
おはようございます!
今日ご紹介する本は
リーアンダー・ケイニー(著)『ティム・クック』SBクリエイティブ
です。
アップル社の現CEOであり、あのジョブズがアップルの未来を託した人物。
しかしその人となりはあまり知られていません。
ティム・クックとはいかなる人物なのか。
では早速、気になるポイントの読書メモをシェア! といきますが、今回は本書中からティムの発言部分を中心にピックアップしました。
リーアンダー・ケイニー(著)『ティム・クック』SBクリエイティブ:読書メモ
ジョブズの真似をしない
クックはジョブズが残したものを何とかして維持し、自分の持つすべてを会社に注ぎ込むことを望んでいた。しかし、ジョブズの真似をしようと考えた事はなかった。「自分がなれるのは、自分自身だけだということを理解しています」と彼は続けた。「私は最高のティム・クックになれるように努力しているのです」
そしてそれこそが、彼の成し遂げたことだった。
ジョブズとの出会い
「スティーブの話し方、部屋に漂う独特な空気感、彼と私だけの空間でした。彼と一緒なら働けるとわかったのです。アップルが抱える問題を見て、私はここで貢献できると思いました。すべては突然のことで、次の瞬間にはもう決めていました。当時は若かったのです。理屈ではありませんでした。本能が「やってみろ」と囁いて、私はそれに従いました」
「スティーブとの最初の面接が始まって5分後には、不安や論理的思考を放り出して、アップルに変わりたいと思いました」
「アップルで働く事は、私が自身のために考えたどの将来設計にも含まれていませんでしたが、私が今まで下した決断の中で、間違いなく最善のものでした」
マネージャーとしてのクック
(ジョブズと違って)彼が声を荒らげる事はほとんどなかったが、問題の核心に迫ることに執着し、質問を延々と投げかけて人々を疲弊させた。「彼はとても静かなリーダーです」とジョズウィアックは語った。「叫ぶことも怒鳴ることもなく、非常に冷静で落ち着いています。しかしとにかく人を質問攻めにするので、部下たちは問題についてしっかりと把握しておく必要があるのです」。質問をすることで、クックは問題を掘り下げることができ、スタッフに自分がしていることを常に把握し、責任感を感じさせる効果があった。彼らはいつでも説明を求められる状況にあることを理解していた。
善行を促進する力
「アップルは、製品を超えて、世界中で善行を促進する力となりました。労働条件や環境の改善、人権の擁護、エイズ撲滅の支援、教育の改革など、アップルは社会に大きく貢献しています」
「アップルは、経済を理由に環境を犠牲にすることを許さない」
「ハードルを高く設定し、確信を起こしたなら、その両方を手に入れる方法が見つかります。両方とも手に入れなくてはならないのです。環境に配慮しないことによる長期的な影響は大きいのです」
プライバシーの保護、FBIとの戦い
「政府が18世紀に作られた全令情法(All Writs Act)を用いて、iPhoneのロックをより簡単に解除することが可能になるということは、あなた方の誰もが、デバイスからデータを抜き出される可能性を得るということなのです」
「しかし今、米国政府は我々が持っていない、そして作成するにはあまりにも危険なもの・・・すなわちiPhoneへのバックドアを我々に要求しているのです」
「悪意のある者の手に、このソフトウェア(まだ存在していないけれど)が渡ってしまえば、誰かが所有するiPhoneのロックが解除されてしまう可能性があるのです」
「FBIはこのツールを説明するために別の言葉を使っているかもしれませんが、次のことを理解していただきたいのです。セキュリティーをすり抜けるiOSを構築することは、バックドアを作成することにほかなりません。政府は今回の事件でのみ使用すると主張するかもしれませんが、彼らを確実にコントロールする方法はないのです」
「我々に自身のユーザをハッキングさせ、高度な技術を持ったハッカーやサイバー犯罪者からお客様を守ってきた何十年ものセキュリティの進歩を無に返そうとしている」
自分のセクシャリティについて
「この場を借りてはっきりと言います。私はゲイであることを誇りに感じており、神が私に与えてくれた最大の贈り物だと考えています」
「私は自分自身がゲイであるおかげで、マイノリティーであることの意味をより深く理解することができ、他のマイノリティーグループに属する人々が日々直面している課題についても考えることができるようになったのです」
「アップルのCEOがゲイであると知ることは、本当の自分を受け入れることに苦しむ人々の支えとなり、孤独を感じるすべての人の慰めとなり、彼らが自分たちの平等を訴えるきっかけをもたらす可能性があるのです。そしてこれは、私自身のプライバシーをさらす価値があることなのです」
多様性による革新
「私は多様性の重要性を心から信じています」
「ここで言う多様性とは、思考における多様性や、目に見える多様性、その全てを意味しています。私を取り巻く人々は、私とは全く異なっており、私にはないスキルを持っているのです」
「全ての人が、それぞれの分野の専門家です。そしてわれわれは、一丸となって物事を成し遂げるために、縦ではなく横に広がったチームとして一緒に働いています」
アクセシビリティ
「技術的な進歩によって、多くの人が自信を与えられ、目標を達成していく中、彼ら(障害者)はその恩恵にあずかることができない場合が多いのです。しかしアップルのエンジニアたちは、このような不平等に対抗し、視覚障害から聴覚障害、様々な筋疾患にいたるまで、あらゆる障害を持つ人々がわが社の製品を利用できるようにするするための労力を惜しみません」
「われわれは、わが社の製品を使用するすべての人を驚かせ、喜ばせるために設計しており、投資収益率を気にかける事は決してありません」
「われわれは、それが正しいことだからやっているのです。そしてそれは、人間の尊厳を尊重するために必要なことであり、私はアップルのこのような一面を非常に誇りに思っています」
「われわれは、すべての人が平等な機会とアクセスを得る権利があることを非常に強く感じています。そのため、我々がこれを投資利益率の視点から考えることはありません。全く気にかけていないのです」
リーアンダー・ケイニー(著)『ティム・クック』SBクリエイティブ:感想
クックCEOのもとでアップルはまともな会社になった!?
