ツイッターは書評ブロガーと作家さんを、#kenponハッシュタグでつながる力を発揮する。
ツイッター上で献本いただいた第1号!テーマは睡眠でした。
【目次】
Chapter.1 こんなに怖い寝不足の真実
ミスを誘発し、大事故を起こさせる原因
Chapter.2 「脳」と睡眠
よく学び、よく休む
Chapter.3 「こころ」と睡眠
寝不足が先か、こころの病が先か
Chapter.4 「からだ」と睡眠
寝不足は万病のもと
Chapter.5 睡眠科学を活かした快眠術
睡眠は脳に欠かすことのできない栄養源
【ポイント&レバレッジメモ】
本書は50個の質問に答えるQ&A方式で書かれています。
今回はその中から10問をピックアップさせていただきました。
Q1:世界で最も睡眠時間が短いのはどこの国?
A:日本、韓国、台湾です。どの調査でも、この3国が1位を争っています。
寝る時間があったら有効活用したい、というせっかちな根性も原因があると思います。キリスト教やイスラム教では、夜はむしろ安息を取るという意義が大きいように思います。家族と一緒の時間と睡眠時間とを削り、仕事に打ち込む。打ち込みたくなくても、きっちりやらないとマズい状態。勤勉で強迫的なのは日本人のいいところでもあり、よくないところでもあります。
Q6:日本では寝不足による経済損失が3兆円を超える?
A:〇
日本では、日本大学医学部精神神経科の内山真教授が、不眠症や睡眠不足によって国内で生じる経済損失が年間3兆4693億円に上るという試算をまとめ、2006年に報告しました。日本の医療費は約30兆円なので、医療費で費やされる約9分の1は睡眠不足分ということになります。
Q13:「イヤなことは寝て忘れろ」と、よくいいますが、本当に忘れられるのでしょうか?
A:△
日常の「イヤなこと」は寝たほうが忘れられます。でも、「イヤなこと」を通り越して「心的外傷(トラウマ)」になると、むしろ寝ている間に記憶にすり込まれてしまいます。
Q16:夢を見ているときに記憶が定着するの?
A:△
人間は夢をこのレム睡眠中に見ているという事実もわかりました。これを契機に、睡眠が記憶の定着に役立っていることをレム睡眠、ないし夢とからめて説明しようする研究がブームになりました。夢を見ているうちに、重要な記憶とそうでない記憶が整理される。なんか信じてしまいそうな仮説ですね。人気作家の「脳科学」系の本にも、「レム睡眠は記憶に重要」と書いてあるものがたくさんあります。
「100%間違いだ!」とまではいきませんが、ちょっと時代遅れの感はします。現在では、言葉による知識の記憶(陳述的記憶といいます)、あるいはスポーツや楽器を覚える、いわゆるからだで覚える記憶(手続き記憶)には、深い睡眠(ノンレム睡眠、脳波で周波数の遅い波の出る睡眠なので、徐波睡眠とも呼ばれます)が重要だということがわかってきました。
ノンレム徐波睡眠のときに、記憶が整理され固定されるというのです。
Q21:睡眠の老化は30~40歳代に始まる?
A:〇 ⇒ 30~40歳代から深い睡眠(徐波睡眠)が短くなってきますも年齢とともに早起きになり、睡眠は浅くなってきます。
睡眠も年を取るという事実を知っていれば、あわてることはありません。睡眠相が前進し、早起きになる傾向があるのは間違いないので、生活を朝型にシフトするのも有効です。後からも述べますが、短時間の昼寝や睡眠環境・用具をよくすることで、「睡眠のアンチ・エイジング」をすればいいのです。
Q24:うつ病の患者の脳は、寝ていてもちゃんと休めていない?
A:〇 ⇒ PET(ポジトロンCT)を使った研究でも、うつ病の脳は、睡眠中もしっかり休めていません。
うつ病の患者さんは、健康な人に比べて、ノンレム睡眠中に脳が十分に休めていないのです。
さらに、人間の意欲や感情などをコントロールする、いわゆる「古い脳」といわれる大脳辺縁系が活性化していました。
うつ病の初期治療でいちばん重要なのは、睡眠と食欲を改善させることです。なぜなら、食と眠りがよくならないと、心身ともに疲弊してしまい、「もう治らないんじゃないか」という絶望感を強くしてしまいます。まず不眠をよ
くして、治療に対する期待を高める。日常の臨床でも、うつ病と睡眠との関係は、切っても切れないのです。
Q31:「寝ないと太る」と聞きました。逆の様な気がしますが、本当なのでしょうか?
