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顧客にとって価値を生まないものをすべてムダとみなす【書評】上村敏彦(著)『「やり残しゼロ!」の仕事術60』(すばる舎)

 

「やり残しゼロ!」の仕事術60

「やり残しゼロ!」の仕事術60

  • 作者:上村敏彦
  • 出版社/メーカー: すばる舎
  • 発売日: 2009/10/20
  • メディア: 単行本
 

 

かわいい表紙だからと言って侮ってはいけない。
本書に書かれているのはビジネスの現場ですぐに武器として使える燻銀のテクニックばかり。
山椒の実のようにピリリと辛い、まさに使えるビジネス書です。

 

【目次】

Part1 “日々のピンチ”から解放される! 仕事がデキる人、5つの「やり残し防止法」
 No.01 よくある3つの「非常事態」
 No.02 「やり残し」発生のメカニズム     他

Part2 仕事を「スリム化」していこう いつでも予定が“ギッシリ”を解消
 No.04 「大きなムダ」は2つある
 No.05 一番のロス、「手戻り」をなくす方法   他

Part3 ダンドリでは、この“先読み”が効いてくる 「手帳」「日報」をこうして活用
 No.07 ダンドリとは何か?
 No.08 「日報」は朝書く     他

Part4 処理能力がグンと高まる“ムダゼロ!習慣” 大量の「業務&メール」を一気にさばく
 No.10 処理スピードがアップする行動習慣
 No.11 「相手の反応」を“瞬時”に引き出すメール術    他

Part5 この「報連相」で、毎日が快進撃! 悩む時間が激減し、リズムよく仕事がデキる
 No.15 なぜ「報連相」が大事なのか?
 No.16 「報連相」はココがポイント   他

Part6 成果の出方が“ガラッ”と変わる デキる人の“コミュニケーション術”
 No.18 「人間関係づくり」が突破口!
 No.19 まずは上司を巻き込もう   他

【ポイント&レバレッジメモ】
★よくある3つの「非常事態」
・抱え込み
・納期遅れ
・どんでん返し

★やり残し発生の主な原因
①ムダが多い
②段取りが悪い
③スピードが遅い
④コミュニケーションが足りない
⑤一人で仕事をしている

★やり残し防止「5つの原則」
原則①仕事をスリム化する
原則②段取りファースト
原則③処理能力をアップする
原則④報連相を重視する
原則⑤人間関係をつくる

★「スリム化」
◇2つの大きなムダ
 ・手戻り・・・「やり直し」「後戻り」
 ・よけいなこと・・・やってもやらなくても「結果に影響がない」こと

◇「手戻り」をなくすには ⇒ ①「出来上がりと手順をチェックリストにする」 ②一つの作業が終わったら「作業したプロセス」とは「別のプロセス」で確認(検算)する

◇すばやく、「やる、やらない」を的確に判断するためには、どんなケースにも適用できる、はっきりした判断基準が必要 ⇒ 「顧客にとって価値を生まないものをすべてムダとみなす」

★「仕事はダンドリ八分」
仕事は「間に合うか、合わないか」です。

私たちの仕事においてダンドリ不足は「やり残し」となって現れます。「やり残し」とは、言いかえれば「間に合っていない仕事」ということなのです。<中略>この「やり残し」はそのまま、仕事の失敗につながっていってしまいます。

ダンドリとは「シミュレーションすること」

 「一日の始まりから終わり、もしくはプロジェクトの開始から完了までをシミュレーションして、次に起こることに前もって準備しておくこと」です。

★「日報を朝書く」

 日報を朝、書いておくと、その日のイメージがありありとわいてきます。意識しなくてもシミュレーションできてしまうのです。さらに朝、書くことで、スタートダッシュがきくようになります。

◇日報に盛り込む「3つの要素」
①今日、なされるべきことは何か
②それぞれの仕事にどれぐらいの時間が必要か
③その日、業務終了時にどんな気分でいたいのか

◇(仕事にかかる)時間は直接、見積もることはできません。見積もることができるのは、その「量」です。

◇仕事の進行とリアルタイムに、状況や気づきを書き足していく ⇒ 業務終了時には提出用に日報が仕上がっている

★「時間ログ」をつける
◇時間ログをつけるだけで、仕事がはやくなる理由
・いまから何をするかを記録することで、ひとつのことに集中しやすくなる
・時間が流れていることに意識的になる
・人は必ず記録を伸ばそうとする

