おはようございます、一龍です。
人生は思い通りにならないもの。誰にだって、何をしてもうまくいかない逆境のときはあります。しかし、その逆境を乗り越えていく人と逆境に潰されてしまう2種類の人が世の中には存在します。
その違いはどこにあるのでしょうか?
今日は、アル・シーバート(著)『逆境を生かす人 逆境に負ける人』から、ストレスを味方にするポイントをピックアップしてみました。
ストレスを味方にするポイント
★ストレスも自分しだいで軽くできる
私たちは、人生のなかで逆境に遭遇すると強いストレスを感じます。
ではこのストレスとは一体何か。
まずはここからスタートします。
ストレスの研究で有名なハンス・セリエ教授が、晩年、自分の研究についての誤りを謝罪したことがあります。セリエは自伝に、ストレス(stress)という言葉は誤りで、ストレイン(strain)と呼ぶべきだったとしているのだ。
これはどういうことかというと、
正確な語義からすると、ストレスとは外部から私たちの体や心にかけられる圧力のことだ。そしてストレインが、その圧力に対する私たちの反応ということになる。問題なのは、その圧力の客観的な大きさではなくて、それにいかに耐えることができるかという私たちの許容力のほうなのだ。
この外部からの圧力と、それに対する反応をも含めて私たちはストレスと呼んでいますが、この2つは別々に認識する必要があるというのです。
なぜならば、
圧力(ストレス)のほうを問題にすると、いつもその矛先は自分以外の者に向けられてしまう。職場の環境が悪いから気持ちがすぐれない、というように。
その環境をどうとらえるかというのはあなたの個人的な問題でしかない。そうとらえ直すことで、あなたの弾力性は高まっていく。
プレッシャーのかかる職場にいても、そのプレッシャーに対応していくか、あるいは被害者モードに入るか、どちらもあなたが選択できるのだ。
あくまでも、圧力は起こっている外部事象であって、それに対する自分の反応(ストレイン)は別であると。
そして、現実に私たちにできるのは圧力をなくすのではなく、ストレスに対するストレインを操作することしかないと認識するのです。
★自分の感情をリストにしてみる
著者はまず、次のような3つのリストを作ることをすすめています。
リスト1 なにが大変なんだろう?
自分をいらだたせるもの、悩ませるものを6つか7つリストアップしてみよう。
・どんなプレッシャーを感じているのだろう?
・具体的にはなにが難しいのだろう?
・自分を苦しめているのはなんなのだろう?
自分にとって圧力となるものを書き出すのです。
これによって、自分を苦しめているものがはっきりすると
多くの人が、ストレスはまぼろしで、問題なのはその人がそれをどう受け止めるかだということを理解するにしたがって、気持ちも楽になっていく。
人生で出くわす出来事にどう対処するかの責任は誰にあるか?
それを突き詰めることによって、人は、他の物事や人に責任転嫁するのをやめ、自分自身の問題として考えはじめるようになる。
実際に起きていることは単なる事象であって、中にはそれによる杞憂によるストレインで苦しんでいるものもあることに気がつくと思います。
リスト2 私はこう感じている
次のステップは、リスト1で挙げた問題についてどう感じるかを書き出すことだ。
この”書き出す”作業は心の弾性を高めることに有効です。
人に話してもいい。困ったときに、他人に自分の感情をうまく伝えられるというのは、心の弾力性を高めるためにとても大事なことだ。
話せばその苦い思いがなくなる、というわけではない。でも、その思いを否定していては次のステップに進めないのだ。 弾力性のある人は自分の苦い思いをまず受け入れ、その上でポジティブで建設的な気持ちを取り戻そうとする。
愚痴を言うとすっきりしますよね。
それと同じです。
著者も
「感情の吐き出し」は、自分の人生の土台をしっかりと築き上げるためのメンテナンスのようなものだ
と言っています。
さて、吐き出してしまったところで最後のリスト。
リスト3 自分を元気にしてくれること
最後に、今度は自分を元気にしてくれることもリストアップしておこう。どんなことをしているときに一番自分らしく、気持ちがいいだろうか?
