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宿命に生きるか、運命にあらがうか、51人51通りの人生【本の紹介】塚本青史『サテライト三国志』日経BP社

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おはようございます、一龍です。

今日はいつものビジネス書とは違って『三国志』をご紹介します。 

「なんで今更三国志?」と思われるかもしれませんが、この本、ちょっとかわった三国志なんですよ。

 

はじめに

 

『三国志』といえば、これまで数多くの作家が作品化し、映画やドラマにもなった名作。

実際には黄巾の乱から呉の滅亡まで、約100年ほどの短い期間でしかありません。

ですが、その短い期間にキラ星のごとく英傑が登場し覇権を競う一大スペクタクルで、千数百年経った今でも読む者を魅了して止みません。

今回ご紹介する『サテライト三国志』は、もともとは日経ビジネスオンラインで連載されていたものです。

ただ、この三国志はちょっとかわっていて、曹操や劉備、関羽、張飛、孔明、そして孫権といった本来の主役達ではなく、脇役である51人にスポットを当てて、物語が進んでいきます。

すでに三国志を読んだ事がある方も、新たな発見が沢山あると思いますよ。

本書の楽しみ方や感想など

脇役たちの人生ドラマ

三国志には1200名ほどの登場人物がいるというのを聞いたことがあります(定かではありません)。

その中で本書に登場するのはこの人たち(Amazonより)。

【上巻】
●登場人物
張角(ちょうかく)太平道の教祖
何進(かしん)黄巾の乱の際の大将軍
孫堅(そんけん)孫策、孫権の父
董卓(とうたく)後漢朝滅亡の原因をつくった涼州の軍閥
貂蝉(ちょうせん)中国四大美人のひとり
蔡邑(さいよう)後漢を代表する学者・文人
劉虞(りゅうぐ)後漢の皇族。袁紹らが皇帝に擁立を図った
陶謙(とうけん)後漢末の群雄のひとりで、反董卓軍に参加
李催(りかく)董卓の武将。呂布を破って都を制圧
張済(ちょうさい)董卓配下の家臣
鄒娜(すうだ)董卓の部将だった張済の妻
陳宮(ちんきゅう)曹操陣営から呂布の参謀役に転じた部将
公孫さん(こうそんさん)精鋭騎兵隊「白馬義従」で知られた遼東の軍閥
袁術(えんじゅつ)袁紹のいとこで、宦官大虐殺を実行
于吉(うきつ)幅広い信者を集めた道士。孫策に殺される
袁紹(えんしょう)反董卓軍の盟主。官渡の戦いで曹操に敗れる
華佗(かた)麻酔を使った外科手術が得意な天才医師。曹操に殺される
橋姉妹(きょうしまい)絶世の美女姉妹。孫策と周喩の捕虜となった
周喩(しゅうゆ)孫権を支えた呉の策士
荀いく(じゅんいく)袁紹から曹操陣営に転じた謀将
蔡えん(さいえん)蔡邑の娘。匈奴に連れ去られ、子をもうけた
魯粛(ろしゅく)孫権の右腕。劉備との提携を策す
黄忠(こうちゅう)関羽に降服、劉備の配下になった老将
呂蒙(りょもう)関羽を破って処刑した呉の名将
甄后(しんごう)袁煕の妻だったが、曹丕が略奪して、正室に