★「なぜやるのか」を確認する

 「なぜ」は処理スピードに直結します。なぜなら、目的は手段を規定するからです。目的がはっきりすれば、どのように実現すればよいかも、具体的にイメージができてきます。

★仕事メール“5つのルール”
①読み手に「伝わる表現」にする
②一メール、-要件を徹底する
③タイトルには「結論」を書く
④「リード→結論→背景→結論」の順番で書く
⑤添付ファイルの情報も書く

5つのルールすべてに共通することは、「相手の立場に立つ」ということ

★「報連相」  上司は「ブラックボックス」を嫌う
◇上司にとって、一番やりにくい部下とは、「状況」と「感情」が見えない部下

上司を不安にさせている時点で、部下失格です。

デキる上司ほど、自ら尋ねずに、部下からの報告を待ちます。そうやって、部下の自主性を重んじるとともに、部下の力量、成長を測っているのです。
「あれ、どうなってる?」
こう尋ねられたら負けだと認識しなければなりません。

◇報告すべき3つのポイント
①事実 ②情勢判断 ③意見具申

報告を受ける立場からすると、もっとも聞きたいのに、もっとも忘れられやすいのが「③意見具申」です。

◇報告は何かあったときにするのはふつうです。しかし、仕事がデキる人は、何もないときにも報告をしています。「変化なし」という報告をするのです。

「事前なら相談、直前なら謝罪、事後ならクレーム」・・・報告のタイミングは、残されている時間があればあるほど、打てる手が多くあるのです。

★「人間関係をつくる」
成果とは、人間関係の上に成り立っているということなのです。

◇上司とうまく関係を構築するには ⇒ それは上司を、最も近くにいる顧客の一人だと考えることです。

どれだけ上司を使っても、
「ありがとうございます。助かりました」
「勉強になりました」
部下はお礼を言うだけでいいのです。使い放題です。使わない手はありません。

【感想など】
本書は著者から献本していただいたのですが、本に手書きの手紙が添えられていました。
(著者の手書きの手紙ははじめてかも。すごく嬉しかったから手帳に貼りつけてます。)

そこには

昨今流通する多くのビジネス書は素晴らしいものも多く、私も勉強させていただいていますが、それらの内容を実践するためには、もう1Step途中に必要だと思います。
その1Stepが成果を出すための泥臭い方法論ではないかというのが本書の問題提起です。

と書かれてありました。

たしかにビジネス書は学ぶところが多いのですが、いざ書かれていることを実践しようとすると
「はて、どうしたらいいの?」という場面も多いですよね。

考えてみれば、ビジネス書の著者は自分のうまくいった経験を元ネタに本を書きます。
でも世の中に職種は色々あるし、働いてる人もお客さまも全く同じなんてあるはずがない。

で、著者は広く読者に賛同してもらい共感してもらえる内容にするめに、書いているうちに最大公約数的な原理原則だけが残ってしまう。

その時、「結果」に至る「プロセス」“ほんのちょっとしたことだけど大切な部分”が抜け落ちてしまうことになります。

そしてワタクシたち読者は「結果」だけ見せられて、「おお!そうだったのか、目からうろこ」って感じでさっそく自分でもやってみようとするのですが、プロセスでつまずいて「どないしたらいいの?」となってしまう。

例えば、勝間和代さんが大ブレークして以来、フレームワークとかロジカルシンキングとかがもてはやされるようになって、「こんな方法があったんだ」と飛びついてみたもののうまくいかない。

そういう人多いんじゃないでしょうか。

本書で著者がロジカルシンキングについてこんな風に書いています。

ロジカルシンキングは、「考える力」を練る訓練にはとてもよいものです。しかし、ロジックをそのまま現実世界にあてはめようとすると失敗します。自戒をこめて言えるのは、現実世界はロジックでは動いていない、ということです。
ご存じのように、私たちは感情の生き物です。いくら理論的に正しい主張をしても、相手が感情面でノーであれば、決して動いてくれません。
人間の感情の動き、人情の機微を知らなければ、ビジネスの世界で成果を出すことはとてもできないのです。

