ビジネス書を中心に紹介している当ブログでは文芸書の紹介はあまりしないのですが 、ぜひ紹介しい本と出会ったのでこのエントリーを書くことにしました。
その本は、 『ドラッグカラーの空』 といいます。
統合失調症について、多くの人に知ってほしい
Amazonから内容紹介を引用
「坊主頭が鉛のように重い」。統合失調症を患った伊知郎は、デイケア施設で無為に過ぎていく時間に絶望していた。そんなとき、社会復帰への希望として、障害者技能競技大会、通称「アビリンピック」の存在を知る。病気を馬鹿にする弟の弐郎や父に、「お前のような奴が大会に出ても意味が無い」と罵倒されながらも、すがるような思いでプログラミングを学び、地区大会へ出場する。この日を境に、伊知郎の人生は前進するはずだったのだが…。統合失調症の著者が体験を元に書き下ろす、家族と人生の再生の物語。
昨今、多くの職場で心の不調をうったえる人が増えたため、ようやく心の病に関して理解が広がってきた感があります。
特に鬱に対しては、真剣に対策に乗り出している企業も多く見受けられます。
ADHDやアスペルガーという言葉もよく聞かれるようになりました。
しかし、精神疾患に対する世間一般の理解はまだまだですし、誤解や偏見も多いのが現実です。
なかでも統合失調症という病気は、理解があまり進んでいない病気だとおもいます。
僕はたまたま職場でこの病気の人と接する機会があったので、本書を読みながら「そうそう、あの人とまったく同じだ」と思ったものです。
その経験があったから、どんな症状の病気か知ることができましたが、何の知識もなく、統合失調症の患者さんと接するとおそらく驚くと思います。
見た目は普通の元気な人と変わりません(だから余計に驚いたり、誤解するのですが)。
しかし、調子が悪いと幻聴が聞こえ、しかも自分を攻めるような言葉が聞こえたりします。
僕の職場にいた人に幻聴はどんな言葉が聞こえるのかとたずねたら、自分の悪口がずっと聞こえると答えていました。
また調子のいい安定している時でも、薬の副作用で極端に無気力になったりします。
先出の僕の職場の方は、会話はできるもののソファから起き上がるのがやっとという感じでした。
仕事ができないわけではなかったのですが、長時間はきついので休憩を多めに取ります。
そうすると、病気のことを知らない人から見ると、サボっているように見えるわけです。
しかし本書でも登場しますが、本当に薬の副作用で動けないのです。
本書中にアルバイトに就いたものの、病気にお構いなく仕事を強要され体調が悪くなるシーンが登場しますが、病気への理解がないとまず就労は無理でしょう。
本書は本来、病気そのものを描いたものではなく、家族と人生の再生についての物語です。
ただ、そのストーリー性も素晴らしいのですが、統合失調症の症状について非常にわかりやすい作品となっています。(もちろん統合失調症の病状は個人差がとても大きいですが)
これから先、障がい者の雇用は増えていくでしょう。
この病気への理解の第一歩として、ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思い、簡単ですが紹介させていただきました。
本書はDiscover21社様から献本していただきました。
ありがとうございました。
蛇足ながら
本書中にアビリンピック大会会場において、特別支援学校の生徒が登場するシーンがあります。
ここで、この高校生の障がいについて
特別支援学校で精神の障害なわけないから、知的面なのだろうか。
という記述がありますが、特別支援学校(おもに病弱)は精神疾患の生徒を受け入れています。
現に私がそういう学校で勤めておりましたので。
おそらく著者が知らなかったのでしょう。
蛇足ながら追記しておきます。