おはようございます!
今日ご紹介する本は
小川 仁志 (著)『世界のエリートが教養として身につける「哲学用語」事典』SBクリエイティブ
です。
いやぁ、この本、僕が高校教師してたときに出してほしかった。
そしたら絶対授業に役立てたのに。
悔しがってもしょうがないけど、この本社会人なら一冊手元に置いておきたい本ですね。
早速紹介していきます。
小川 仁志 (著)『世界のエリートが教養として身につける「哲学用語」事典』:特徴紹介
★哲学用語をやさしく解説
本書の特徴を紹介していきます。
後に記載している「目次」を見ていただくとわかると思いますが、まず本書は「考えるためのツール30」「世界を知るためのツール20」「未来を読むためのツール30」「人を動かすためのツール20」の4パート、計100の哲学用語を解説してくれています。
著者は哲学が「実社会で使えるツール」だという立場から”ツール”と呼んでいるようです。
さて、100の哲学用語ですが、本書では1つの用語に付き見開きで簡潔に解説。
▲例えば「イデア」を例に紹介しますが、上のような基本構成。
▲「イデア」の右側にネイティブでの言語表記。この場合は(ギ)はギリシアのこと。
そして僕が注目したのは「超訳」。
イデアを「理想像」とスパーンと一言で超訳していますね、これわかりやすくて非常に上手い!
なかなかこういう訳はできないですよ
▲右ページ下にはその哲学用語を使った人、主張した人の簡単な説明。
▲そして、左のページ下には「哲学を武器にするためのヒント」と題して、その哲学用語、考え方を現実社会でどう使うかの提案がなされています。
基本的に説明は文章なのですが、
▲哲学用語によっては適宜イラストで説明されています。
例えば演繹法・帰納法の説明とかはイラスで対比して説明したほうがわかりやすいですよね。
★目次も索引もあって調べやすい
▲目次では100の哲学用語がズラッと並んでいて、さらにはそれを主張した哲学者の名前も併記されています。
▲また、巻末には索引もあり、目次の用語以外からも調べることができます。
細かいことですが、これがあるのとないのとでは使い勝手が雲泥の差。
こういう心遣いがありがたいですね。
★コラムもおもしろい
▲各章末にはコラムと題して哲学を巡るちょっとしたトピックスが紹介れています。
例えば哲学カフェ。
僕は出演者が誰だったかは言いませんが、一度映像で見たことがあり、結構激しい”口撃”論争でびっくりした覚えがあります。
「〇〇も読んでないのに発言するな!」とか、「おまえにはしゃべる権利がない!」とか。
しまいには相手の人間性まで避難する有様で、「この人はなんのために哲学を勉強しているんだろう?」と疑問に思ったものです。
ですが、本来哲学カフェっていろいろなタイプのものがあって、けっして品格のない口喧嘩のようなものばかりではないということをこのコラムで知りました。
一度参加してみたいな。
小川 仁志 (著)『世界のエリートが教養として身につける「哲学用語」事典』:感想
◆地歴公民科の先生は必携、社会人は武器として一冊は持っておこう
僕は26年間、高校で地歴公民の教師をしていました。
専門は世界史。
幸いなことに倫理を教えることはなかったのですが、世界史にはちょこちょこと哲学者が登場するし、現代社会でもサラッと登場します。
なので、メジャーどころについては哲学ド素人の僕でも教えていたわけです。
しかし、生徒にわかるように教えるのはかなり難しい。
例えば今回例に上げた「イデア」もそう。
ソクラテス、プラトン、アリストテレスの3人はギリシア文化で絶対避けては通れないですよね。
で、この3人のうち、ソクラテスの問答法とかは誰でも理解できる。
アリストテレスは観察と実験に重きを置いた人なので彼の主張もわかる。
でも、「イデア」って何? ってことですよ。
存在しないもの(プラトンは存在していたと信じているが)、抽象的なもの、概念などを生徒に伝えるのは難しい。
けれど、本書では「模範として存在している理想像」としているんですね。
これいいですね。
また、現代社会ではベンサムの「功利主義」が登場しますが、功利主義を「快楽の量で正しさを決める立場」と超訳しているのも上手い!
さらに、社会契約説で登場するルソーの「一般意志」を「みんなの意志」と超訳しているのには「そのままやん!」とツッコミ入れつつ、ちょっと笑いましたが、
ルソーの一般意志の概念は、全体主義を招きかねないと批判されることがある
と、しっかり”但し書き”があるのも、しっかりバランスが取れていて俯瞰的・客観的にテーマを取り扱ってくれているので安心感があります。
これ、絶対高校の地歴公民科の先生買ったほうがいいですよ。
もちろん、社会人の皆さんも教養として読むべし。
◆哲学は答えのない時代の武器になる
さて、ここ数年、哲学が静かなブームとなっているのは僕も感じます。
『超訳ニーチェの言葉』など、これまで難解なイメージかなかった哲学を平易でわかりやすい言葉に置き換えてくれた白取先生はじめ、哲学研究科の功績が大きいのは間違いありません。
ですが、やはり次代のニーズなんだと思います。
人類史上例がないほどの変化の早い時代を行きている僕たちは、答えがない問題に次々と直面しています。
これに対応する方法は「考える」ことしかないのでしょう。
ここで、武器になるのは哲学、正確に言うと哲学的思考法。
本書には100のツールに「哲学を武器にするためのヒント」が掲載されていますが、おそらくこの部分が本書のキモ。
あなたの直面する問題を解決する方法が100の「哲学を武器にするためのヒント」の中にあると思います。
1ページめからしっかり読んでいくもよし、興味のあるところから読んでいくもよし。
または、哲学入門書としても楽しめるので、とにかく表紙をめくってみてください。
きっと「哲学って小難しくないんだ」ということがわかると思います。
本書はSBクリエイティブ社様よりご恵贈いただきました。
ありがとうございました。
目次
PART1 考えるためのツール30 論理的思考・アイデア発想
PART2 世界を知るためのツール20 政治経済・グローバル社会
PART3 未来を読むためのツール30 近未来社会・テクノロジー
PART4 人を動かすためのツール20 組織・人間関係
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