自分がどういう時に幸せを感じるか、充実しているかをはっきりと知っていることも重要です。
★問題に向きあえば乗り越えることができる
上記のリストができたとして、あなたは自分にとってマイナスなことのリストが2つとプラスになることリストが1つできたわけです。
あなたはマイナスを減らし、同時にプラスを増やすように行動していきましょう。
サルバトーレ・マディは、すさまじいリストラの最中にあった会社の社員450人を対象に12年にわたり研究した結果次のような興味深い結果を見出しました。
450人のうち、実に3分の2はストレス関連の病気の徴候が見られました。
しかし、残りの3分の1の人たちはそういった徴候が見られないどころか、彼らは以前と同じように健康で幸せな生活を維持していたのです。
この3分の1の人たちをマディは「ハーディな(強靭な)」人たちと呼びましたが、ハーディな人たちには3つの特徴がありました。
(1) 自分の置かれた立場での最善を尽くすというコミットメントがあり、他人も助けようという気持ちが強い。
(2) 自分には、いい結果を導くための力があると信じている。このことが彼らに物事や他人に対するコントロール感覚を与えている。
(3) 難しい問題を進んで解いていこうというチャレンジ精神がある。
つまり、問題に前向きに向き合える人たちだったのです。
★健康な人の10の特徴
ハーディの研究対象の3分の2はストレス関連の病気の徴候が見られたといいますが、では逆にどんな人が病気を発症しにくいのでしょう。
以下に病気を発症しにくい、健康な人の10の特徴を挙げておきます。
(1) ルーティンワークもあまり苦にならない。
(2) 人生をコントロールしているという感覚があり、必要な時に必要な対応ができる。
(3) 多くの選択肢のなかから適切な行動を起こす。
(4) 人間関係がうまくいっている。
(5) 感情を抑制することなく、それを認め、表すことができる。
(6) 問題なのは他人の言動ではなく、それに対する自分の反応だと思っている。
(7) 変化に進んで対応する。
(8) よい習慣を持つ。
(9) 悪いことが起こってもそこから教訓を学びとれる。
(10) ポジティブであり、すべてを楽しもうという気持ちがある。
自分には足りない部分がわかったでしょうか。
それがわかれば、その部分を高めていけばいいのです。
いずれにしても、心のあり方や考え方が健康の度合いを左右するということです。
★プレッシャーにつぶされないための8つの方法
ある程度のストレインは健全なライフスタイルのために必要だとされています。
しかし、同じストレスでもある人はつぶれ、ある人は乗り越えていきます。
では、圧力に潰されないためにはどうしたらいいのでしょうか。
本書ではプレッシャーに潰されないために次の8つの方法があげられています。
(1) 気分と体調に気をつけよう。楽で、簡単で、あなたらしい方法でライフスタイルを向上させ、それを維持するようにしよう。
(2)起きたことに対して、どう反応するかは自分にかかっている。心のハンドルをしっかりと握ろう。
(3)ストレスについてのデマにまどわされないように。ストレスは抽象的な物事の見方にすぎない。自分が物事をどうとらえ、どう感じるかが大事だということを忘れてはいけない。
(4)どんなことがあなたの感情の高ぶりの引き金になるになるのだろう? それに対してリラックスして、楽しんでしまう自分を想像しよう。
(5)心の中で、自分がとりたいと思う反応と対応をリハーサルしてみよう。どう感じるだろうか?
(6) この次に困難な状況に陥ったときには、どんなポジティブな対応が自分にはできるか、それを楽しみにして待つこと。
(7) いままでにもそんなプレッシャーを楽しんだ自分はいなかっただろうか? それを思い出してみよう。
(8) 一日の終わりに自分が物事にどう対処してきたか振り返ってみよう。よくできていたら、自分をほめてあげよう。
感想
目次をみてもらうとわかるのですが、本書は
ストレスを味方にする
↓
問題解決のスキルを学ぶ
↓
柔軟な考え方を身につける
↓
逆境を成長のチャンスにする
の4つのステップで逆境を成長のチャンスにするスキルを学べく構成になっています。
今回は最初のステップの「ストレスを味方にする」方法をピックアップしました。
本書では耐え難い逆境に遭遇しても、それを乗り越えて、しかも成長する人たちの例が沢山登場します。
著者が言うように、また、多くの研究成果からもわかるように、人間には同じような逆境に出合っても、そのまま潰れる人と、逆境を乗り越え成長する人との2種類のタイプの人がいます。
どうしてこのような違いかあるのか不思議であり、興味も持っていました。
この、ふたつの違いの鍵となるのがレジリエンシー(resiliency)、つまり心の「弾力性」だと著者はいいます。
そして、この心の弾力性はトレーニング次第で身につけることができるとしています。
文字通り「心が折れる」とはよく言ったもので、弾力を身につけることで外部からの圧力や衝撃をしなやかに吸収したりいなしたりする心の弾力性を身につけ、決して折れることのない心を持つ。
そのための最初のステップが今回紹介したストレスを味方にする方法です。
そして見えてくのがこの3つの姿勢
(1)問題と向き合う
↓
(2)解決のために前進する
↓
(3)その過程を楽しむ
「自分の人生に責任を負う」姿勢と覚悟がなければ、ストレスに潰されるのです。
ストレスとは単なる事象。
心の持ち方次第で、ストレスにもなるし、自分を成長させてくれる糧ともなるということを深く理解しておきたいですね。
さて、ここで正直に告白すると、僕はちょっと混乱しました。
実は先日紹介したこちらの本
紹介記事はこちら
この本を読んだあとに続けて本書を読んだのです。
僕は『下流中年』の紹介記事のなかで、失われた20年の間の就職難のような、自己責任ではどうしようもないことは政府が対策を取るべきだといいました。
それは政府の仕事として、当然やるべきことだと思っています。
しかし、それはそれとして、逆境を糧として成長する方法はあったんじゃないかと思うようになってしまったのです。
就職できなかった人たちに、「やっぱりあなた達は、まだまだ自分でやれることがあるんだよ」というのは酷なことでしょうか?
ホリエモンみたいに「起業しろ」とはいいませんが、自分を雇ってくれない会社に、あるいは勤め人というスタイルに拘る必要はないんじゃないかと。
「自分の人生に責任を負うのか誰か?」
政府でも会社の人事課でもありませんよね。
まず、自分を苦しめている圧力とは何か、面と向き合ってはっきりさせてみてください。
そうすることで、活路が開けてくると思います。
是非本書を参考に。
本書はDiscover21社様から献本していただきました。
ありがとうございました。
目次
プロローグ 心に弾力性のある人がうまくいく
STEP1 ストレスを味方にする
STEP2 問題解決のスキルを学ぶ
STEP3 柔軟な考え方を身につける
STEP4 逆境を成長のチャンスにする
関連書籍
本書でも紹介されていた『夜と霧』、著者はアウシュヴィッツ収容所という極限の環境下でも精神の自由を失わずに運命と立ち向かいます。
逆境と向き合う上でぜひ読んでみてほしい本です。