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今の働き方、好きですか?【書評】馬場正尊・林厚見・吉里裕也(共著)『だから、僕らはこの働き方を選んだ』(ダイヤモンド社)

「朝起きて。自分のやりたいことをやれる人。それが成功者だ」
                     ボブ・デュラン

あなたはやりたいことをやってますか?
それでちゃんと稼いでますか?

「本当はやりたいことが他にある」「会社と家の往復だけの人生に疑問を持っている」

そういうあなたは本書を読むべし。
ただし、相当な覚悟を持って。

 

【目次】

はじめに 幸せな働き方をつくる
序章 僕らの新しい働き方
第1章 東京R不動産の仕事
第2章 会社員とフリーランスの間
第3章 良いとこ取りの組織論
第4章 ビジネスとおもしろさのマネジメント
第5章 やりたい仕事をして生きる

【ポイント&レバレッジメモ】
★「やりたい」の連鎖

 すべては自分たちの「やりたい」から始まる。そうでなくてはいけない。僕らが「やりたいこと」をイメージしながら仕事をしていると、なぜかそれを一緒にやりたいと言ってくれる人と出会うものだ。
 そうすれば、好きな仲間と信頼関係の中で仕事をし、仲間と仕事が広がるサイクルが少しずつ自然に広がっていく。
 一方で、ビジネスとしてきちんと成立させることには当然こだわる。ビジョンとイメージがあって、そこに戦略も行動もきっちり伴って、はじめてそれは仕事になる。
 続けるのはさらに大変だ。それでも僕らは、株主の利益のためにやらなければとか、規模の「成長」のためにといったことだけで、強い思いもなく始める仕事がうまくいく気がしないのだ。

★アフロ&スーツのトッププレーヤー

 室田啓介。彼は髪型がアフロである。しかも生半可なアフロヘアではなく100メートル離れたところからでも識別できるほど強烈なアフロだ。<中略>最初はそれを隠し、マジメなフリで普通の髪型で面接に来た。
 しかし、チームに入ってすぐ彼は「実は、いつもはもっと激しいアフロです」とカミングアウトした。人事としては魅力的だし、空間センスもあれば物事を整理し、目標に熱く向かう才能もある。<中略>
 そこで、僕らが提示した条件は、「わかった。アフロがお前の魂なら、それはそれでいいだろう。ただし、スーツにしろ」
 ここで、アフロと引き換えにスーツ着衣を義務づけるという条件が設定された。室田は「アフロでスーツの不動産や」という世にも珍しいスタイルを選択することになったのだ。
 でも、今考えてみれば、アフロにしてしまいたいという自由さへの希求と、スーツを着て物事をきっちり落とし込みたいという仕事への責任感のアンバランスさは、奇跡的にビジュアルとして結実している。<中略>
 そんな彼がいざ仕事を始めると、すごく確実な仕事をした。今ではメンバーの中でも最高の売り上げをたたき出し、リーダー的な存在になっている。

★ナナメ出世とジグザグ出世

 以前「垂直出世でも、水平出世でもなく、俺はナナメ出世を目指す」と表現した友人がいた。「ナナメ出世」とは何なのか?
 垂直出世は従来型の出世で、課長になり部長になり重役になり、そして社長を目指すこと。今までの組織の唯一無二の生き方で、これから外れることを、企業ではしばしば、「ラインを外れた」と表現する。悪魔のような言葉だ。<中略>
 水平出世とは、会社を辞めて、いろいろな分野に手を広げ、その表面積で生きていくタイプである。<中略>この場合、正確に言うと出世という単語は適切ではなくて、キャリアの水平展開みたいなもの。一見多彩に見えていいけれど、水平展開がつらいのは給料が積上っていく感覚もなく現実もないということ。拡散による疲労が増すだけだ。その友人は「垂直と水平の中間のナナメ出世が存在しているはずだ」という持論を提唱していた。
 組織に所属して組織内のステータスが上がる出世の道も確実にこなしながら、同時にプライベートで本を書いてみたり、ある種の特技を持つことで社会的出世をするという水平展開の軸も持つ。両方のベクトルを掛け合わせたのがナナメ出世。