A:〇 ⇒ 食事、運動ばかりに目がいってしまいますが、睡眠も忘れてはいけません。
「寝ないと太る」は、徐々に常識となりつつあります。次のQ32で詳しく説明しますが、副腎皮質ステロイド(ステロイド)というホルモンは、その名の通りに副腎皮質で作られますが、気管支瑞息やアトピー性皮膚炎、ネフローゼ症候群などの腎臓病の治療薬でもあります。ステロイドの副作用にはいろいろありますが、肥満と精神症状というのが医学界の常識です。
ステロイドはストレスがかかったときに分泌されます。つまり、睡眠不足というストレスにさらされていると、1日のステロイドの分泌量が増えてしまうのです。そうすると、ステロイドの副作用が現れて太る。こういう仮説も成り立ちます。
Q34:不眠症対策に寝酒って効果がある?
A:× ⇒ お酒を飲むと、睡眠は浅くなります。お酒は楽しく飲んで、お酒に飲まれないように。
寝酒は睡眠全体を考えるとおすすめできません。
寝付きにはいいのですが、アルコールはからだの中で比較的早く分解・代謝されます。したがって、睡眠の途中でアルコール不足で落ち着かなくなってしまう状態、いわゆる「離脱症状」が出てしまうのです。その結果、深い睡眠が少なくなります。また、睡眠前半で抑制されていたレム睡眠が、夜明けにリバウンドして出現量が増加します。お酒を飲んだ次の朝、早く目覚めてしまうのは、そのためだと考えられます。
Q42:ワーク・ライフ・バランスと睡眠とは関係が深い?
A:〇 ⇒ 自分に適した睡眠時間を確保しないと、「ワーク」と「ライフ」とのバランスは取れません。
黒田准教授(東京大学社会科学研究所)は、男女問わず平日の業務のしわ寄せが、睡眠にきてしまっている。その結果、睡眠不足となり、日中のパフォーマンス機能の低下で能率を落としてしまっていると結論づけています。余暇時間に余裕がなく、集中力が低下すれば、多様な生き方どころではありません。パフォーマンス低下ですんでいるうちはいいのですが、慢性的な睡眠不足はうつ病やほかの生活習慣病のリスクを高めます。病気になってしまえば、経済的自立はおぼつかないで、しよう。
Q43:フラソスでは、政府が安眠推進行動計画を進めているってホント?
A:〇 ⇒ OECD調査でも、フランスが最も食事と睡眠に時間を使っていますも自分と家族のために時間を使うフランス、見習うところも多いと思います。
フランスでは、なんと政府が音頭を取って、睡眠研究の促進や睡眠に関する相談窓口の開設など、総合的な「安眠推進行動計画」を策定しているのです。<中略>ベルトラン保健連帯相のコメントがイカしています。「どうして昼寝しないんだ?それはタブーじゃないはず」。彼はさらなる科学的研究を求めていて、もしも業務中の仮眠が役に立つとわかれば、仮眠計画をプロモーションしていきたい、とも語っています。
※フランス・・・睡眠時間は8時間50分、食事の時間は135分程度、労働時間は週35時間
【感想など】
前回に引き続き、なぜか今回もお医者様から献本いただいた本の紹介。
テーマは脳と睡眠。
ワタクシ、脳本はかなり好きです。
特に勝負脳で有名な林成之先生や池谷裕二先生の本はよく紹介してきました。(意外に一番メジャーなもじゃもじゃ頭の先生の本は全然読んでないなぁ)
また、ビジネス書の中では昨年ベストセラーになった
のような早起きや短時間睡眠系の本は読んだことありますが、睡眠をメインテーマにした本は初めてでした。
というのも、ワタクシが睡眠で苦労した経験がないから。
ありがたいことに眠れないなんて経験がありません。いたって睡眠優良児!