【下巻】
●登珊人物
張遼(ちょうりょう)赤璧の戦いで曹操の危機を救った猛将
于禁(うきん)魏の五虎将のひとり
孫尚香(そんしょうこう)孫権の妹。政略結婚で劉備に嫁ぐ
賈く(かく)張繍の参謀として曹操に帰順。魏の軍師として活躍
孟獲(もうかく)南征した諸葛亮に心服し、帰順する軍閥
馬謖(ばしょく)諸葛亮に重用されるが、北伐で軍令違反を犯し、斬首
鍾よう(しょうよう)魏建国の功臣
献帝(けんてい)(劉協)(りゅうきょう)後漢最後の皇帝
公孫淵(こうそんえん)遼東で燕王と称したが、魏の司馬懿に滅ぼされた
張昭(ちょうしょう)孫権の幕僚として活躍
陸遜(りくそん)呉の名将。夷陵の戦いで劉備軍を破る
蒋えん(しょうえん)諸葛亮の遺言で国政の全権を委ねられる
曹爽(そうそう)司馬弛と争い、反撃に遭つて一族皆殺しとなる
費い(ひい)諸葛亮に後事を託される
諸葛恪(しょかつかく)孫権に仕え、ニ官事件では息子を毒殺
かん丘倹(かんきゅうけん)魏の武将。司馬師に反乱を起こすが、失敗する
諸葛誕(しょかつたん)魏の武将。司馬昭の専横に反乱を起こす
鄧がい
(とうがい)蜀攻撃で成都に人城を果たすが、讒言されて殺される
姜維(きょうい)魏から蜀に投降し、五丈原の撤退では殿軍をつとめた
鐘会(しょうかい)司馬師、司馬昭に仕え、蜀攻撃に参加
司馬昭(しばしょう)兄の司馬師を継いで軍権を握る。蜀を平定、晋王に
陸抗(りくこう)呉の重臣。魏、晋との戦いに注力した
劉禅(りゅうぜん)蜀の二代皇帝。魏に降服後、安楽公となる
孫皓(そんこう)呉の最後の皇帝で、暴君として知られる
司馬炎(しばえん)晋の初代皇帝。司馬昭の長子

全部で50章、橋姉妹を2人に数えるので51名となります。

これら51人は、本来の三国志での登場頻度はまちまちですが、どの人物も主役や準主役級の登場人物に絡んで、たとえちょい役でも物語にぴりりと辛いスパイスとなる人や、男たちの物語世界で、一輪の花を添える美女たちです。

ちなみに私は三国志に登場するキャラクターでは趙雲子龍のファン。
しかし、準主役級なので本書ではチラッとしか登場しないのはちょっと残念。

ただ、同じく準主役級といっていい周瑜(この方も私が好きな方。頭が良くて奥さん美人ですからね)は登場しますし、「えっ、こんな人いたっけ?」といった方もいますので、人選の妙を感じると思います。

それと同時に、本書を読んでいてまず感じるのは、大きな時代のうねりの中で複雑に絡み合う51人もの人生を一気に読み進めるというのはなかなかない経験だということ。

たとえ脇役であったとしても、そこには登場人物の数だけ人間ドラマがあります。
それをスライドショーのように次々と読みすすめる本というのは、これまで経験した事がない感覚でした。

宿命、運命、運、不運・・・

「禍福は糾える縄の如し」と言われますが、その縄一本が一人の人生だとしたら、その縄を縦糸緯糸にして編まれた織物が歴史となります。

まさに様々な”縦糸緯糸”が登場する本書ですが、これだけ多くの人々の人生を次々とみせられると、考えてしまうのは宿命とか運命とか運、不運といったものでした。

私は成功哲学が好きで、運命は変えられると思っているし、自分の行いはそのまま自分に因果応報で帰ってくると信じています。

けれど、本書には人を騙し、利を貪り、策に溺れ自滅するやからが数多く登場するものの、だからといって律儀で自分の矜持に生きてみても天寿をまっとうできるわけではないという例が同時に登場します。

そこにはどうしても人力では乗り越えられない何か宿命のようなものが感じられてなりません。
どう生きるべきなのか?その答えがないのが乱世なのかもしれません。

そういう意味で特に印象的だったのがこの二人。

献帝と劉禅でした。

献帝は後漢最後の皇帝で曹丕に皇帝の座を禅譲した人。
即位した時にはすでに漢帝国の皇帝には国を治める実力はなく、位を奪われるのは時間の問題という状況で、ただただ台頭しては消えてゆく英傑たちに利用されるだけの存在。

しかしこの人は皇帝の座を禅譲したあとも、わずかな領地をあてがわれてそこで天寿を全うします。

どうしようもない宿命の中で、ただただそれに従って生きるしかなかった人生出会ったにもかかわらず、覇を争った曹操や劉備たち、自分が位を譲った曹丕の死をみながら歴史の中で静かに生きていったその人生とはいったいなんだったのでしょう。