 東京R不動産で可能なのは、「ジグザグ出世」なのでないかと思っている。例えば、今年は水平、来年は垂直と決めてみるということだ。

★モチベーションの源

 僕らの場合、モチベーションを左右する特に重要なファクターは、「おもしろさ」と「納得感」である。
 「おもしろさ」は、自分が好きなものを見つけ、それを好きな人に伝えて喜んでもらうこと。とてもシンプルな話だ。<中略>
 「納得感」は、自由とフェアネスがあること。理不尽なことがない。頑張れば返ってくる。納得するまで議論できる。これがないと飲み屋でひたすらグチることになり、モチベーションはどんどん下がる。

★規模でなく影響力で成長する

 会社は成長しないと死ぬなどといわれると、「まあ場合によるんじゃないの」と思ったりするものである。老舗のお菓子会社などで、同じ規模でもひたすらクオリティとプライドを維持し続けているところはあるのだから。
 草食的に見える僕らも、もちろん欲はある。成長したいとは思っているけれど、それは「インパクト」、すなわち社会に対する「影響力」を進化させるというのがその軸だと考える。
 そして影響力を進化させていくには、無駄に大きくなろうとしすぎないことも必要だと思う。偉大なアーティストやデザイナーがそうであるように、ピュアに創造的集中力を発揮し続けられる状態を保ちながら質的な進化を積み重ねていく者は、確実に影響力を増大させていく。

★会社もフリーエージェントへ
 

そもそも会社というのは事業を行うためのハコでしかない。事業は一つひとつ違うもので、動き方もカルチャーも違うべきである。固定的な一つの会社でやることは、メリットもあるけどデメリットも多い。それぞれの事業にとって最もいい動き方が出来るような組織が、必要なときに連携するスタイルをとればいいはずだ。そして、親会社と子会社という上下関係でなく、もっとフラットにアメーバのように広がればいい。

★好きなことを仕事にすべき?

 「好きだから食えなくてもいいんだ」ではなく、好きなことだからこそ、社会的にきっちり成立させ持続させることに心血を注ぐ。だから自分たちがストレスなく続けていけるように工夫する。そしてもちろん、好きなことの範囲を広げたりしながら、より充実しようと思いながら働いている。<中略>
 そもそも一生安心できるポジションなんてない。最大の安心は自分が世の中に価値を生み出せる人間であることだと思う。そのためにがんばらないといけないし、そのためにやる気のある状態をキープしないときつい。
 そう考えると、自分がやりたいと思ったことをやっていないと気持ちもいつか萎える。どんなことをやっても厳しい局面は必ずある。厳しい状況でも好きだから頑張れる。だから、巡り巡ってやっぱり好きなことをやらないといけないのだ。

【感想など】
この本は“劇薬”です。
特にワタクシのようなフリーに憧れる者にとっては・・・。

東京から遠くはなれた地方に住んでいるワタクシは、東京R不動産という名前を本書で初めて知りました。

それに、バブル世代のワタクシにとって、不動産やと言えばどうしてもダークなイメージ。

正直、一体どんな本なんだろうとちょっと構えて読み始めました。

ですが、本書冒頭部分の

僕らが大事にしていること
・やりたいことを仕事にすること
・価値観を共有できる仲間と働くこと
・きちんと稼ぐこと
・どこまでもフェアであること
・直感を大事にすること
・規模でなく、影響力で成長すること
・旅するように生きること
・本質的に自由であること

これを読んだだけで刺さりましたよ。

心をえぐられる感じ。

そして、今までワタクシがおぼろげながら感じていた理想の仕事像、自分のしたい生き方がハッキリクッキリと解り、腑に落ち、付き物がとれたようにスカーッな状態になりました。

で、さらに読み進めば進むほど、「何この会社?おもしろい!」となって本に引き込まれ。

読み終えてしたのは、このユニークな職業形態の不動産屋さんがどんなこだわり物件を紹介しているのかを確かめるためにサイト拝見。

こちら→東京R不動産サイト

確かにおもしろい。
おもわず2時間ぐらい見てしまいました。(おかげでこの記事のアップが遅れてしまいましたが・・・)

どの物件もユニークというかクセがあるというか個性的というか、万人受けする物件ではないけど少数の本当にその物件に惚れ込む人が長く愛して住みつづけるような家(部屋)ばかり。

これは仕事する方も楽しそう。

もしワタクシが東京で住むようになった時には、東京R不動産さんにお願いすることに決めました!