ビジネス書で紹介されているテクニックってあくまでも“型”なんですよね。
だから、実際のビジネスの現場で役立てるためには、自分自身の仕事の仕方を変えるのはもちろん、周囲の人(上司、同僚、お客様)とのコミュニケーションの取り方も気をつけなければならない。

それは特別難しいことではない。
著者が“泥臭い方法論”と表現したように、むしろ誰にでもできるほんのちょっとした気遣いであったりアイデアであったりします。

本書はまさにその“泥臭い方法論”=“ちょっとしたことだけど大切なこと”にスポットを当てたビジネス書といえます。

しかし侮ってはいけません。
ワタクシもたくさん気づきをいただきましたが、そのうちの一つを御紹介。

例えば本書の主題である「やり残しゼロ!」を実現するには、
抱え込みを減らし、仕事をスリム化する
必要があります。

これ、最近はやりですよね。
例えばビジネスの現場で仕事を断るといえばコチラ

 

 

断る力 (文春新書)

断る力 (文春新書)

  • 作者:勝間 和代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02/19
  • メディア: 新書
 

 

www.s-ichiryuu.com

 

あるいは、生活全般でも無駄を減らすといえばコチラ、

 

 

減らす技術 The Power of LESS

減らす技術 The Power of LESS

  • 作者:レオ・バボータ
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2009/08/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

www.s-ichiryuu.com

 

の本がベストセラーになったりしてます。

ワタクシは実は“断れない”タイプで、気がつくと“抱え込んで”います。

そんな場合、「代替手段」を探す=「人に頼む」ことを考えるのですが、頼む人にポイントや求める結果を説明したりするのが面倒で、「ええい、やっぱり自分でやった方が速いや」と考えなおして結局最後まで抱え込んでしまう。

ところがこの1文で目が覚めました。

その目的を満たすために、「ほかに方法はないか」を考えます。ポイントは、ほかの方法が「“より良い方法″でなくても構わない」ということです。実はより良い方法を考え出そうとすると、思考が限定されてしまいます。

そう、100%自分が求めている出来“よりよい方法”でなくてもいいんですよ。
多少説明に時間がかかっても出来が満足できなくても結果が基準を満たしてさえいれば、人に任せた作業の間は自分は解放されるのだから。

この考えを知ったことでワタクシの仕事は減りそうですよ。

そして、あたりまえのことでありながら再確認できてよかったのは、
信念の部分で、「顧客への貢献」「会社の利益」「自分の成長」に焦点を置いていれば、軸がぶれることはないということ。

本当に大切なのは、仕事の結果に自分が満足する事ではなく、
「どうすれば顧客に貢献し、会社に成果を残せるか」だということ。

本当に、本当に大切なことなのでもう一度胸に刻みたいと思いました。

この他、

タスクは

 具体的でないものは、必ず後回しにされます。実行できるアクションになっていなければ、取り組みようがないからです。

とか、
相手に伝わるメールを書くには

 「おかんにメールするつもりで書いてみよう」

会議の参加者は

参加者を必要かつ、十分な人に限定する

などなど、“泥臭い方法論”=“ちょっとしたことだけど大切なこと”が満載の本書。

仕事が毎日片付かない人はもちろん、たくさんビジネス書を読んだけど今ひとつうまくいかないという人にもお勧めです。

 

「やり残しゼロ!」の仕事術60

「やり残しゼロ!」の仕事術60

  • 作者:上村敏彦
  • 出版社/メーカー: すばる舎
  • 発売日: 2009/10/20
  • メディア: 単行本
 

 

著者の上村敏彦様から献本していただきました。ありがとうございました。

2 COMMENTS

一龍

上村敏彦 様
こちらこそよい本を読ませていただきありがとうございます。
ワタクシのつたない文章で本書のの良さが伝わるかどうか心配しております。
内容はもちろんですが、上村様の表現力に感心してしまいました。
[斜体]「おかんにメールするつもりで書いてみよう」[/斜体]
これは名言であり明言ですね。
メールのポイントがこの一文で伝わります。
脱帽です。
ワタクシもまだまだ修行しなければ!
今後ともよろしくお願いします。

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