もう一人の劉禅は、三国志の主役劉備の息子で蜀の皇帝。
あの趙雲が荊州から撤退の混乱の中で命をかけて救い出した阿斗です。

父劉備や孔明たちの志を間近で見て育っているはずですが、残念ながら暗愚な皇帝で、魏が攻めてくるとさっさと降伏してしまいます。

この人も洛陽で天寿を全うしますが、宛てがわれた屋敷で、姫妾たちに囲まれて安穏に余生を過ごしています。

本当に人生は人それぞれです。
自己啓発書では目標を持って生きる事を推奨していますが、それが本当に幸せな人生なのかわからなくなります。

おそらく、本人が納得すればそれでいいのかなと。

宿命を背負って、運命や時代にあらがって生きるのもよし、流れのままに流されて生きていくのもよし、結局答えはないのかもしれません。

そんなことを51人の人生を読みながら思ってしまいました。

大人の教養として

さて、歴史小説の楽しみ方といえば大人の教養を得る事ができるというのも大きな魅力。

とくに日本は古代中国の文化に影響を受けた文明圏にありますので、東洋の歴史小説は「ああ、そういうことだったのか」といった発見が多々あります。

三国志の時代だけでも、「三顧の礼」とか「泣いて馬謖を斬る」、「水魚の交わり」などなど数多くのことわざが登場します。

また、中国の伝統的な価値観である「禅譲」も当然登場。

 禅譲とは、皇帝が位を降りるとき、嗣ぐ者を血統に拠らず、人格優秀な者を見込んで譲ることをいう。
 古代の聖帝と言われる堯は舜に、そして舜は禹への禅譲で、自分の子供でない第三者に皇位を譲った。それゆえに、これが理想的な皇位継承とされる。

これに対し、力によって取って代わる事を、天帝からの命が革まるという意で「革命」と言う。

 天帝が、地上を治めるべき立派な血統を伝えられる者にするよう、命を革めるというわけだ。

特に革命という言葉は今でも使われますよね。

さらに、

 ただ、古来から中国では商行為を卑しんでいた。儒教では、生産性のない商行為は、農業や工業の下とみなされた。我が国でもその影響を受け、江戸時代の身分制度ができたのだ。

という一節から、「だから士農工商の順番なのか!」と初めて知ったりと、歴史小説の楽しさは現代の我々の教養を補完してくれる発見があるところでしょう。

ちなみに、関羽が商売の神様でもあるというのも初めて知りました。
学問の神様というのは有名ですが・・・。

本書を読まれる前に

本書は、本書のみを読んでも三国時代の流れが理解できるように上手く構成されています。

が、51人の脇役の人生を綴っていますので、どうしてもパズルのピースを埋めていく感じがあり、三国志を全く読んだ事がない人にはちょっと理解しにくいと思います。

そこで、まずは三国志を読まれる事をオススメします。

私のオススメは、高校生の時に夢中になって読んだ吉川英治さんの三国志です。

文庫本で8巻の大作ですが、実は吉川さんの著作権が昨年切れまして、なんとKindleだとタダで読めます。

一冊ずつダウンロードするのは面倒くさいという方には有料ですが全巻まとまったものもあります。

どちらにしても、こんな面白い本がただ、もしくは格安で読めるなんて、いい時代になったものだ。

ということで、三国志を読まれたら必ずその世界に引込まれます。

そして、「もっと知りたい」という欲求がわいてくるはず。

そのとき本書はあなたの三国志熱をさらに熱く、知識を補完してくれるはずです。

ぜひ脇役たちの51通りの人生にも熱い視線をあてて下さい。

 

本書は日経BP社、東城様より献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

上巻
第1部 黄巾の乱から汜水関&長安遷都
第2部 長安の興亡から官渡&赤壁の戦い

下巻
第3部 三国分裂から五丈原の戦い
第4部 司馬氏の台頭から晋の統一へ

関連書籍

私は読んでいないのですが、最近は「北方さんの三国志がファースト三国志でした」という方によく出会います。

ということで、おすすめしておきます。

そして、なんといっても映画ならこちら

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