そんなワタクシですから今まで“睡眠”に関して全く興味なかったのですが、本書を読んでまさに目からウロコ。
一応著者の伝えたいことは本書内から引用すると
●よく眠ることで、学んだことをしっかりと身につける
●よく眠ることで、こころも安定する
●よく眠ることで、からだも健康となり、人生も充実する
といったいたってシンプルなものですが、睡眠って侮れない問題だと本書を読んで気づきました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、睡眠は今の日本が抱える問題の根幹をなすのではないか?そしてあの問題も・・・。
まずしょっぱなの「日本が先進国の中で一番睡眠時間が短い」という現実。
これって、この国を覆っている閉塞感とか、ワーキングプアだとか、心の病や自殺者の増加といった負の面の大きな要因ではないのでしょうか。
時代が時代ですからね、ビジネス書の世界ではこういった若いビジネスパーソンが「このままでは危険だ」と感じて、数年前から仕事術や勉強術、はては脳科学本といったビジネス書ブームが巻き起こって個人スキルをアップすることでこの難しい時代を乗り切ろうというムーブメントが続いているわけですよね。
そんな中、本田直之さんや勝間和代さんといった方が時代の寵児となっていって、我々も影響受けて真似しているんですよね。
ところがうまくいかない。
中には疲れ切って精神科にお世話になる人も出てくる始末。
結果「勝間和代を目指さない」なんてフレーズが飛び出し、カツマー×カヤマーなんて論争が起きたり。
でもね、この本読んで大事なことに気がつきました。
それは、
睡眠時間をしっかり取って効率を上げたほうが、学習効率がいい。
学習した脳ほど、休息を必要とします。逆に十分に休息した脳ほど学習効果が増強さる。
すなわち
「よく学び、よく休む」(よく学び、深く寝る)ということ。
でね、思い出してほしいのですが、勝間さんも本田さんも睡眠や休息についてその重要性を伝えてくれてたじゃないですか。
例えば、
には、ノートPCやモバイル機器と並んで、
National エアロドリーム 快眠プログラムマット シングルサイズ ベージュ調 () パナソニック |
が掲載されていたの覚えていますか?
ワタクシも含めて“ゆとりのない世代”(四当五落って言葉ももう死語だなぁ)は良くも悪くも努力至上主義みたいなところがあって、勝間さんの本読むとすぐに、オーディオブック聞いたり、自転車乗ったり、フォトリーディング習ったり、ブログ書いたりと効率的なインプットとアウトプットに対する“努力”の面ばっかり注目してしまい、その努力を陰で支えている“休息・睡眠”の質の向上には努力しないんですよね。
本当はこの2つは車の両輪なんですよ。
そろそろやみくもに努力するのではなく、睡眠の質が起きている時間の活動の質につながるということに気がついて、“効率のよい睡眠”に注目するべき時なんじゃないでしょうか。
本書に
「人生の3分の1」は睡眠です。平均寿命で考えると、一生の間にだいたい25年間は寝ていることになります。
という一節があります。
すごいですよね。25年も寝てるんですよ。
そして、25年の睡眠の質が起きている50年の人生の質を決める。
いますぐ睡眠にも真剣に取り組みませんか。
そして、もうひとつ本書を読んで大きな衝撃を受けたのが日本とフランスとの比較。
睡眠が日本の経済活動や精神疾患の問題など、国民の豊かで健康な生活を守る上で重要なものであるならばフランスの様な施策をぜひ実行していっていただきたい。
国民はもう疲れ切っていますよ。
あくまでも本書は脳と睡眠の関係を述べた本ですが、この本の中に日本が現状を打破するために何が必要なのか、何をしなければならないのか、その答えの一つを見つけたような気がしました。
睡眠に関して不安を持っている方はもちろん、カツマーからカヤマーへの転向を余儀なくされている方、そして日本国の閣僚の皆様にも読んでいただきたい一冊。
脳本、早起き本の次は睡眠本が来るかも。
本書は東京医科歯科大学、西多昌規先生から献本していただきました。
ありがとうございました。
【追記】
本書の著者の西多昌規先生のブログで紹介していただきました。
しかし、Twitterが縁で、ichiryuuさんという売り出し中のアルファブロガーに献本させていただく機会に恵まれました。そして、好意的な書評をいただきました!
ワタクシ全然アルファーじゃないんですけど・・・、ありがとうございます。
Dr.西多昌規のブログ ichiryuuさんの書評
【関連書籍】
本書内で引用・紹介されている本から気になったものをいくつかピックアップ。
眠りと夢のメカニズム なぜ夢を見るのか? 睡眠中に脳が育つのか? (サイエンス・アイ新書)
- 作者:堀 忠雄
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2008/11/15
- メディア: 新書
Twitterでも書きましたが、あらためてありがとうございます。睡眠優良児も、年とともに「睡眠力」の衰えが出てくるかもしれないですよ。
西多 先生
コメントありがとうございます。
確かに睡眠力は落ちてるかも。
寝つきはあいかわらず抜群なんですが、朝は早起きになりました。
自然と早起きになるって睡眠力の老化ですよね。
先生がおっしゃるように、そろそろ睡眠グッズも良質なものにしないといけないのかもしれません。
http://twitter.com/a16misaki/status/7830948716
ひみつの学校 講師の予定の西田先生、実は #himitsu ですが・・ ここに書評が上がっています。
美崎 様
紹介ありがとうございます。
私の書評でも役に立てれば光栄です。
ワタクシもひみつのがっこう行きたーい!