本書は、ティム・クックの人となりとビジネスマンとしての業績を伝えるもので、アップルのCEOであるティク・クックの業績を伝えるということは必然的にジョブズ後のアップルという会社そのものを伝える内容にもなっています。
僕はスティーブ・ジョブズのファンでしたから、もし今、目の前にジョブズがいたら、それはもう喜々として「一緒に写真を撮ってくれ」と頼みますよ。
でも、いち労働者として彼のもとで働きたいとは決して思いません。
しかし、ティム・クックCEOの下でだったらぜひ働きたいと思います。
これはこの本を読んでの僕の正直な感想ですが、こう語れば、CEOとしてのティム・クックとその業績、そして現在のアップルへの評価を端的に伝えることができるのではないでしょうか。
思い返すと、2011年8月24日、ジョブズの辞任と後任のCEOにクックが就任することが発表されました。
が、その時は「クックって誰?」とは思いつつも、ジョブズが”院政”を敷くだけのことなので何の心配もしていませんでした。
しかし、同年10月5日、ジョブズが死去したら僕もそうだし世の中のアナリストたちもたちまちアップルの先行きを心配し始めました。
そしてその不安は、クック氏初のプレゼンを見た時、その緊張感と、派手さがなく面白みがない姿にかなりショックを受け、倍増されていったものでした。
実際就任当初は、経営陣のお家騒動やら、サプライヤーのフォックスコンの労働環境問題、Siriやマップの不出来など、マイナス面なニュースが目立ち、「ジョブズが生きていたらこんなことはなかった」という言葉もよく聞きましたし僕も感じました。
ところがクックCEO就任から8年、この間のアップルの成長と社内変革は見事と言うしかありません。
これは誤解される言い回しかもしれませんが、クック氏のもとでアップルはまともな会社になったと言っていいのではないでしょうか。
本書でも述べられているように、彼の私生活は謎に包まれています。
ですが、経営に追いては彼の人間性が直接現れていて、彼が大切にする価値観、多様性、プライバシー、人権、環境、社会貢献、教育などに関連してアップル社も漸次変革されてきていることがわかります。
さらには、FBIとの闘争は、信頼できる会社という印象を大きく植え付けました。
クックCEOのもと、どんどんアップルは”まともな会社”へと突き進んでいるのです。
アップルはつまらない会社になるのか?
ただ、こうなってくると、「アップルがつまらない会社になる」のではという新たな心配も生まれます。
いわゆる”大企業病”に陥るのではないかということですね。
実際、テック系に詳しい方ならわかっていますが、iPhone単体で性能を比較した場合、もはやAndroid端末の後塵を拝している部分も多々あり、尖った革新性が売りのアップル社のイメージはもはや過去のものになりつつあります。
この心配に対する答えも、本書を読めば答えを”感じる”ことができるでしょう。
本書に登場するクックCEOになってから発表された製品を見直した時、失敗もあったけれど、決して守りに入ってはなく、むしろ「よくやっている」と改めて感じることができました。
iPhoneXなどは、アップルにとって壮大な実験だったと思いますが、まんまと成功し、もはや誰もホームボタンをまたつけてくれとは思はないし、ノッチも気にしていません。
また、アップルとしてはiPhoneの価格を吊り上げることにも成功しました。
そしてiPhone11シリーズにはUWB技術を秘密ではないにしても、しらーっと乗せていて、また新たな実験を始めています。
新技術に関してクックCEOがどれぐらい関与しているのかはわかりませんが、彼がGOサインを出す最終責任者であることは間違いないわけで、けっしてリベラルで様々な価値観を大切にする経営が上手いだけの人ではないことを暗にうかがい知ることができるでしょう。
アップルはクックCEOのもと、まだまだ成長し、世の中を変えるデバイスを生み出すメーカーでもあり続けるのは間違いないのではないでしょうか。
そう確信させてくれる一冊でした。
本書はSBクリエイティブ様からご恵贈いただきました。
ありがとうございました。
目次
序論 うまくやってのける
第1章 スティーブ・ジョブズの死
第2章 深南部で形作られた世界観
第3章 ビッグブルーで業界を学ぶ
第4章 倒産寸前の企業に加わる一生に一度の機会
第5章 アウトソーシングでアップルを救う
第6章 スティーブ・ジョブズの後を引き継ぐ
第7章 魅力的な新製品に自信を持つ
第8章 より環境に優しいアップル
第9章 クックは法と闘い、勝利する
第10章 多様性に賭ける
第11章 ロボットカーとアップルの未来
第12章 アップル史上最高のCEO!
謝辞
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