成功術・処世術  道を誤らないために知っておきたい「ものの見方」
第8章 お金とのつきあい方  「評価される人」のお金の稼ぎ方、使い方
第9章 論語の読み方  教養を「人生の糧」にするいちばんの方法
渋沢栄一 略年譜

【ポイント&レバレッジメモ】
★人生の目的

もしここに二つの仕事があって、
一つは自分の利益となり、
一つは公共のことであるとすれば、
まず公共のことの方から処決したくなるのが世の性質である。

⇒「私の欲する処は、今の言葉でいえば産業立国にあって、すなわち商工業の発達によって国家を富まし、国力を発達せしめようという事」

人間は死ぬまでは国民としての辞表を出さぬものであって、
生存する限りは社会事業に努めねばならぬ。

⇒「役に立たぬくらいなら死んだ方がいい」(渋沢談)

★道徳と経済

仁義を根本にして商工業を営めば、
あえて争うがごとき事をせずとも、
利は自ら懐にはいってくるものである。

⇒起業の目的は「仁義」の追求であり、「利益」は結果に過ぎない

★生き方

元来、人がこの世に生まれてきた以上は、
自分のためのみならず、
必ず何か世のためになるべきことを
為すの義務があるものと余は信ずる。
すなわち、人生は生まれるとともに天の使命を享けておる。

⇒「社会の事、公共の事にはできるだけの貢献をなし、その使命をまっとうしたい」

自己本位を排しての独立自営的精神、
それが何人にも歓迎さるるところの行いである。

⇒自己本位ではなく、社会本位の独立心を持つ

★志の持ち方

人の生涯をして
重からしむると軽からしむるとは、
一にその晩年にある。

⇒「若いころのいろいろな失敗などは、世間も許してくれるし、気にかけることはないよ。大事なことは、晩年が晴れ晴れと立派なことだ。晩説が良ければ、その一生はよかったといえる。晩晴こそを私は願っている」

★勉強の仕方

読んで心に残らぬようなことなら、
万巻の書を読破した者でも、
なおよく一冊を記憶する者に及ばぬわけである。
ゆえに読書の要は「心記」にあるに相違ない。

⇒よい本とは心に残る本であり、また心に残るような本でなければ、読む価値はない

★お金とのつきあい方

いやしくも世の中に立って完全に人たらんとするには、
まず金に対する覚悟がなくてはならぬ。

⇒お金を重んじすぎないこと、お金を軽んじすぎないこと

金銀財宝のごときは
いわば丹精した人の身に残る
糟粕のような物である。

⇒「給料の振込」ではなく、「仕事そのもの」を楽しめ

【感想など】
かのドラッカー氏が
「経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物の中で、かの偉大な明治を築いた偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない」

 

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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と、渋沢栄一氏を大絶賛していることを知って以来、渋沢氏の本を読みたい、いや読まねばならないと思っておりました。

ドッラカー氏にそこまで称賛される渋沢という日本人はどういう人物なのか?
恥ずかしながら、ワタクシは正直言って、明治期に活躍した起業家であり企業家、というぐらいしか知識がない状態でした。

こういう場合、一番よいのは彼自身の著書をまずは1冊読むこと。
あるいは渋沢氏について書かれた研究書や解説本を読むことなのですが、ご存じのとおり、渋沢氏ご自身の著作は多数あって、どれから読むべきか迷ってしまう。
それに、解説本もかなり堅めで取っ付きにくい。

多分ワタクシと同じように感じている人、多いんじゃないでしょうか。

そういった方にお勧めなのが今日ご紹介する本書です。

目次を参照していただきたいのですが、「人生の目的」から「論語の読み方」まで9つのテーマについて、右ページに彼の言葉、左のページにその解説といった構成で、渋沢氏の思想や人となりを紹介してくれています。

もちろん、彼のすべてを語りつくせる本ではありませんが、おおまかに彼の人となりを知るための、入門書としてはよいのではないかと。

少なくとも、今回本書を読んだことで、今まで渋沢栄一というビッグネームに対するワタクシがもっていたイメージが180度変わりました。

というのも、「明治初期の大企業家」という言葉から連想してしまうのは、昨年の大河ドラマがあまりに強烈なインパクトだった岩崎弥太郎。
「ワシは日本一の大金持ちになってみせるぜよ!」的な、ギラギラした感じ。(←すいません三菱のみなさん。)

きっと、渋沢氏もそんなギラギラした感じの人なのかと誤解しておりました。
いやぁ、ドラッカーが絶賛するだけの事はある。

渋沢氏は「論語と算盤」と表現したそうですが、今の言葉で言い換えれば、「社会道徳と利潤」、もっと言い換えると、コンプライアンスとお金儲けを両立しなさいよ、という主張。

現代の企業がようやく取り組み始めたテーマである「企業の社会的責任」について、明治期の日本人で、しかも実際の企業家が主張していたとは、驚きです。

また、渋沢氏自身が
「私がもし一身一家の富むことばかりを考えたら、三井や岩崎にも負けなかったろうよ」と語っていたというのも痛快でした。

それから、

渋沢氏の思想的柱が儒教だったということも今回知ることができた“収穫”の一つ。

ワタクシはあまり儒教の教えは好きではありません。
なんというか、型にはめすぎというか、ダイナミズムがないというか、「もっととんがった部分がなければ21世紀は生きていけんだろう!イノベーションは生れんだろう!」といった感じでした。

しかし、本書を読んでみて、儒教的“中庸”の生き方も「結構いけるかも」と思えるようになりました。(孔子さんすいません)
実際、儒教も「人がよりよく生きるため」の教えですから。

この儒教を単なる教養ではなく、生きるうえでの“軸”にされていたのが渋沢氏。
なるほど、こういうふうに自分自身に取り込むと、本当の“修養”となるんだということも学べます。

なにはともあれ、まだ、渋沢栄一氏を知らない方、渋沢栄一入門書としてぜひ!

 

渋沢栄一 逆境を生き抜く言葉 (East Press Business)

渋沢栄一 逆境を生き抜く言葉 (East Press Business)

  • 作者:渋沢栄一
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: Kindle版
 

 

本書はイースト・プレス社、畑裕介様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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