さて、なぜ本書にグサッときたのか。

それは自分自身では感じてはいたものの、はっきり言葉にできていなかった自分の心の中を、はっきりシンプルな言葉で提示してくれたからでした。

普段ワタクシは、日本のサラリーマンのほとんどの方同じく、組織に属して働いています。

そして組織に守られているというありがたい実感はあるのですが、

小回りが利かない、身動きが取れない鈍重感
根回しや手順を踏むモタモタ感
したいことや新しいことがなかなか通らない閉塞感

といった、これまた日本のサラリーマンのほとんどの方がもっている不満を抱きつつ仕事をしております。

ワタクシは幸せなことに、今の仕事は大好きで、昔からなりたくてなった仕事に就いております。
ですが、どっぷりと職場に浸かってその世界だけで生きていると、毎日消耗していくだけの自分を感じてしまうのです。 

そして何より嫌なのが、就業規則と時間に拘束されること。

どうも縛られるのが性に合わない。
職場と家の往復だけの生活がしばらく続くと、あのジョブズの言葉

「もし今日が自分の人生最後の日だしたら今日やる予定のことは私は本当にやりたいことだろうか?」それに対する答えが「ノー」の日が何日も続くと私は「何かを変える必要がある」と自覚するわけです。

を思い出し、「ノーだよな。今日もノーだよな。旅に出たいなぁ。」とつぶやいてしまう。

もちろん、ここですべてを投げ出して旅に出ることはできないので、紙一重で現状をキープしている感じ。
(きっと、ワタクシが本好きなのは、本を読んで他の人生をバーチャル体験することで”旅”をしているんだと思う)

同じ症状の人、手を挙げてください。ワタクシだけじゃないですよね。

そもそも、今のような会社(工場)に通って仕事をするという就業形態が出現したのは、18世紀半ばの産業革命から。
人類の歴史(氷河期以降の1万年と限定しても)からいえば、ほんの一瞬にすぎません。

さらに、工場勤務なら一カ所に集まって仕事をするのも仕方がないですが、知的労働の分野に置いて、尚且つ現代の発達した通信技術が存在する中で、はたして前世紀的な働き方を維持しなければならない理由があるのか、かなり疑問。

もちろん、フリーエージェント・スタイルを諸手を上げて賛美するつもりはありません。
厳しい世界であることは理解できます。

それに、人間は”犬になりたがる”生き物。
寄らば大樹の陰が性に合っている人もいるでしょう。

働き方は人それぞれなんです。

ワタクシが問題にしたいのは、人それぞれのはずの働き方が、今の日本では働き方の選択肢があまりに偏りすぎていて、現実的に選択肢がないということです。

アメリカでは労働人口の4分の1がフリーエージェントといわれている

そうですが、もしかしたら、この多様性もアメリカの強さなのかもしれません。

特に、本書でも紹介されている「ジグザグ出世」なる生き方が市民権を得てきたら、いい意味でのブレ幅のある人が増え、その人たちがプロジェクトごとに集散するようになる。

これは日本経済の閉塞感を打ち破るような、あるいは画期的なイノベーションを生み出す原動力となるかもしれません。

そういえば、若い頃のジョブズはブレまくってますもんね。

”犬になりたがる”人には本書は不要。

上記の「僕らが大事にしていること」を読んで、一項目でもグサッときたら、絶対読むべし!
ただし、劇薬と覚悟して。

勢いで会社を辞めてもワタクシは責任負いかねます(笑)。

本書はダイヤモンド社編集者の市川様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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